2006年12月04日

アジアンタムブルー 30点(100点満点中)

お前 傘下手だな
公式サイト

エロ雑誌の編集者である主人公(阿部寛)は、仕事上の流れで写真家志望のヒロイン(松下奈緒)と偶然に知り合う。自分の中に感じる満ち足りなさを互いに感じた二人は、いつしか愛し合う様になるが、しかし彼女の体は実は…という、極めてベタでありがちなストーリー。

そのベタなお話を、独特の情感描写によって、充分に読ませる作品に仕上げた大崎善生の同名小説を映画化した本作、ストーリーはほぼ原作通りながら、残念な事にその完成度はあまり褒められたものではない

主人公の職業以外に、特にヒネリのない物語において、事象を淡々とつみかさねて、時に大きく展開を省略してしまう本作の作り方は、あまり正解とは言えないだろう。もっと、ひとつひとつの展開に際して、主人公両名のそれぞれの視点からの心情描写を丹念に描き、観客の感情移入を誘って感動させる方向に持って行くべきではなかったか。

特に、意図的に行われている"省略"の見せ方は、あまり上手い物ではなかった様に思える。例えば、仕事とプライベート両方で嫌な事があって腐ってる主人公が、ヒロインが働くコンビニに偶然入って偶然再開する場面があり、その次の場面では、もう二人は一緒に住んでいる、という省略が行われている展開がある。

これは、コンビニのシーンの最後に、買い物だけ済ませてサッサと出ようとする主人公が、やはり思い直して立ち止まるまでを見せる事で、「もう説明はいらないだろ?」という狙いなのはわかるのだが、単純なお話で、心情描写が最重要な作品において、二人が正式に想いを発露する場面なくしては、その後の二人の描写に感情移入出来ないのだ。

また、"水たまりに映る被写体"を専門的に撮っているヒロインという設定や、わざわざニースにまで実際にロケに出た風景の描写も、本作独自の特徴であるのだろうが、本作は製作が共同テレビで監督もテレビドラマ専門の人であり、残念ながら、映画的な映像の絵的な美しさをあまり楽しむ事が出来ないのも、大きな問題点だ。

映画的スケールを感じるのは、ラストの空撮くらいで、意図的にアップが多用される、共同テレビ独特の演出技法は、あまり映画向きとは言えないだろう。

普段はコミカルな役柄が多い阿部寛の、ガラリと変わったシリアスな演技は彼の幅の広さを感じさせるものだし、松下奈緒の、阿部寛と並んでも小さく見えない、長身のスタイルの良さや、役柄的に"飾らない女"の自然体ぶりへの嵌り具合は良くしたもので、脇を固める小日向文世や佐々木蔵之介、小島聖などの安定した演技と存在感もあるだけに、内容の空虚さが勿体ない。

また、タイトルになっているアジアンタムおよびアジアンタムブルーの持つ意味が、作品内において全く有機的に活かされていないのも、困ってしまうところだ。

エログラビアの撮影現場の様子など、もっと面白く見せられそうな要素も多いだけに、この出来はあまりに不充分だ。特段に鑑賞の必要はないだろう。



tsubuanco at 17:30│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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