2006年12月13日

王の男 35点(100点満点中)

俺はノンケだって食っちまうような王だぜ
公式サイト

16世紀初頭の朝鮮を舞台に、歴史的には暴君として知られる当時の王、燕山君の失脚にまつわるエピソードを創作したもの。原作は舞台劇の『爾』。

幼少期から共に生きてきた、旅芸人のチャンセンとコンギルは、都で金を稼ぐため、王とその愛人を笑いものにする芸を披露して人気者となるが、たちまち捕らえられ処刑寸前となる。「王がこの芸を見て笑えば、不敬でも侮辱でもない!」とのチャンセンの訴えが通り、王である燕山君の前で実演させられる事となるが…というストーリー。

まず本作で目を引くのは、王をも魅了する、女性と見紛うコンギルの容貌だろう。と言っても日本用のポスターにて見られる、いわゆる"アジアンビューティー"のお手本の様な美しさは実は"奇跡の一枚"であり、実際の劇中では及川光博が女装している風にしか見えないレベルだ。それでも充分キレイではあるが。

実在の人物である燕山君は、普通の日本人なら知らない人が圧倒的多数であろうが、朝鮮史においては説明不要の基礎知識的な存在。本作は、史実として伝えられている彼の生い立ちや行動をベースとし、新たな解釈を大胆に加えたキャラクターとして"創作"されている。(ちなみに『チャングムの誓い』に登場する王の先代でもある)

そのため、母親の死の真相にまつわるエピソードや、終盤に唐突に起こるクーデターなど、歴史の知識がなければ説明不足に感じてしまうところも多い。

それを踏まえた上で観るとして、本作の主軸は、チャンセンとコンギルの、セックスを伴わないプラトニックな同性愛関係と、そこに乱入する燕山君との男ばかりの三角関係(女の愛人も一応絡むが)なのだが、まずチャンセンとコンギルの間柄がどの程度のものか、王がコンギルをどの様に思っているのか、あるいは逆に、コンギルが王をどう思っているのかなど、作品を楽しむために必要最低限の心情表現が、非常にわかりづらくて困らされた。

三人が三人とも寡黙で、では台詞の代わりに表情などで心情や距離感を観客に伝えてくれているかというと、これが全然伝わってこない。だから終始誰にも感情移入できないし、興味も惹かれない。

芸人の演じる喜劇も、あまりにベタすぎて笑えないし、それを得意げに演じ、観衆が大受けしているのを見せられても醒めるだけだ。

この一件の裏で糸を引いていた重臣の意図もわかりづらく説得力に欠け、脚本
の練りの足らなさ、演出の拙さが随所に見られてしまう、中途半端なストーリーに終わってしまっている。

それでも、歴史的には非常冷血な暴君とされている燕山君を、"偉大な父王の呪縛から逃れられない、孤独なバカ殿"というキャラクターとして設定し、等身大の人間として、新しい解釈を見せた点は興味深く評価に値するところだろう。

本作、そもそも題材からして全く日本人向けではないため、普通の日本人が楽しむ事は難しいのではないだろうか。燕山君に興味のある人ならば、一見の価値はあるかもしれない。



tsubuanco at 17:54│Comments(0)TrackBack(3)clip!映画 

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1. [映画]王の男  [ お父さん、すいませんしてるかねえ ]   2007年01月20日 22:06
韓国で動員記録を残した大作の初日(土曜)午後7時の回が、ぼくを含めて7人の観客だなんて、どうなんでしょうか? 大丈夫でしょうか、この映画館… あらすじを簡単に 15世紀末から16世紀はじめにかけ、朝鮮に悪名をとどろかせた王・燕山君の御世。 旅芸人チャンセンと
2. 王の男  [ 銀の森のゴブリン ]   2007年06月22日 19:03
2006年 韓国 2006年12月公開 評価:★★★★☆ 監督:イ・ジュニク 脚
3. 王の男  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年01月05日 21:21
 『それより奥は、見てはならない。』  コチラの「王の男」は、王が寵愛するモノを呼ぶときに使った呼び名「爾」と言う舞台劇の映画化で、韓国では1,300万人(国民の4人に1人)を動員したとされる12/9公開の映画なんですが、試写会で観てきちゃいましたぁ〜♪  韓国の...

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