2006年12月25日

名犬ラッシー 45点(100点満点中)

銀髪の噛みつき魔
公式サイト

これまでにも何度も映画化、ドラマ化、アニメ化され、タイトルだけなら日本人でも誰もが知っている、イギリスの児童文学『名犬ラッシー』を、比較的原作に忠実に映画化

と言っても、全体的なストーリーや登場人物は確かに原作そのままだが、いくつかの大事なエピソードが省略されているなど、子供向け映画だからあまり長く尺を取れないとは言え、急ぎ足で上っ面をなぞっているだけの印象も強く感じられる作品となってしまっている。

冒頭では、炭鉱に乱入する貴族の狐狩りの場面にて、当時のイギリスの社会情勢を伝える展開は、炭鉱が閉鎖し失業した労働者が、生活のために貴族に犬を売る、物語の端緒となる部分を、当時の事情を知らない子供にも理解出来る様に作られており、また、物語そのものの根幹となる、少年と犬の絆の描写に関しては、売られる前の段階にはあまり尺を割けない事を考慮してか、その後の何度かの脱走劇と、それに対する少年の反応を見せる事で、両者の関係を観客に印象づける様にされており、導入部としての序盤の構成は上手い

その一方で、映像的な面でのこだわりの弱さを感じたのも事実。例えば、ラッシーが2メートル近い柵を跳び越えて逃げる場面があるが、この一連の跳び越える様子が、カットを細かく割りすぎているため、観客を「うわ!跳び越えちゃった!」と驚かせようとする意図が伝わりにくいものになっている。ここはCGを使ってでもいいから、ワンカットでわかりやすく見せるべきだっただろう。

他にも、公爵の犬係がラッシーを鞭打とうと自分のベルトを外し、そのせいでズボンがずれて転ぶ、という場面があるのだが、肝心のズボンがずれている事をしっかりと見せていないため、転んだところで笑いに繋がりにくいのだ。ベタなネタだけに、しっかりと映像で伝えるべきだろう。

スコットランドからヨークシャーまで、ラッシーの800kmにおよぶ長旅を表現する風景描写は、各地域や季節をわかりやすく視認させる様には出来ているが、やはり尺が短すぎるため、ダイジェスト感が印象づけられてしまう事も。原作にもある"ネス湖を迂回する場面"で、"例のアレ"をさりげなく見せられるあたりは憎い演出とも感じたが。

また、"長旅"を感じさせない要因の一つとして、原作にあった"自力で食物を得る"展開が一度もなかった事も挙げられる。これは、飼い犬が自力で800kmを踏破する間、何をどうやって食べていたのか、子供でも不思議に思う事だ。通常ならあり得ない出来事にリアリティを持たせるためには、必要不可欠な描写で、避けて通ってはいけないはずだ。

が、旅芸人と同行するエピソードあたりから始まる、後半の畳み掛ける様な"泣かせ"場面の連続は、子供向けなためか、ひたすらわかりやすく、尚且つ過剰にはなりすぎない様に見せられ、子供ならずとも、犬好き、動物好きなら感動出来る様に作られている。特に町に帰り着いたラッシーの一連の描写は、クリスマスの教会の描写と、外のラッシーの描写を上手く対比させており、感動を上手く煽っている。

原作好き、動物映画好きなら、それなりに楽しむ事が出来、『名犬ラッシー』とはこういう話だ、と、誰が観てもわかりやすく受け入れられる、スタンダードなテキストとしては無難に出来ており、例えば親戚の子供にDVDをプレゼントしても親に嫌がられない、優等生的な作品ではある。

が、あまりに無難すぎるため、進んで観るほどの作品でもない、というのもまた事実。特にオススメはしない。



tsubuanco at 16:15│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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