2006年11月28日

ありがとう 40点(100点満点中)

映画紹介でオチまで言ってしまう人
公式サイト

阪神大震災で家も店舗も失った写真屋のオヤジが、町の復興に尽力し、自らもプロゴルファーとして新しい人生をスタートするという、実在のプロゴルファー・古市忠夫を題材にした、平山譲のノンフィクション小説『還暦ルーキー』を原作とした映画。

映画前半は、主人公の視点を中心に、震災の様子をリアルな特撮で見せるもので、後半は主人公が一念発起してプロゴルファーを目指す展開と、大きく2つに分かれた構成となっている。

宣伝などでは、震災の悲劇と町の復興を感動的に描いた物語という印象を受けるが、実はこの映画は阪神大震災そのものを描く物語ではなく、あくまでも、古市忠夫個人の数奇な運命を描いた物語である。

もちろんこれは、普通に観ていれば自然と気づく事ではあり、その点を誤解したまま最後まで観てしまった人が、後半のゴルフ部分に対して違和感を感じたまま、最後まで煮え切らなかったとも推測されるが、当然ながらそれは映画自体の責任ではない。

とはいえ、脚本構成にバランスの悪さを多分に感じる出来である事は間違いなく、それ以外にも問題点は多い。

まず、主人公のみならず、ほとんどの登場人物の芝居のクドさ、クサさがあまりにも強い点。

主演である赤井英和の演技はコントにしか見えないし、妻役の田中好子の台詞回しや行動もいちいち不自然で、本当なら感動して泣いてしまうような展開・台詞であっても、押し付けがましさや不自然さが感じられて冷めてしまう部分が多々ある。それは前半後半を問わず、全編通して同じだ。

演者の技量的な問題ももちろんあるが、それ以上に、演技指導の問題も大きいだろう。本作の監督・万田邦敏は、もともと本作の様な"ベタな感動もの"にはあまり向いておらず、人選に無理があったという事だろう。もっと自然な演技が出来る役者と、自然な演出が出来る監督を使うべきだったのだ。

また、こうした感動作においては、"人間"をしっかりと描き、観客の感情移入を誘う事が重要だが、本作ではそれが行えておらず、最後まで誰にも感情移入できない結果となってしまっている。

主人公がゴルフ好きで結構上手いという基本設定が、冒頭テロップで説明されるだけで、いきなり震災のシーンから始まってしまうため、後半ゴルファーを目指す展開への説得力が薄い

まず最初に、主人公のゴルフ好きと上手さをある程度見せておいて、平和な描写が少しあってから震災の場面に持っていく方が、流れの緩急やギャップで観客を引き込む事が出来ただろうし、後半への伏線ともなったはずだ。

主人公のみならず、重要キャラらしい人物が、特に説明も無く突然出てきてしまうのも問題だ。

大切な友達が死んで悲しい流れにするならば、主人公と友達がどれくらいの仲だったのかを先に見せておかなければ、後から回想で見せるだけでは、あまりに取って付けた感が強い。芝居がクドくてクサいので尚更だ。

後半で登場する、一緒にプロテストを受ける知人の登場もあまりに唐突で、しかも登場する意味自体がほとんどない有様だ。一応、主人公の苦悩を象徴的に反映させる役割は果たしているが、それが上手く成功しているとは思えない。

また、プロテストの様子も、最後以外は特に大きな波も無く、淡々と進んでしまっているため、長い時間をかけている割には楽しめる部分が少なく、無駄に冗長すぎるし、冒頭で先に結果を見せてしまっているため、ドキドキもハラハラもしないのは問題だ。

この様に、ドラマとしての完成度はあまりにも低く、全体的には評価出来たものではないが、前半の震災場面の特撮映像の出来はかなりのもので、実際の当時の映像を交え、崩壊し延焼する長田区の様子は臨場感たっぷりに描かれており、この部分に限っては、見て損する事は無い映像であると、高く評価出来る。

