2006年12月23日

上海の伯爵夫人 30点(100点満点中)

あのねぇー、閻王なんて作り話よ
公式サイト

日中戦争前夜の上海租界を舞台に、ロシア革命で没落し祖国を追われた元貴族・伯爵夫人ソフィアと、盲目の元外交官であるアメリカ人・ジャクソンの二人の出会いと進展を軸に繰り広げられる人間模様を描いた映画。

この映画、前半はかなり退屈な時間となっている。あの手この手で貶められている、ソフィアの悲惨な境遇と、そこでも自分を見失わない、人間としての強さには感情移入出来るが、一方のジャクソンは、家族を失って以来心を閉ざしている設定のためか、何を考えていてどうしたいのかが全く伝わって来ず、彼と奇妙な友人関係となる謎の日本人、マツダ(真田広之)も、その行動の真意や実像が全く説明されない(これは意図的なものだが)ため、このメインの男性2人に全く感情移入出来ず、物語世界に入り込む事が出来ないのだ。

ジャクソンが心を閉ざしていた理由や、開店したバーの方向性を決めた理由など、ジャクソンと物語を理解して感情移入するために必要な情報が明かされるのが、かなり終盤近くになってからというのが、大きな一因だろう。

この辺りの"仕掛け"は、もっと早い段階から少しずつ匂わせ、最終的に「やっぱりそうだったのか」と納得させる、そんな構成にした方が、共感し楽しめるものとなっただろうし、ジャクソンが盲目の設定である必要性や、ソフィアと娘の関係と、ジャクソンと失った家族の関係とのシンクロ構図なども、もっと効果的に生きたのではないだろうか。

終盤の、日本軍の侵攻が開始されてからの喧噪と混乱の描写は、物語の緊張感を高めるとともに、人間関係の収束を上手く盛り上げているし、また、"戦争"そのものは忌むべきものとして描きながらも、日本軍人個人としては、ごく普通の人間であると、細かい役どころまでが、等身大の"人間"として、しっかり描写されている事も評価出来る。日本以外の国で日中戦争を扱いながら、"日本人=悪"なる単純明快な図式が安易に用いられていないのは珍しい。

確かに終盤は映像的にもストーリー的にも盛り上がって、ラストも決して後味の悪くならない、余韻に浸れるものではあるが、何せ前半の退屈な時間が長過ぎるのが辛い。もっと上手く整理してほしかった。

題材や出演者に興味があっても、少々辛い鑑賞となるかもしれない。積極的にはオススメしない。


tsubuanco at 17:10│Comments(2)TrackBack(4)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ??   2006年12月21日 11:15
なんでまだ21日なのに日付が先行しているんでしょうか?
2. Posted by つぶあんこ   2006年12月21日 11:55
別に「日記」を書いているわけではありませんので、
日付なんてどうでもいいと思ってます。

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