2006年12月22日

キング 罪の王 50点(100点満点中)

イスになれーっ!
公式サイト

『モーターサイクル・ダイアリーズ』などで知られる、ガエル・ガルシア・ベルナル主演作品。家族のいない孤独な青年、エルビスを主人公に、彼や彼と関わる人間が犯す"罪"と、それに対する"赦し"を観客に訴えかける、挑戦的な問題作。

エルビスの犯す"罪"は、刑法上のそれと言うよりは、キリスト教の教義においての"罪"として行われるものであり、エルビスの"父親"であるデビッドを、町で尊敬を集め、家族に囲まれて幸せに暮らす牧師に設定しているのは、その構図をわかりやすく寓話的に見せるためだろう。

聖職者であるデビッドが、過去に犯した"罪"によってエルビスが生まれ、そのエルビスが今また"罪"を重ねて行く、因果応報とも言うべき無常観が、作品全体を支配している。

それは、エルビスが表面的には笑い、泣き、戸惑うなど感情を見せていながらも、観客側からは感情移入どころか何を考えているのかすら全く掴めない、意図的にエモーショナルな部分を観客に伝える事を拒否した、淡々とした演出、見せ方によるものが大きい。

エルビスに悪意があるのか無いのか、意図的に罪を犯したのか違うのかがわからないからこそ、フラットに静かに進行する物語を、物凄く恐いものとして感じる事となるのだ。

エルビスの行動は、表面的な部分だけを見れば、"復讐"とも取られがちだが、事はそう単純なものではないと、物語の構成や人物配置、それぞれの描き方を見ていれば、自ずと気づくはずだ。

神を信じない日本人ですら、本作を観てそれなりに悪寒を覚えるのだから、キリスト教が生活に根付いている本国アメリカにおいて、本作がかなりの物議を醸し出した事は当然だろう。

神におもねる者は、結局は自分の責任を神に押しつけ、逃避しているだけに過ぎないと、宗教の持つ偽善的、あるいは利己的な負の一面を正面から突きつけた上に、最後は結論を見せずに投げっぱなしで観客を突き放して終わる、後味の悪すぎるラストが全てを象徴している。

近親相姦、家族殺しなど、オディプス王やカインとアベルの話を知っていると、より物語の暗喩構造が理解出来るであろう本作、日本人には伝わりにくい内容かもしれないが、興味があるなら観て損はないだろう。


蛇足:
主人公の"妹"役のペル・ジェームズは、役の上では16歳だが、撮影当時の実年齢は28歳。白人は老けて見える事を考慮しても、実際どう見ても16歳には見えないし、劇中の台詞で「16歳には見えない、大人っぽい」とフォローしなければならない事態に。だったら最初から、もっと若い娘を使えばいいのにと。


tsubuanco at 16:30│Comments(0)TrackBack(3)clip!映画 

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1. The King キング 罪の王  [ Cinematheque ]   2006年12月22日 13:31
21歳の青年エルビスは、海軍を退役し、まだ見ぬ父デビッドに会うためテキサスの小さな町を訪ねる。しかし今は裕福な牧師として妻子とともに新たな生活を送る父にとって、突然現れた息子は汚れた過去を象徴する存在だった。拒
2. 真・映画日記『キング 罪の王』  [ CHEAP THRILL ]   2006年12月22日 20:54
12月7日(木) 日中、これといったことがない。 (ここだけオンタイム)猛烈に眠い。映画パートのみ書きます。 *** 渋谷の「シネ・アミューズCQN」で『キング 罪の王』を見る。 これが予想以上に良かった! ガエル・ガルシアが出てる作品はどれもレベルが高...
3. キング 罪の王  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年12月29日 20:52
 『懺悔しよう、愛のために。 ―彼が犯すのは、悪魔さえ怯える、究極の罪。』  コチラの「キング 罪の王」は、11/18公開となった"現代社会の偽善と妄想が暴かれる、スキャンダラスで冷酷な寓話"なんですが、観てきちゃいましたぁ〜♪  主演は、「アモーレス・ペロス....

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