2006年10月29日
虹の女神 Rainbow Song 60点(100点満点中)
むしろ相田翔子なら大歓迎です
公式サイト
岩井俊二がプロデュース、脚本は桜井亜美、そして監督が熊澤尚人と、それぞれ独自の情感表現に定評のある3人によって作られた映画。特に熊澤尚人は本作が初の全国ロードショー作品となる。
映像制作の現場で最下級のADとして働く主人公・岸田智也(市原隼人)と、彼が映像方面の仕事に就くきっかけを与えたヒロイン・佐藤あおい(上野樹里)との、出会いとすれ違いの青春が描かれたストーリー。
全体が7部+最終章に分けられており、これはもちろんタイトルにある"虹"の色数に合わせたもの。最初の第一部で先に"結果"を出しておき、続いて第二部から過去のいきさつを時系列順に見せて第一部とつなげ、その先にある"結末"を見せる、という構成は、この手の青春・恋愛ものにおいて、"人の死"をクライマックスに持ってきて泣かせる、定番の流れを外す意図もあったのではないかと推測される。
特定のキャラクターが死んでしまう、と、観客が"予想している"のと"知っている"のは、全く意味合いが異なるものであり、当該のキャラクターに対する、観客の目線感覚や感情移入具合を、製作者の意図通りにコントロールする事に成功していると言えるだろう。
大学の映画研究部における8ミリ映画製作を題材としたストーリーや、劇中で見せられる、その"現場"や"作品"などでは、例えば、撮影現場の空気に始まり、キスシーンが嫌で降板する女優であったり、スタッフの親が役者として出演していたり、同級生が母親役だったり、岩井俊二や熊澤尚人がそうであったごとく、かつて同様の経験をしていた映像好きからすれば、「そうそう、こういうのあったあった〜」と思わず吹き出してしまう、リアルな再現がなされており、スンナリと感情移入できるものとして楽しめる。
また、ヒロインが監督として製作したその作品の内容が、作中ではあえて見せられない"死に様"を代弁する形となっているなど、映研での8ミリ映画製作という要素が、単なる舞台や題材だけに留まらせず、作品自体を構成する極めて重要な存在として活かされている。
そして盲人であるヒロインの妹(蒼井優)が、"目に見える美しいもの"である虹をタイトルとし、劇中でも重要な要素として扱っている本作において、"見えなくても(見えないからこそ)わかる"存在として配置される事で、表面的な事にとらわれがちな主人公との対比として描かれており、これが、蒼井優という映画女優が備えている、独自の存在感によって更に強調される結果となっている。
映像的な観点でも、映画製作を題材とした映画で映像がつまらないといった、本末転倒な状態には全くならず、意図的に水平を取らない画角であったり、何度も見せられる事となる、主人公とヒロインの長回しの掛け合い、あるいは空の虹を見る場面も、直接ではなく間接的な表現をあえて用いるなど、全編通して、様々な工夫が楽しめるものとなっており、飽きる事は無い。
が、その画作りや、また、演出や編集のテンポ、タイミングなどに、熊澤尚人よりもむしろ岩井俊二のセンスと見られる部分が多々あり、これは推測だが、岩井俊二がかなり現場に首を突っ込み口を出していたであろう事が感じられてしまい、監督の複雑な心境が忍ばれる。
本作、映研出身者なら間違いなく楽しめるものだが、そうではない観客にとっても、緻密に作りこまれた映像や、不器用な等身大の青春劇などを楽しんで鑑賞できる作品だ。興味のある人はどうぞ。
公式サイト
岩井俊二がプロデュース、脚本は桜井亜美、そして監督が熊澤尚人と、それぞれ独自の情感表現に定評のある3人によって作られた映画。特に熊澤尚人は本作が初の全国ロードショー作品となる。
映像制作の現場で最下級のADとして働く主人公・岸田智也(市原隼人)と、彼が映像方面の仕事に就くきっかけを与えたヒロイン・佐藤あおい(上野樹里)との、出会いとすれ違いの青春が描かれたストーリー。
全体が7部+最終章に分けられており、これはもちろんタイトルにある"虹"の色数に合わせたもの。最初の第一部で先に"結果"を出しておき、続いて第二部から過去のいきさつを時系列順に見せて第一部とつなげ、その先にある"結末"を見せる、という構成は、この手の青春・恋愛ものにおいて、"人の死"をクライマックスに持ってきて泣かせる、定番の流れを外す意図もあったのではないかと推測される。
特定のキャラクターが死んでしまう、と、観客が"予想している"のと"知っている"のは、全く意味合いが異なるものであり、当該のキャラクターに対する、観客の目線感覚や感情移入具合を、製作者の意図通りにコントロールする事に成功していると言えるだろう。
