2006年10月31日

トンマッコルへようこそ 50点(100点満点中)

これ以上は胃が受け付けない
公式サイト

朝鮮戦争の最中、架空の村"トンマッコル"を舞台に、そこに迷い込んだ韓国、北朝鮮、アメリカ(←便宜的にわかりやすく表記)の軍人達の奇妙な運命を描いた韓国映画。

作中での最終的な悪役は米軍だが、村に迷い込んだ米軍人は普通の善人として描かれているし、北朝鮮の軍隊が負傷した仲間を殺して逃げようとする場面や、韓国兵士が上からの命令で、民間人が避難中の橋を爆破させられる場面など、登場する3つの軍隊を基本的に"悪"として描き、そこからはみ出した主人公達が、"善人"ばかりの村で生活する事で変貌していく、という全体的な構成。

舞台となるトンマッコルが架空の村であるのと同様、架空世界の架空の戦争であっても、ストーリーは全く破綻しない。朝鮮戦争が題材になっているのは、韓国人にとって最も身近な戦争であるという事と、架空の村であるトンマッコルを、ファンタジーに寄りすぎない、ある程度リアルな捉え方が出来る存在とするためであろう。

が、作品としての評価を言えば、そのリアルとファンタジーのバランスが、あまり取れていない様に感じてしまったのも事実だ。銃弾が飛び交い血が流れ人が死ぬ戦闘シーンの生々しさと、トンマッコルでのファンタジックな描写のギャップが、いい意味でのミスマッチとして配置されているとは受け止め難い。

村に迷いこんだ軍人達が、当初は銃を向け合い殺し合おうとしていた関係から、最終的には完全に和解して外敵を迎え撃つ様になる、その主人公達の心情変化の見せ方も、あまり上手く行っているとは思えない。決められたストーリーに従って動かされているだけという印象が強く、内面的な掘り下げもあまり無いため、感情移入できず、展開に説得力が薄い

和解の大きなきっかけの一つとなる、イノシシ襲撃シーンは、明らかに日本映画『スウィングガールズ』から引用したとしか思えない表現で、しかもその手法は本家の方が秀逸で、正直引いてしまった。大事な場面なのだから、もう少し何とかならなかったものか。

最後の戦闘シーンも、爆撃で吹き飛ぶ時の、リアルさを意図的に拒否した表現と、機銃で撃たれて死ぬ時の、意図的に生々しさを強調した表現との、あまりの空気の違いに、バランスの悪さを感じてしまい、英雄的、あるいは悲劇的な感動場面としては失敗しているのではないだろうか。

また、序盤から中盤にかけてのコメディ的描写は、イノシシの場面を除いては、ツッコミを排して流すタイプの見せ方で、比較的緩やかであったのに対し、終盤の泣かせシーンでは、逆に冗長になりすぎて感動できなくなる程の、クドすぎる泣かせの演出を強調しているという構成も、あまりいいとは思えない。もっと突き抜けたコメディ描写で、観客のテンションを高めておいた上で、逆方向のテンションにストーリーを展開させ、観客の感情の振り幅を大きくして感動させる、そんなやり方の方が良かったのではないだろうか。

現実的なイデオロギーを抜きにしても、着想やプロットの段階では、もっと面白くなりそうな素材だし、実際に、それなりに楽しめる部分もいくつかあるのだが、脚本の練り込みや監督のセンスなどが今ひとつ及ばなかったせいで、勿体ない作品となってしまった。あまりオススメできません。



tsubuanco at 17:41│Comments(2)TrackBack(8)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by kimion20002000   2007年03月11日 09:58
そうですか。
これ、もともと戯曲=舞台ですからね、そのなかでの場面の転換、対立、和解といった舞台作法とみていくと、なるほどな、と僕なんかは、思いましたけれど。
2. Posted by つぶあんこ   2007年03月12日 18:52
映画にする上で、もう一工夫あればなあと。

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