2006年11月16日

TANNKA 短歌 60点(100点満点中)

黒谷友香と黒川智花の名前をよく間違える
公式サイト

作詞家の阿木燿子が初監督を務める、俵万智の処女小説『トリアングル』を原作とした映画。

主人公である33歳のフリーライター・薫里(黒谷友香)は、年上のカメラマン(村上弘明)と、年下のミュージシャン(黄川田将也)の2人と都合良く付き合いながら、社会人として仕事もこなす、(女にとって)理想的な"自立した大人の女"を象徴する存在。

そんな彼女のズルさ、強さ、弱さなどの本音部分が、女性視点で描かれる事となる本作は、原作、脚本、監督、主演全てが女性で固められているだけあって、テーマをわかりやすく提示するために適度にディフォルメされつつも、リアルに典型的な女性像がそこにある。

オープニングとエンディングの両方で強調して見せられる、メインファクターの一つである"ベリーダンス"は、女性のセクシャルを特化した媚態であり、もうひとつ、タイトルにもなっている"短歌"は、女性の"性"を客観視しつつも自己陶酔的に美化したもの。

この二つが、"女性"としての主人公の、外面と内面をそれぞれ象徴的に明示するとともに、ダンスは視覚的なインターミッションとして、短歌は物語の進行を単調にさせないための章区切りとして、それぞれ機能している。

二人の男性との、それぞれ役割を使い分けた接し方、扱い方は、33歳という、社会的には既に女性としての扱いが減りがちながらも、本人的にはまだまだ現役と思いたい、中途半端な年齢における"本音"あるいは"憧れ"をリアルに突きつけるものでありながら、それが美男美女揃いの主演者達によって見せられる事で、現実離れした、ある程度距離を置いた感覚で見る事が出来るため、嫌悪感は無く、むしろ心地いいものとされている。

男性との付き合いとは別に、専業主婦である女友達(中山忍)との一連の会話もまた、本作における重要要素となっている。

こちらの女友達は、子供が産まれにくい以外は理想的な"セレブ主婦"であり、主人公とは対局に位置する、"女の幸せ"の象徴として存在し、主人公の"都合のいい"生き方に対し警鐘を与える役割を果たしており、大物女優へのインタビューが、主人公の現状の延長的に描かれている事とも対称にあるのだ。

これらの、作品テーマを提示すると同時に物語を進行させ、最終的にはそれらの要素がひとつの終着点にまとまる、全体の構成はしっかりしており、これは、文学者である原作者と、作詞家である脚本家・監督という、言葉、文の構成にこだわった仕事が本職である両者のセンス・能力が上手く合致した結果と言えよう。

それと共に、宣伝的な売りとなっている、黒谷友香が体当たり(というか捨て身?)で演じる、常に画面から目を離させない様、全編に渡って適度に配置されている、一般映画の枠を超えたセックスシーンの数々であったり、同窓生とのリアルなカラオケ宴会シーンなど、遊び的要素も随所に置く事で、あえて文芸的作品としてではなく、大衆娯楽としての入り口を大きく設けている、このつくりも的確な判断と言えるだろう。まず見てもらわない事には話にならないのだから。

そして、先述の通り"言葉"が本職の監督による作品ながら、いつもの東映作品らしからぬ、挑戦的な画面作りであったり、各屋内場面のセット、ロケセットでの家具や小物配置のセンスなど、オシャレ感覚(笑)を強く感じる、美しい映像も楽しめる。

これは、監督としては失礼ながら素人同然の阿木燿子を、現場の撮影、照明、美術スタッフなど、それぞれの職人達が、かなりの本気度でサポートしたものと推測され、それらの人材を見事に使いこなし、出来上がった映像に結果として残した、阿木燿子の"人使い"能力の高さが伺えるものだ。

本作、男の世界に傾きがちな東映映画において(『極妻』なども、結局は女優を使って男の世界を描いている)、"女の世界"を丁寧に描き切った、希有な作品である。黒谷友香の裸ばかりが注目されがちだが、むしろ大人の女性向き作品と言っていいだろう。興味がある人はどうぞ。

蛇足:
主人公の相手役の、村上弘明はスカイライダー、黄川田将也はFIRST一号と、新旧ライダー俳優の揃い踏みなのは一目瞭然だが、監督の阿木燿子は『仮面ライダーBlack』主題歌他の作詞、本田博太郎は現役で『仮面ライダーカブト』に出演中と、狙った様にライダー関係者が目白押しで、そんなところは東映らしさが爆発だ。


補足:
一部スポーツ新聞などで書かれている、映画「TANNKA 短歌」にて、黒谷友香の乳首は見えない、という記事は真っ赤な嘘です。

映画前半部こそは、明らかに意図的に乳首が映らない様なアングル、体勢で撮られていますが、後半からは全く隠さずに見えまくってます

前半でガッカリさせておいて後半で驚かせる、サプライズを狙った構成かと。

以前、「東スポの記事はウソで当たり前だ」との判決が出た訴訟があったが、今回の様に宣伝のための記事にウソを書いてしまえば、そのメディアの存在価値自体が無くなると思うのだが。



tsubuanco at 16:39│Comments(0)TrackBack(8)clip!映画 

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