2007年01月31日

幸福な食卓 40点(100点満点中)

リリカルコミカル恋するとろける み・ら・く・る・み♪
公式サイト

瀬尾まいこの同名小説を映画化。主演はもろこし体操のCMで知られる様になった北乃きい

タイトル通り、"食卓"がメイン舞台の一つとなる本作、主人公である地味な中学生、佐和子の一家は、毎朝家族4人で食事をとる事をルールとしていたが、そのルールを決めた母親が何故か別居中、父親は突然「父親である事をやめる」と宣言し、兄はいきなり農業を始める。主人公以外が壊れ始めていく、奇妙な家族模様をベースに、少女の青春の成長を描いたストーリー。

何よりもまず、主演の北乃きいが、これまでに出演したどんな作品よりも可愛く撮られている事が、本作の大きな特色だろう。

何故か30代のオバサンにしか見えなかったもろこし体操や、髪型やおかしな脚本のせいで印象の悪かった『14才の母』などとは違い、"地味に可愛い"リアルな中学生の姿がそこにあり、家族や周囲の人間など、それぞれに対して様々な状況に応じて見せる、表情の機微を上手く捉え、彼女の魅力を余すところ無く伝えており、ファンならずとも、その可愛さに見入ってしまうだろう。

"気になる男の子"が、自分に向けて何気なく言った言葉を、一人になった時に口に出して反芻する、といった、青春の恋愛のこっ恥ずかしさもよく表現出来ており、見ているだけで懐かしい気分にさせられたりもする。

ストーリー上、基本的に暗く沈んだ表情が多いのだが、それによって、時に笑顔を見せた時のギャップが大きく、より可愛く見える効果となっている。

主人公に限らず、本作はその"表情"を強調する画面作りが終始通されており、それも、単にアップを繰り返すといった単調なものではなく、例えば、給食の場面では、主人公と隣に座る男子生徒・勉学(勝地涼)との会話を、双方のアップの切り返しを素早く切り換えて見せ、続くゲタ箱での会話では、引き気味の画で長回しで見せる、と、状況に応じ緩急をつけ、メリハリのある映像を作っている。

兄が部屋に置いている、恋人との2ショット写真なども、この"表情"で意味を伝える演出の一環となっている。

そんな風に、その場その場においての"表情"による心情の見せ方、は上手く出来ているのだが、その一方で、原作の内容を尺にあわせて省略しているため、全体的な構図の推移が説明不足に感じる点が多々あるのは問題だろう。

それと共に、原作の台詞をそのまま使っているダイアローグが多く、会話として不自然に感じるやりとりも、そこかしこに見られ、特に"説明台詞"には違和感が残ってしまう事となる。

なかでも、「気づかないところで誰かに守られてるってこと」なる台詞は、印象的なものであり重要な台詞ではあるが、だからこそ、それを口に出しては興醒めしてしまうというもので、この辺りは原作そのままでなく、映像で観客に伝える様な工夫が必要だったのではないか。

こうした、説明臭い部分と、説明不足な部分のバランスが悪い事は、評価としてマイナスだ。

それでも、物語前半部となる、佐和子と勉学との、未熟でサワヤカな恋愛ドラマは、最初に述べた北乃きいの表情や言動の可愛さによって、退屈せずに微笑ましく見守る事が出来るもので、これが作品のメインストーリーであったなら、もっと評価は高いものになったかもしれない。

だが本作は、あくまでも"奇妙な家族"を通じて、主人公の心の成長を描く事が主目的であり、恋愛はそれを促す一ギミックとしての扱いでしかなく、そのため、勉学は(作者にとって)都合のよすぎるかたちで、アッサリと退場してしまう。これは原作の段階で大きな問題点で、あまりに安易な進行に興醒めしてしまう。

この件がきっかけとなり、主人公は成長を始めるのだが、それにしても、あまりに御都合主義すぎではないか。生きた人間としての存在を拒否され、使い捨てられた勉学というキャラクターがあまりに不憫でならず、その後の展開にはサッパリ感情移入出来なくなってしまうのだ。

人を死なせて感動させるのは、最もお手軽な定番であり、誰も不幸にならずに感動させる方が、よほど難しいのだ。何ら伏線も必然性も無しに、"逃げ"を打って泣かせようとする、稚拙なストーリーは評価出来ない。それ以外の部分は、それなりに出来ているだけに残念だ。

ラストシーンではミスチルの『くるみ』が流れるが、いくら歌詞の内容が映画のストーリーに合ってるからと言って、主人公と違う名前どころかどこにも出てこない「くるみ」を連呼されても困る。この辺りも、「適当に"いい曲"を流して感動させてやろう」という、安易な意図が見え見えでガッカリだ。その場面で北乃きいが、相変わらずいい表情で演技しているだけに、尚更勿体なさが募る。

