2006年10月03日

夜のピクニック 40点(100点満点中)

夜歩く
公式サイト

書店の店員によって選ばれる本屋大賞という、何ともうさんくさい(ビデオ屋の"店長おすすめ"ほど信用出来ないものはない)賞を受賞した、恩田陸のライトノベルを実写映画化。

内容は、恩田陸の母校の学校行事をモデルとした、一昼夜かけて全校生徒が80kmを踏破するイベントを題材に、男女2人の主人公の心の動きを中心に、様々な思いを描いたもの。

原作は、2人の主人公それぞれの視点による描写を交互に見せ、同一の事象に対し、両者からの異なる、あるいは似た見解を述べさせて、その比較の妙を楽しむといったギミックや、その場にいないはずのキャラクターが物語に影響を与える事となる、伏線がしっかり活かされた構成など、"ひたすら歩き続けているだけ"の、起伏も事件もない内容にもかかわらず、最後まで飽きずに読ませてしまうだけの魅力を持った作品と評価出来るものであった。賞の信憑性はさておき、それなりに楽しめる本である事は確かだ。

その様な、心理描写が中心の作品だけに、それをそのまま映像化するのは難しい。台詞やモノローグで全てを語らせてしまう様なつくりにしてしまうくらいなら、映像化しない方がマシだろう。これをどう料理するか、製作者の力量が大きく問われるところだ。

実際に、主人公・貴子(多部未華子)と友人・美和子(西原亜希)が校門をくぐってから、校庭に集まっている生徒達の様々な描写を見せ、校長の挨拶が始まるまでの一連の流れが、長回しの1カットで撮られている、序盤の映像であったり、最後のゴール場面において、出発ゲートと裏表で使い回されている、ゴールゲートの裏に書かれた「START」の文字をさりげなく見せる事で、そこに様々な意味を込めるなど、小説では表現出来ない、映像作品ならではの工夫がなされた部分は、作品内の所々に見る事が出来、"ひたすら歩き続けているだけ"という、難しい題材を、可能な限り単調にならず、飽きさせない様に作ろうと努力している事はよくわかる。

また、原作では登場人物達の会話やモノローグで「そう言えばこんな事があった〜」と説明されている箇所を、回想として映像で見せたり、2人の主人公視点ではない客観視点による、サブキャラの描写を所々に挟んだ構成なども、同様の意図で作られており、これらの見せ方は、ある程度成功していると言っていいだろう。

が、狙い自体は同じなのだが、登場人物の内面・心理描写を、アニメやパロディと言った"妄想"で見せてしまう演出は、少し唐突で、やりすぎではないかと感じられる。(これは好みの問題もあるだろうが)

歩き続け、肉体が疲れていくと共に変化していく心理状況の描写がメインとなる原作に比べ、映画では細かな心理描写は省略されている部分もあり、原作読者からすれば物足りなさを感じてしまうかもしれないし、原作未読の観客にとっても、このキャラクターの、この行動・台詞に、どんな意味があったのか、少しわかりにくい部分もあったかもしれない。

そもそも、映像として楽しませる事が難しい作品であるのは確かで、話題の本だからといって、何でもかんでも映画化すればいいというものでもないのだ。

どうしても映画化するのなら、無理に原作に忠実に作ろうとせず、映画として作るに相応しい内容に改変した方が、より楽しめるものとなっただろう。

そんな意味で本作は、原作に忠実に作る方向性によって、逆に"原作を読んでいれば充分"という、何とも微妙な出来に終わってしまった。ところどころに光る部分もあるだけに残念。

ただ、決して美人ではないのだが、独特の存在感と魅力を持つ主演・多部未華子をはじめ、貫地谷しほり高部あい加藤ローサ近野成美などなど、個性豊かな若手アイドル、女優達が、等身大の高校生の、学校行事の楽しさを活き活きと見せてくれる点に関しては、映画化された意味が大いにあったと言える。(だが西原亜希に高校生役は似合わないと思う)

余談:
長い道のりを歩き続ける事で、己の中の苦悩を解消し、魂が浄化される、本作の展開は、生徒達が着ている"白ずくめのジャージ"からも、四国の霊場を巡る"お遍路"をモチーフとし、そこから宗教臭さを排除したもの、という見方も可能。



tsubuanco at 17:26│Comments(0)TrackBack(7)clip!映画 

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