2007年01月28日

幸せのちから 45点(100点満点中)

Mr.&Jr.スミス
公式サイト

ウィル・スミスが主演し、スミス本人の実子が主人公の息子役を務める、実話を元に作られた、社会の底辺から何とかして抜け出そうと奮闘する、一人の男の物語。

この元になった実話および当人、日本ではほとんど知られていないが、本国アメリカではそこそこ知られる人物であるらしい。つまり本作のメインターゲットである欧米人にとっては、大まかなストーリーや結末は、あらかじめ知られている事が前提で作られているのだ。

その上で、観客を飽きさせない様、興味を引かせ続けるドラマを展開すべく、製作者は意図していると見受けられるのだが、どうにも、そのドラマとしての創作・脚色と、実話として外せない部分とが、上手く融合出来ていない様に感じられた。

まず、主人公がどんどん貧乏に陥っていく経緯が、どう見ても自業自得である事で、観客は彼に同情出来ず、よって応援も出来ないのだ。

彼が息子を連れ回すのも、彼自身の「息子は父親といるべきだ」との、利己的な願望に過ぎず、母親はないがしろで、子供自身の意志も無視と、その自分最優先さ加減には呆れる。

タクシーを乗り逃げしたり、地下鉄の改札を飛び越えたりと、必死になる事情はあっても、無関係の他人に実害を負わせて一切フォローなしでは、感動も何もあったものではない。

一方で、起死回生を狙って挑んだ研修をこなすあたりの展開は、上手くチャンスを活かし、他人がやらない計画的な行動で人脈を築いていく、その過程は面白く描かれていたのだが、その合間合間に挟まる"不幸自慢"的なエピソードには同情出来ず、その"成功秘話"的な側面がコマ切れになってしまい、今ひとつ乗り切れない事にもなってしまっている。

留置所から面接へ直行する展開や、時代設定を活かした、ルービックキューブを使ったエピソードなどは、主人公のキャラクターを観客にも登場人物にも印象づけるとともに、ドラマを盛り上げる役割にもなっていただけに、その様に、どちらかと言えば、"個性的な成功秘話"にウエイトを置き、業績が積み上がっていく様を丁寧に描いた方が、より楽しめるものになったのではないだろうか。

父と子のドラマにおいても、冒頭より登場する"タイムマシン"のフレーズを伏線とし、ドン底に落ちながらも、息子に対する優しさを忘れない、おそらく本編中で最も感動出来るエピソードに繋げるなど、よくした部分もあるだけに、全体のバランスがちぐはぐで一貫性が無い事が引っかかる。

売り物が盗まれて、それを取り戻すエピソードなどは、結局本筋とはほとんど関係なく、盗まれたのは自業自得で、取り戻せたのは完全な偶然と、創作したエピソードとしては、あまりに中途半端だ。

一つ気になったのが、ルービックキューブと同様、おそらくは、当時のアメリカ文化を示す材料として使われていたと思われる、息子が常に手に持っていた、キャプテンアメリカのペンタブルフィギュアである。

普通に観ていれば、この人形は単に息子のお気に入りだ、という表現でしか無く、それを落として失う描写に、表面的な"悲劇"以外の、特別な意味は感じられないかもしれない。

MARVELのキャプテンアメリカというキャラクターは、DCコミックでのスーパーマンと並ぶ、"アメリカの正義の象徴"である。と同時に、その外見からもわかる通り、"白人の正義の象徴"でもある。そのキャラクターを、息子がずっと持っていた事、それを失った後、二度と戻って来なかった事、その流れと、父親の仕事の進展具合とが、ドラマ内において合致していたのだ。

更に言えば、キャプテンアメリカにはかつて、ファルコンという黒人のパートナーがおり、彼はやがてキャップの元を離れて独立する。この設定もまた、主人公の未来を暗示する要素として、用いられていたのではないだろうか。

そんな、勝手に深読みして楽しめる部分もあるだけに、全体的な完成度の低さは残念だ。新卒社会人が新入社員研修で見せられる、"創業者の立志伝自慢ビデオ"と大して変わらない本作、予告やCMで強調されている様な、"感動・涙"は期待しない方がいいだろう。



tsubuanco at 17:08│Comments(4)TrackBack(8)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 弥生さん   2007年01月30日 22:36
つぶあんこさんのファンです。いつもロムってます。
言いたいことはそれだけでした失礼しました。
2. Posted by つぶあんこ   2007年01月31日 13:07
どうも。励みになります。
今後ともご愛顧お願いします。
3. Posted by あんバーガー   2007年02月01日 16:06
初日ということで
王様のブ○ンチの
作品紹介を観た客で満員でしたが
だれひとり
泣いてませんでした
4. Posted by つぶあんこ   2007年02月01日 16:44
ウィル・スミスがわざわざ来日して
宣伝しまくってましたからねえ。

自分の隣の人は寝てました。

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