2006年10月22日

トリスタンとイゾルデ 65点(100点満点中)

鳥井信冶郎たん
公式サイト

イギリスの民間伝承(ケルト神話)にて語り継がれている物語であり、それを元にしたワーグナーの歌劇などでも世界的に有名な本作。これまでに何度か映画化もされており、その内容はあえて説明する必要もない一般教養と言って問題ないだろう。

『ロミオとジュリエット』『ウエストサイド物語』あるいは『闘将ダイモス』など、"許されざる立場同士の、命を懸けた恋愛"という、普遍的題材の原型とも言うべきものだ。

そんな定番の作品を改めて映画化するには、これまでとは違う特徴、特色を盛り込む事が必要であるのは言うまでもない。全く同じ物を何度も作る必要はないのだから。

まず目につくのが、当時のブリテンやアイルランドの歴史考証に基づいたリアルなセットや衣装といった、外見的な面。これは当然ながら、舞台劇では再現が難しい事項であり、その重厚感や美しい広がりは、映画ならではの大きな見どころだ。

大作扱いではないため、規模的な小ささを感じてしまう部分はあるのだが、実物と合成を巧みに組み合わせた建物や背景の作り込みや、重みを感じる様々な武器や防具といった小道具など、物語を"架空のおとぎ話"というより"リアルな歴史劇"寄りに見せるためのギミックとして、本当にあった出来事を見るかの様に、作品世界へ没入する事が出来、登場人物への感情移入を促す効果を大きく上げている。

ストーリー的にも、原典や歌劇とは大きく異なる改変がいくつか加えられている。細かい部分ならともかく、結末まで変えてしまった本作のやり方は賛否が分かれるところだろう。だが、『ロミオとジュリエット』の展開と似ている(というか逆だが)部分が重点的に改変されている事は、おそらくは原典よりも『ロミオ〜』の方が有名になってしまったと言っても過言ではない現代において、ある意味では仕方のない事なのかもしれない。

少なくとも改変によって物語に矛盾や破綻が生じるという弊害はなく、原典を題材とした、新しい映画版『トリスタンとイゾルデ』である、という意識で鑑賞するならば、これは批判点にはならない筈だ。

主演の2人にあまり華がない上、2人の心情変化の描写も、台詞以外の演出としては伝わりにくいものが多かったり、"寝取り役"である筈のマーク王の方が存在感が強く、しかも文句のない善人に描かれているなど、本来感情移入すべき2人にあまり入れ込めないという欠点もあるのだが、恋愛劇という観点よりむしろ、"(本来の意味での)コスチュームプレイ"として見る分には充分に楽しむ事が出来、特に終盤の展開におけるトリスタンとマーク王の、様々な感情が入り交じった男の世界には引きつけられる事受け合いだ。

歌劇ファンには違和感のある作品となったかもしれないが、王道的な娯楽作品としては問題なく楽しめる仕上がり。興味がある人はどうぞ。



tsubuanco at 11:10│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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1. トリスタンとイゾルデ  [ ★YUKAの気ままな有閑日記★ ]   2007年09月10日 09:58
レンタルで鑑賞―【story】コーンウォールの領主マーク(ルーファス・シーウェル)に育てられた騎士トリスタン(ジェームズ・フランコ)は、戦闘の末重傷を負い、敵国アイルランドに流れ着く。アイルランド王の娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)から献身的な介護を受けたトリ...
2. トリスタンとイゾルデ  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年02月23日 19:55
 『愛は死より切なく、そして尊い。』  コチラの「トリスタンとイゾルデ」は、10/21公開になったシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の原典になったイングランドの騎士トリスタンとアイルランド王女イゾルデの伝説を描いた映画なんですが、早速観てきちゃいました...

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