この歌が流れるのがラストシーンで、歌が終わると同時に映像が暗転し、エンドロールとともに別のエンディング曲が流れ出すのは、これは確実にダメだ。『くるみ』とラストシーンの映像にエンドロールを被せればそれでいいじゃないか。むしろそうしてスパッと終わらせないと、二回もエンディングを見せられている気分になってダレるだけだ。何を考えてこんな終わりにしたのか、理解に苦しむ。

ストーリー等には問題も多いが、北乃きいの可愛さを堪能出来るPVとしては良く出来ている。その点に興味のある人は是非。他にはオススメしない。


余談:
勉学が序盤でさりげなく言った「弟はクワガタに夢中」の台詞が、終盤でしっかり回収されていた小ネタには笑わされた。いいぞ弟。



tsubuanco at 17:44│Comments(12)TrackBack(17)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by りん   2007年01月30日 09:30
あまりこの映画には興味ないので
一部分だけツッコむのはどうかと思いますが、
生粋のミスチルヲタなのでとりあえず・・

「くるみ」という意味は女性の名前ではなく、
ある文章を短くした略語で
たしか「くるみらい(未来)」。

なんかでしゃばってすいません。。
2. Posted by つぶあんこ   2007年01月30日 10:47
その情報は聞き及んでおりますが、「来る未来」だと「来」の字が重複して、言葉としてあまり美しくないですよね。「未来」を反転させて「来る未」という解釈の方がスンナリ行く様な気もします。

また実際に歌詞としての使われ方を見ると、最初のフレーズで「ねえ、くるみ」と呼びかけるのは、これは擬人化の手法ですね。

と同時に、通常用いられない造語として、人名と見られやすい言葉を、意図的に選択している段において、この「くるみ」を、人名とも解釈する事は、作り手の狙いに相当している、と思われます。

言葉の意味は単一ではなく、ひとつのフレーズに様々な意味を込めてメッセージを織り込む、というのは、創作の基本であり、だからこそ、作り手側は、自分の手を離れた作品に関して、作品内で語られていない事を補足する必要は無い、とも思います。

まあ単純に、「その名前じゃないファンを不快にさせない」心遣いとも取れますが。
3. Posted by りん   2007年01月30日 18:47
レスありがとうございます。
桜井さんの詩って意味不明な造語多いんですよねぇ(笑)
CD発売当時は私もこれは彼女宛ての歌だぁ〜とはしゃいだのですが、
実際の彼女の名前は「もっと古風だ」とコンサートで聞き、個人的にorzな感じでありました。。

あぁなんか映画語ってないんですが、
こんなコメントでもいいんでしょうか(汗)

暗い映画は好きではないし、知ってる共演者少ないんですが
テレビドラマみたいに映像と主題歌が
流れる演出は大好きなので(ミーハーw)ミスチルの曲聞きに行こうかしらww
4. Posted by つぶあんこ   2007年01月30日 20:08
ミスチルファンだったら、歌が流れるラストシーンは、映像の心地よさと相まって、泣いてしまうかもですね。

まあ、見て損した、と思う事は無いかと。
5. Posted by trueblue   2007年02月02日 17:45
エンディングについてですが、こちらでも某巨大掲示板でも同じようなことが書かれていますが、
個人的にはエンドロールが別(後)でよかったんじゃないかな、と思いました。
理由は、「くるみ」をバックに佐和子がきちんと演技をしていたからで・・・
“ときどきふりかえったりもするけど、結局人生は前を向いて歩かなきゃ”、という思いが伝わってきたような気がします。
そこにクレジットの文字が重なるとそっちにも気をとられてせっかくのラストシーンが台無しになったと思うのですが。
6. Posted by つぶあんこ   2007年02月04日 00:35
映像とテロップ、両方とも同時に見れませんかね。
7. Posted by にしやん   2007年02月04日 05:29
ストーリーの雰囲気と、反論しにくい「家族愛」にほだされて、妙に甘い評価をしているこの映画の評論が多い中、こちらの評はほめてるところも含めて的確。と思いました。
北乃きいさんの今後には非常に期待している次第です。
8. Posted by つぶあんこ   2007年02月05日 15:48
事務所が必死っぽいので、見かける機会は増えるでしょうね。
9. Posted by きゃん太   2007年02月19日 23:50
 映画評が充実してきましたね。いつも見る前の参考にさせてもらっています。
 最近のちょっとした日本映画ブームに支えられてなのかこの手の映画って人気投票なんかだと評点高いですね。
 ストーリーも中途半端で安っぽいし、ミスチルにも北乃にも思い入れが無いので退屈でした。この間見た「手紙」同様撃沈しました。これからも辛口の評価をお願いします。
10. Posted by つぶあんこ   2007年02月20日 16:09
どうもです。
辛口のつもりはなくて、正直に書いてるだけなんですけどね。
今後とも御愛顧ください。
11. Posted by kimion20002000   2007年07月01日 16:48
僕は、くるみを、この映画のためのヴァージョンで録音したとき、小林武史やミスチルは、相当考えたような気がしたんですけどね。
12. Posted by つぶあんこ   2007年07月03日 21:44
いやあ、考えてる人はアホみたいに離婚再婚しないと思いますよ(笑

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