2007年01月06日

ダーウィンの悪夢 30点(100点満点中)

ブックオフ ヘビーユーザーの清水國明です
公式サイト

アフリカ、タンザニアのヴィクトリア湖に放流された外来魚・ナイルパーチによって、地域の住民や生態系を襲った事態を追ったドキュメント映画。

ナイルパーチは日本でも主に加工食品として供給されている淡水魚で、「"白身魚のフライ"って、何の魚かワカンネーよ!」などと冗談で言われたりしている、名前はマイナーだが存在はメジャーな魚。

だが、それが日本におけるブラックバスやブルーギルの如く、湖の生態系を破壊し、地域の産業形態までも変化させ、搾取と貧困の図式を生み出している様を、漁師、加工業者、それを海外へ輸送するパイロット、地元に住み着く売春婦やストリートチルドレンなどからのインタビューを交え、散文的に見せられていく。

映画冒頭、魚を積みに入国して来る輸送機と連絡を取る管制官が、室内を飛び交うハエを叩き潰そうと必死になる場面から始まり、アップで見せられる、潰されたハエの映像が、今後の展開を案じさせる効果を出しているのだが、どうもドキュメント映画にしては"作りすぎ"な感が強く、この時点であまり期待は出来なくなってしまう。

その後も、例えばナイルパーチの増殖によって、具体的にどの様なプロセスを経て環境汚染が進んだのかなど、観客が知りたいと思う部分を科学的データと併せて説明するといった進行は無く、ただただ地域の貧民の悲惨な様子を淡々と見せられ気分が沈んでしまうばかりで、検証、考証に乏しいのは問題だろう。

特に、売春婦やストリートチルドレンの悲惨さを殊更にクローズアップする様な構成、演出はあまりにも陳腐で、そんな表層的な事象よりも、その根本となる部分に焦点を当て、本当の問題点を浮き彫りにしなければ、観客に訴える力は弱いのではないか。

実際に、この映画を観たフランス人達が、"ナイルパーチ不買運動"を始めてしまうという、事の本質をまるでわかっていない愚行に出る者まで現われる始末で、これはもちろん、今も昔も搾取の当事者でありながらその自覚すらないフランス人が愚かなのは前提として、映画の語り口にも不備が多かったと考えられて然るべきだ。

何より、その搾取と貧困の図式は、本当にナイルパーチだけが原因なのか、そもそも地域自体に問題点は無かったのか、と言った、別の観点からの見解に触れないのは、フェアではないだろう。(まあ、ドキュメントはそういうものになりがちだが)

扱っている問題は興味深いが、どうにも中途半端な印象を受ける作品。地上波で放送される事もまず無いだろうし、特にオススメはしない。



tsubuanco at 14:39│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 名無しさん   2007年02月08日 16:38
確かにあざとさは感じましたね。
殺された売春婦の生前の映像を
仲間たちに見せるくだりなんか特に。
2. Posted by つぶあんこ   2007年02月08日 16:54
アレって単なる殺人事件だから、事の本質と関係ないですもんね。

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