2006年09月26日

フラガール 75点(100点満点中)

フラダンスは定着した日本語です
公式サイト

昭和40年、衰退しつつある炭鉱の町に常磐ハワイアンセンターが誕生し、町が再生する。何ともなく興味を引かれるそんな実話を元に作られた、ノンフィクション風映画。

炭鉱の町として100年栄えた常磐だが、時代の変化に押され炭鉱業は下り坂。地域の雇用確保のため、起死回生の町興しとして、豊富な温泉資源を利用した娯楽施設の建設計画が立てられるも、炭鉱業にこだわる労働者と、新規事業に夢を賭ける人々との意識の差は一向に埋まらない状況。

そんな中で、炭坑夫の娘・紀美子(蒼井優)は友人・早苗(徳永えり)に誘われ、ハワイアンセンターのダンサー候補生となり、東京から来たダンス教師・平山まどか(松雪泰子)の下で、同じく集まった炭坑夫の娘達と共に、センターの開業日を目指してレッスンに励んでいく。というお話。

『ウォーターボーイズ』の大ヒット以降(ジャンル自体はそれ以前から内外に存在するが)、数々の亜流が作られている"集団芸orスポーツもの"に該当する作品と捉えていいだろうが、激動の昭和時代において、全国各地で見られた地域産業の衰退や、何とか地域の再生を計ろうとする者達、あるいは逆に保守的な産業に最後までしがみつく者達といった、舞台となる時代固有の題材を並行して扱い、本作の独自性を出している

紀美子をはじめとする"フラガール"達だけではなく、紀美子の兄やその友人の関係など、炭鉱側とハワイアンセンター側の対立や確執と言った構図を、あらゆる登場人物を通じて提示し、そこに"よそ者"である平山まどかを放り込む事によって生じるギャップから、更なるドラマを展開させた上で、最終的にはまどかもそのギャップを乗り越え町に馴染み、それと共に住民達の対立関係もまた氷解する。

この様な、単なるサクセストーリーでも、即物的なお涙頂戴でもない、人物・場所・時代など、あらゆる設定を巧みに活かしきった、このストーリー構成は秀逸

と言ってもはやはり、素人の炭鉱娘達が一からダンスを練習し、大勢の客前で立派に踊りきるプロのダンサーに成長する、その過程のドラマこそが、本作一番の見どころである事は間違いない。

ストレッチすらまともに出来なかった主人公達が、日を追うごとに上達していき、技術だけでなくダンサーとしての意識までも成長していく様子を、丹念にかつテンポ良く描いた構成は見事。

物語序盤、稽古場で一人タヒチアンダンスを踊るまどかを驚愕の目で覗き見ていた紀美子が、ラストの舞台ではそれと全く同じダンスを見事にソロで踊り切る展開など、単に"踊りが上手くなった"事を見せるだけではない、筋の通ったストーリーと連動した一連のダンスシーンは全く目が離せず、いくらでも見続けていたい気持ちにさせられてしまうのだ。

ダンスと同じくらい習得が大変だったと推測される方言に関しても、メインキャストに地元出身者がほとんどいない状況で、かなり違和感の少ないレベルで話されており、"訛りすぎて何言ってるのかわからない"というギャグも、ストレートに楽しむ事が出来る。

また、本作が同種の作品とは異なる特徴の一つとして、指導者・平山まどかの存在とその扱いが挙げられる。

東京で一流ダンサーだった彼女が、田舎の素人達のダンス教師となり、仕事だけでなく様々な人間関係や自分の内面の葛藤を克服して、生徒の成長と共に自身も人間として成長していく。

という流れは、どことなく『スクールウォーズ』的な、"人情を重視するスポ根もの"に見られる要素を彷彿とさせ、"みんなが頑張って上手になりました"だけで終わりがちな同ジャンル作品に、人物をストーリーに活かした感動を生む事にも成功していると言える。

労使の対立と保守層と革新層の対立がゴッチャに扱われがちだったりという問題点もあるが、それとは別に、この手の女性が成長する作品では大体において、"女性=先見性があり新しい夢に挑戦する"一方で"男性=保守的な頑固者で古い慣習にしがみつくor全く頼りにならない"と言った、意図的に偏向した対比が描かれてしまう事が多いのだが、本作ではどちらの側にも男と女が存在する事で、その様な違和感は薄く、偏向思想の押しつけを感じず、気持ちよく鑑賞出来るものとなっているのは嬉しい。

本作、笑って泣いて感動出来る娯楽作としては、程よくバランスの取れた作品であり、観終わった後は素直にハワイアンセンターに行きたくなってしまう事も確実で、PR映画としても押し付けがましさは無く、自治体や企業の狙い以上に仕上がっていると言える。機会があればどうぞ。


蛇足:
こういった、"昭和の日本人"を描いた作品は、やはり日本人に作ってほしかった。というのが正直な気持ちだ。それだけが悔しい。(もちろん本作の監督・李相日は、センスも実力もある監督であり、何ら文句をつけるつもりは無い)



tsubuanco at 16:58│Comments(4)TrackBack(10)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by よゆぽん   2006年09月27日 02:11
>訛りすぎて何言ってるのかわからない
ほんとわかりませんでした。
字幕がほしかった・・・(笑)
2. Posted by つぶあんこ   2006年09月27日 16:36
件の岸部一徳の場面はギャグとして表現されていますが、
実際はかなりヒドい言葉を浴びせている事で、
彼の内面の葛藤も表現し、なおかつ後半の
「いい女になりましたね」の台詞に繋がるという、
上手い構成になってると思います。
3. Posted by kimion20002000   2006年11月10日 02:06
TBありがとう。
この在日3世の監督さんは、やはり、「境界」を意識してきたと思うし、この物語を捉える視点も、かえって鋭敏であるのかなとも、思います。
4. Posted by つぶあんこ   2006年11月12日 00:23
いえ、トラバは送られてきたら
送り返してるだけですんで。

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