2006年11月09日

7月24日通りのクリスマス 55点(100点満点中)

小日向文世は父親役をやりすぎ
公式サイト

吉田修一の小説『7月24日通り』を映画化。脚本は金子ありさ、監督は村上正典、ヒロインは中谷美紀と、映画版『電車男』のスタッフ、キャストで製作された本作は、内容が大幅にアレンジされ、さながら『電車女』と題してもいい様な作品に。

既に適齢期も過ぎた年齢でありながら、化粧一つせず女扱いされた事もない、少女漫画の世界に憧れる主人公・サユリ(中谷美紀)だが、学生時代の憧れの王子様との再開を機に、自分を変えようと試行錯誤する…というストーリー。

もともとの『電車男』のプロット自体が、古典的少女漫画の王道パターンを、男女逆にして焼き直したものであったため、本作は、そのままストレートに古典的少女漫画の王道を地で行く内容となっている。

いがらしゆみこ(『キャンディ・キャンディ』の作画者)が本作のために描き下ろした、架空の少女漫画を前面に押し出しているのは、その点を「そのまんますぎるじゃないか」と突っ込まれないためなのか、それとも開き直りなのか。

更に、現状のありのままの自分をそのまま受け入れてもらえる、という、あまりに都合の良すぎる話に終わらず、自分からも積極的に変わっていかなければ幸せは掴めない、という点なども『電車男』と同様。

一方で、主人公が弟(美男子)の恋人(地味なメガネ娘)の存在と自分を重ね合わせ、自分のネガティブな悩みをその恋人にぶつけてしまうといった、2組の相似形カップルを微妙に意識差を持たせて並行して描き、クライマックスの主人公の決断へと結びつけるなどして、単純にベタな王道展開だけに終わらない様、工夫もなされている。

また、主人公が住む長崎の町並みと、主人公の妄想世界として映し出されるポルトガルの町並みが、主人公の精神状態とシンクロして切り換えられる、背景の見せ方であったり、同じく脳内住人であるポルトガル人親子の存在で、主人公のポジティブ面の意志を象徴するなど、意図的にマンガ的に作られた映像・演出は素直に楽しめる。

特に、例えば店で洗い物をしている場面や、道の敷石を飛びながら歩く場面など随所に見られる、常に立体的に人物や背景を配置し、奥行きのある画面作りに留意し、また、"王子様"の職業が照明デザイナーである事から、屋内だけでなく、屋外ロケの映像でも、初夏の撮影でありながら、冬の低い太陽光線を再現するなど、観客を飽きさせない様に趣向を凝らした映像はよく出来ている。

が、単に自分でファッション誌を見て一人で試行錯誤するだけだったり、"キレイになる"前も後も大して変わっていなかったりと、物語の大きなポイントの一つである、主人公の"変身"があまり効果的に描かれていないという大きな欠点もある。

本作の主人公は、キレイになる前から"王子様"(および当て馬役)から好意を寄せられており、"キレイになる"意義はモテるためのものではなく、自分に自信を持つために、まず外見から変えてみる"儀式"の役割を果たしているのであり、その事が明確に描かれていない事には、作品の面白さも半減してしまうというものだ。

そもそも、主人公の少女漫画に対する意識の見せ方が曖昧で、全然オタクっぽくないのは問題。これは『電車男』の時もそうだが、オタクである事と、よく人にぶつかったり転んだりする事は何の関係もないだろう。

本作でも『電車男』でも、中谷美紀の持つ魅力をあまり引き出せていない様に感じ、これは両作で監督を務める村上正典との相性の問題であろうか。あるいは、"地味なメガネ女"であるはずの上野樹里が、普通に可愛く撮られている事などから見て、"女性の魅力"の捉え方に少し問題がある人なのだろうか。

いろいろと突っ込みどころもあり、また、意表を突かれるドラマティックさも、爆笑する程の面白さも、涙が止まらない様な感動もないが、深く考えず気軽に観られる娯楽作としては、充分な出来だろう。

何より、誰も死なず誰も不幸にならない、ほぼ完全なハッピーエンドというのは、セカチューヒット以来、大量に作られている恋愛映画としては珍しく、ありがたい存在だ。



tsubuanco at 16:23│Comments(2)TrackBack(12)clip!映画 

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1. Posted by <<KiCK   2006年11月08日 22:55
中谷美紀にやつあたりされるシーンで、キレた上野樹理がいつキックを放つか期待しながらみていたのですが、そんなシークエンスはなくて残念でした。
小日向文世はキャシャーンからですかね…
2. Posted by つぶあんこ   2006年11月09日 23:42
ああ、そういえば上月博士はそうでしたねえ。

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