と言っても、やはり芝居のクドさクサさに変わりはなく、せっかくの映像に水を差してしまっているのも事実。どうにかならなかったものか。

特撮映像好きなら震災場面は必見だが、それ以外は残念ながら、あまりオススメ出来ない。題材は悪くないだけに、勿体ない作品だ。



tsubuanco at 17:02│Comments(4)TrackBack(9)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【劇場鑑賞131】ありがとう  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2006年11月29日 19:54
3 大切なのは、感謝して生きる気持ち。 1995年1月17日 阪神淡路大震災発生 これは、再び笑顔を取り戻した人々の勇気と感動の実話。 苦しなったら顔上げて、 奥歯折れるまでかみしめて、 笑うんやで。
2. 映画「ありがとう」  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2006年12月06日 01:08
あれからまだ、12年も経ってないんだよね、もう随分昔の遠い出来事のように感じてしまうのだが・・彼は59歳11ヶ月の史上最年長でプロテストに合格した 1995年1月17日、真冬の夜のまだ明けきらぬとき、それは突然やってきた、阪神淡路大震災・・古市忠...
3. ありがとう  [ 八ちゃんの日常空間 ]   2006年12月07日 20:49
冒頭の震災のシーン「日本沈没」よりリアリティがあり、恐ろしかった。おそらくあの時の恐怖を思い出す人もいるのではないだろうか…。 長く住んだ町が崩壊する、何もかも失う。 考えただけでも恐ろしい。
4. ありがとう  [ いろいろと ]   2006年12月08日 19:44
11月25日全国ロードショー  出演 赤井英和、田中好子、薬師丸ひろ子 ほか  
5. 実話に基づく感動巨編「ありがとう」見てきました。  [ よしなしごと ]   2006年12月17日 03:15
 もう終了間近ですが、ありがとう見てきました。いつも行く映画館では昼間しかやっていないので、会社帰りに見に行くこともできずに、遅くなってしまいました。
6. ありがとう  [ 欧風 ]   2006年12月21日 22:16
16日は「硫黄島からの手紙」、「暗いところで待ち合わせ ??Waiting in the Dark??」を観たんですが、ま、<span style="font-siz
7. 「ありがとう」:虎ノ門二丁目バス停付近の会話  [ 【映画がはねたら、都バスに乗って】 ]   2006年12月22日 21:53
{/kaeru_en4/}「日本消防会館」って日本中の消防士がいるのかな。 {/hiyo_en2/}消防署じゃないから、ここにはいないと思うけど。 {/kaeru_en4/}阪神・淡路大震災のときは、消防士も大活躍だったけどな。 {/hiyo_en2/}消防士じゃないけど、被災者の救出に大活躍した町の写真...
8. 阪神大震災から12年〜ありがとう(2006年11月25日公開)〜  [ オレメデア ]   2007年01月17日 15:42
1995年1月17日午前5時46分. 近畿地方各地を大地震が襲った. なかでも,神戸市一帯や淡路島などでは大きな被害をうけ,壊滅状態. 私にとって,被災地に乗り込んで「ここはもう,神戸じゃないみたいです」と全国に向かって伝えていたテレビのアナウンサーが印象的だった...
9. ありがとう  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年01月24日 20:41
 『1995年1月17日 阪神淡路大震災発生 これは、再び笑顔を取り戻した人々の 勇気と感動の実話。』  コチラの「ありがとう」は、11/25公開の文部科学省選定、文化庁支援、日本赤十字社支援って言うちょっと堅苦しい感じのしちゃう映画なんですが、試写会で観てきちゃ....

この記事へのコメント

1. Posted by シュウ   2007年07月02日 22:33
原作は、『還暦ルーキー』ではなく、『ありがとう』が正しいかと思いますが、どちらも同じような内容の小説なのでしょうか。
2. Posted by つぶあんこ   2007年07月03日 21:48
映画化に際して改題されただけで、同一の作品ですよ。
3. Posted by ぽち   2007年11月27日 18:19
ご指摘の通り、前半と後半の結び付きが弱いですね。
熱く復興を宣言した父が、無職のダメ親父になり、ゴルフバックを見つけて運命を感じてプロテスト…
彼が尽力した様を丁寧に描けば良かったものを、あれではただのダメ親父で、プロテストを許す家族も変と言うか、親父の復興時の頑張りを見せていれば、確率の低いプロテストを応援したくもなりますが、あれではまず働けよ!っ言いたくなりました。
4. Posted by つぶあんこ   2007年11月28日 19:03
合格したから良かったものの、落ちてたらタダのろくでなしですよね。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments