2006年10月01日

スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ 45点(100点満点中)

ダーティ・マリー
公式サイト

和田慎二の少女漫画を原作とした実写TVシリーズの、リメイク的企画として作られた映画。

斉藤由貴、南野陽子、浅香唯に続く四代目"麻宮サキ"を演じるのは松浦亜弥。監督は『BR2』でデビューし、良くも悪くも有名になった深作健太。

深作健太に対する批判として、"世襲監督"というものがあり、最近では某超大作アニメの世襲監督と同列に語られてしまう事が多いが、いくつかの東映作品において助監督を務めた経験もある深作健太は、映像作りに関する素養はある程度備えている人物であり、現場経験ゼロの素人と一緒にするのはいくら何でも問題がある。

実際に、いろいろと批判の多い『BR2』も、一番の難点となっているのは、群像劇としてキャラクターを全く活かせておらず、作り手の主張を台詞で述べている、その脚本の出来の悪さであり、映像・演出面に関しては、特に批判される程のヒドさは見られない事は確かだ。(と言っても、その"出来の悪い脚本"は深作健太自身によるものなので、そちらの能力が批判されるのは仕方ないだろうが)

本作においても、深作健太が画作りや演出を担当する事となる、ドラマ部分の映像においては、スクリプターのミスと思われる齟齬が見られた以外、これといって破綻も感じられない、順当なものであった。(逆に、「この画面がすごくいい!」という発見もなかったが)

だが残念な事に、本作はあまりよい出来とは言えない作品となってしまった。その大きな原因は、丸山昇一による脚本の出来の悪さだろう。

母親の減刑のために特命刑事となるサキ、学校内の爆発物、学園を支配するお嬢様、サキといじめられっ子の友情、捜査に失敗し殉職する特命刑事や裏切って悪に走る特命刑事、大衆を煽動し騒動を起こす裏で進む陰謀、などなど、原作漫画のエピソードから拾い集めた要素に、現代の時代を考慮しインターネットを題材として盛り込んだ本作だが、それらのバラバラな要素がバラバラなままで進み、伏線も何もなく唐突な展開で全てがうやむやの内に終わってしまうストーリー展開。

あるいは、事態をややこしく悪化させるためだけに、無意味に頭の悪い行動をとる登場人物達や、「実はこういう事でした」という"過去の真相"を、メールの文面を読ませるという、ヒネリのない説明で全て済ませてしまうなど、悪い見本の典型の様な脚本には、頭を抱えてしまう。

最初はヨーヨーを扱い慣れずに失敗する、というアイディアは面白いが、クライマックスには何のプロセスもなく上手くなっているとはどういう事か。理解に苦しむ。

旧TVシリーズも旧劇場版も、脚本自体は決してよく出来たものとは言えなかったが、そんなところを踏襲する事はないだろう。本作に限らず、東映映画の一番の問題点は脚本にある

そんな本作だが、アクション監督・横山誠による、一連の戦闘場面に関しては、それなりの見せ場となっている。

東映作品における"アクション監督"とは、従来の殺陣師やスタント指導とは違い、アクション場面における演出、演技指導、画作りなど、文字通り"監督"の役割を務める肩書きなのだ(つまり深作健太はこの部分に関しては、基本的にノータッチ)。本作においてアクション映像だけが突出して出来がいいのはそのためである。

アメリカでスタントマンの経験を積み、人気番組『パワーレンジャー』のアクション監督を務めた後帰国、『Sh15uya』を皮切りに『仮面ライダー THE FIRST』『牙狼GARO』など、特撮作品に全く新しいアクション映像を作り出した横山誠のセンス・実力は、本作にも遺憾なく発揮されている

檻の中での抵抗や、教室内での乱闘、ライバルとの対決、銃や刀を相手に挑むクライマックスの戦闘など、ダンスで鍛えた松浦亜弥本人の、"決め"を理解しているキレのいい動きに、吹替えによるスタントやデジタル処理を違和感なく交えた、その格闘・アクション映像は、大野剣友会がアクションを担当した旧シリーズとは全く違う方向性で、新世紀のスケバン刑事に相応しいものと言える。

麻宮サキを演じる松浦亜弥も、戦闘ヒロインとしての凛々しさ、カッコ良さを素直に感じてしまう、眼力のある表情の見せ方は、これまでの"ぶりっ子アイドルキャラ"よりも、こちらの方が板についているかもと感じてしまうレベルに決まっており、大人になった彼女の、新しい魅力を引き出せているのではないだろうか。

作品全体の出来は決して良いとは言えないが、"松浦亜弥がカッコ良く戦う映像"を鑑賞する、その点に関しては、それなりに楽しめるだろう。興味のある人は期待せずにどうぞ。