大学の映画研究部における8ミリ映画製作を題材としたストーリーや、劇中で見せられる、その"現場"や"作品"などでは、例えば、撮影現場の空気に始まり、キスシーンが嫌で降板する女優であったり、スタッフの親が役者として出演していたり、同級生が母親役だったり、岩井俊二や熊澤尚人がそうであったごとく、かつて同様の経験をしていた映像好きからすれば、「そうそう、こういうのあったあった〜」と思わず吹き出してしまう、リアルな再現がなされており、スンナリと感情移入できるものとして楽しめる。
また、ヒロインが監督として製作したその作品の内容が、作中ではあえて見せられない"死に様"を代弁する形となっているなど、映研での8ミリ映画製作という要素が、単なる舞台や題材だけに留まらせず、作品自体を構成する極めて重要な存在として活かされている。
そして盲人であるヒロインの妹(蒼井優)が、"目に見える美しいもの"である虹をタイトルとし、劇中でも重要な要素として扱っている本作において、"見えなくても(見えないからこそ)わかる"存在として配置される事で、表面的な事にとらわれがちな主人公との対比として描かれており、これが、蒼井優という映画女優が備えている、独自の存在感によって更に強調される結果となっている。
映像的な観点でも、映画製作を題材とした映画で映像がつまらないといった、本末転倒な状態には全くならず、意図的に水平を取らない画角であったり、何度も見せられる事となる、主人公とヒロインの長回しの掛け合い、あるいは空の虹を見る場面も、直接ではなく間接的な表現をあえて用いるなど、全編通して、様々な工夫が楽しめるものとなっており、飽きる事は無い。
が、その画作りや、また、演出や編集のテンポ、タイミングなどに、熊澤尚人よりもむしろ岩井俊二のセンスと見られる部分が多々あり、これは推測だが、岩井俊二がかなり現場に首を突っ込み口を出していたであろう事が感じられてしまい、監督の複雑な心境が忍ばれる。
本作、映研出身者なら間違いなく楽しめるものだが、そうではない観客にとっても、緻密に作りこまれた映像や、不器用な等身大の青春劇などを楽しんで鑑賞できる作品だ。興味のある人はどうぞ。
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あんなに近くにいたのに。
君が僕に伝えたかったこと──。
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満 足 度:★★★★★★★
(★×10=満点)
監 督:熊澤尚人
キャスト:市原隼人
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酒井若菜
相田翔子、他
■ストーリー■
小さな映像製作会社で働く岸田...
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『虹の女神 Rainbow Song』鑑賞レビュー!
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この記事へのコメント
1. Posted by KICK 2006年11月14日 00:27
上野樹理のナガブチキックが見られたので満足です。(嘘)
2. Posted by つぶあんこ 2006年11月14日 16:44
のだめで殴られまくりなのと対称ですね
3. Posted by あきひろ 2008年04月11日 22:32
上野樹里は「のだめ」でも「虹の女神」でも「これが地なのかな」と思わせる位演技が上手いですね。蒼井優が独特な存在感を出しているのは確かに凄いですが、この、「普通を演じる」ことが実はとても難しいのではないでしょうか。智也を想いつつ、自分を出せず、自主映画で死の前の自分の感情を代弁させるところは胸が締め付けられるし、「日本なんだ、傍じゃないんだ」とようやく自分の本音を言ったときの寂しい表情が切ない。相田翔子のシーンはファンの間でも意見が分かれるみたいですが、熊澤尚人の静謐な世界にしては「生々しい」感じがあまりに強かったからでしょうね。それだけ相田翔子の演技が強烈だったということもあるのでしょうが。
4. Posted by せぷ 2008年04月14日 00:32
>むしろ相田翔子なら大歓迎です
自分もまったく同じことを考えました。
少しぐらい年上だった(事実が判明した)からって同棲していた女性を追い出す奴は男の風上にも置けないですよね。
自分もまったく同じことを考えました。
少しぐらい年上だった(事実が判明した)からって同棲していた女性を追い出す奴は男の風上にも置けないですよね。
5. Posted by つぶあんこ 2008年04月15日 17:53
上野樹里は顔が普通なところがポイントかと。
まあ、10代の頃って30代なんて老人扱いでしたからね。
まあ、10代の頃って30代なんて老人扱いでしたからね。