余談:
旧シリーズと同じく、暗闇指令役として長門博之が出演。これは旧作ファンには嬉しいキャスティングだが、元祖麻宮サキであった斉藤由貴が、"サキの母親でかつての麻宮サキ"として出演している件に関しては、見たかった様な見たくなかった様な、微妙な感情で見てしまうファンも多いだろう。旧シリーズと繋げるのか繋げないのか、ハッキリしてほしかったところだ。





tsubuanco at 16:51│Comments(8)TrackBack(11)clip!映画 

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2 何の因果かマッポの手先・・・ フイに出会ったダチのため ”期間限定!”スケバン刑事、麻宮サキ!! 『タイマンはりてぇなら、一人でこい・・・』
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3. スケバン刑事 コードネーム麻宮サキ 06年195本目  [ 猫姫じゃ ]   2006年10月05日 02:26
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最近邦画もかつての人気シリーズの復活が多いですね。 「スケバン刑事 コードネーム
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やっと、やっと観れました〜。 <新宿東宝トーア> 監督:深作健太 アクション監督:横山誠 原作:和田慎二 脚本:丸山昇一 ニューヨークから強制送還された一人の少女。スパイ容疑でアメリカに残された母を救うことを交換条件に、彼女は特命刑事「コードネーム=...
9. スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ DVD  [ 噂の情報屋 ]   2006年12月22日 21:25
1980年代にフジテレビ系列で放映された和田慎二のコミックが原作の 「スケバン刑事」シリーズ劇場版第3作。 人気アイドルたちがセーラー服姿で登場し、 ヨーヨー片手に悪の組織と対決する学園アクションドラマです。 斉藤由貴、南野陽子、浅香唯に続きデビュー5周年を迎えた...
10. 傷だらけのあややに拍手喝采!  [ 世界の中心で、愛をうたう ]   2007年04月27日 22:51
松浦亜弥ことあややがミニスカートのセーラー服で あの名作『スケバン刑事』の麻宮サキに挑戦するという。 はっきり言って別に私はあややのファンでも何でもないが、 斉藤由貴、南野陽子、浅香 唯と歴代のサキを観てきて 四代目はどうなるのか興味があった。
11. (映画)スケバン刑事(デカ)コードネーム麻宮サキ  [ ゼロから ]   2009年01月03日 11:56
母親を司法取引により釈放させるために仕事を引き受ける羽目に。学園に潜入するが、学園の制服でなくセーラー服なのは、笑えます。

この記事へのコメント

4. Posted by saruo   2006年10月05日 00:00
はじめまして書き込みさせていただきます
映画の評価の仕方とかはよく分からないのですがスケバン楽しく見ることが出来ました
つぶあんこさんの目には苛められっこの今野多英役の女の子はどう写りましたか?
よろしければ教えてください
6. Posted by つぶあんこ   2006年10月05日 12:02
まったりした関西弁の喋りが印象的でしたね。
"関西弁""トロい""天然"と言うキャラは、
『あずまんが大王』の大阪がモチーフなのかな
などと考えたりもしてます。
7. Posted by 盛りあがり   2006年10月19日 23:58
ラストの盛りあがりに息切れ感がありました。
転び公安→取り巻き四天王(五天王?)→ラスボス・・・
どっかで逆転のカタルシスみたいのあってもよかった。
唐渡亮はミラーマンREFLEXの時の髪型が持続してるし、アギト映画でも重要な役だったんで、もうちょっと見せ場あるかとおもったんですが。
8. Posted by つぶあんこ   2006年10月20日 15:10
ヨーヨーが光って回るあたりが逆転の描写だったのでは?と。

というか最近バンダイから出たこのヨーヨーの玩具は
何のギミックもない普通のヨーヨーでがっかりでした。
9. Posted by 咲太郎   2007年04月27日 22:48
思ったよりもハードだったことにびっくりしました。
あややっていい演技しますね。
感心しました。
しかし本当にヨーヨーのエピソード
何とかならなかったのでしょうか。
あそこを生かせたら、もっと面白くなったかもしれないのに・・・。
10. Posted by つぶあんこ   2007年05月01日 16:56
東映の本編ですからね。脚本には最初から期待してません(笑
12. Posted by 力薬   2008年01月25日 20:54
時期を逃してエクスクロスを劇場で見れなかった腹いせにDVDレンタルしました。後悔はしてません。

エキストラの面々が明らかに不自然(「そのテの人」ばっかりのような、しかも妙にシリアスムード)でしばらく笑いが止まらなかったです。健太氏は『不自然な絵面にシリアス風ネタで笑わせる方向』で行くつもりでしょうか…

あとは横山アクションのキレキレぶりで食える映画と思いました。
13. Posted by つぶあんこ   2008年01月29日 10:34
わざとやっているのか天然かでは大いに差があるとは思いますが。どうも後者の様な。

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