2007年01月12日

ホステル 60点(100点満点中)

ゆきずりの女と寝たよ!
公式サイト

旅行者が異郷で恐い目に遭う、典型的ホラー映画のパターンに分類される、"クエンティン・タランティーノ製作総指揮"を謳い文句とした米映画。監督は、サイコ・スプラッタ映画『キャビン・フィーバー』で長編デビューしたイーライ・ロス。

前作の『キャビン〜』は、過去のホラー、スプラッタ映画などのオマージュ、あるいはパロディとして、"不条理な恐怖を突き抜けた笑い"を意図して製作されたものだったが、今回は極めてストレートに、"恐い・痛い"映画を作ろうとした、と推察される。

それは、全体的な構成において、伏線や前フリとその収束が、いちいち律儀なほど丁寧に行われている事からも明らかだ。

大麻と娼館が合法のオランダが舞台となる導入部の展開において、主人公達のナンパ師ぶり、女好きぶりをクドい程に見せ、今後の彼らの行動に説得力を持たせようとする(例えば、一度は脱出に成功しかけた主人公が、女性の悲鳴を聞いてわざわざ助けに戻るのは、彼が"超女好き"だからだ、という事だろう)とともに、長い廊下の両側に個室の扉が並び、その中ではそれぞれのセックスが行われている、娼館内の映像を観客に印象づけ、後半に登場する拷問施設との対比となり、逆転の構図を視覚的にもわかりやすく見せている。

あるいは、電車内でのジジイとの会話、タクシー運転手が話す工場、車の中の菓子袋、などなど、何気なく散文的に見せられていたと思っていた情報が、後の展開に有用なファクターとなって活きてくる、それらの物語構成は、良く考えられているし、米映画らしく、最後にはしっかりカタルシスと呼んで差し支えない展開を用意する事で、後味を決して悪いものとしないあたりにも、製作者の心遣いを感じ取る事は出来る。

だからといって、本作の主目的である筈の、"恐さ・痛さ"あるいは"狂気"が、しっかりと描かれているか、と言えば、その点では問題も多い。

いくら必要な前置きとはいえ、前半部のハダカやセックスが続出する展開があまりに長過ぎる。そして長い割には充分にそのエロを楽しめる程の描写ではなく、ライトなものに過ぎない為、余計に冗長さを感じてしまうのだ。おっぱいが出るだけで大喜びな小中学生でもない限り、「もういいから話を進めろ」と、誰でも思うだろう。

後半のメイン舞台となる、拷問施設内での残酷描写もまた、そのライトなエロ描写と同様に、かなりライトなものに終わってしまっている。

確かに、行われている行為自体は、極めて残虐なものだが、問題は見せ方だ。人体が傷つけられる時には、部位が超アップすぎてよくわからなかったり、あるいは痛い表情のみをアップで映し、直接描写を避けるなど、その痛さ、恐さ、グロさが、観客に効果的に伝わる様な映像はほとんどない、ガッカリな映像ばかりが羅列されるのだ。これでは痛がる事も、気持ち悪がる事も出来ない。

また、本来は恐怖の対象となるべき殺人者が不特定多数に存在する上、彼ら一人一人は単なる一顧客に過ぎないため、不条理な仕打ちに対する感情をぶつける対象たり得ていないのだ。その場その場で彼らから逃げ、あるいは逆襲したとしても、個別的なカタルシスに終わってしまい、感情の方向性が定まり辛いのだ。

そして何よりも、主人公(である事は後半でわかるのだが)も含め、誰に対しても全く感情移入出来ない事が、本作の最大の問題点だろう。この種の作品は、その場その場で被害者となる登場人物が味わう恐怖を、自分のものとして体感しドキドキハラハラしたり、あるいは逆に、全く同意出来ない嫌な奴が残酷に殺される事で、「ザマーミロ」と喝采するなどして楽しむのが正当だろう。

だが、そうするには、それぞれの人物が、観客が生きた人間として感じられる事が出来るだけの、キャラクター描写がなされている事が前提条件にある事は言うまでもない。本作、無駄に長過ぎる前フリの割には、それが充分に行われておらず、彼らが被害に合う事象に対し、どちらの視点でも見る事が出来ないのだ。これでは楽しみは半減する。

むしろ、何の説明も無く被害に合ってしまう二人の日本人女性の方が、その理不尽な扱いに対して感情移入できるなど、このあたりの人物描写のバランスは悪い。これは自分が日本人だから、という事では決してなく、劇中で提示される情報の量や質の問題だ。彼女らが中国人でもチリ人でも、同様に感じたであろう。

米映画でありながら、米国人の傍若無人ぶりがヨーロッパなどで嫌われている事を自虐的に題材としたり(日本人まで一緒にされているのは迷惑だが)、『悪魔のいけにえ』『ザ・チャイルド』『東海道四谷怪談』などの、過去の名作ホラーのオマージュ的な描写・展開が散見されたり(特にストリートチルドレンの描写は、本作内で唯一マトモな恐さであり秀逸)と、ネタ的な面白さ、楽しみどころは結構多いだけに、肝心の残酷・恐怖、または心理描写の中途半端さが、ひたすら残念だ。

あまり映画を観ない様な人の大げさな評判を先に聞いてしまうなどで、過剰な期待をして臨むとガッカリするだろうが、ホラー好きならまず見て損はしないであろう一品。機会があればどうぞ。


tsubuanco at 17:15│Comments(5)TrackBack(3)clip!映画 

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1. HOSTEL  [ 黒ラべる(`・ω・´) ]   2007年03月24日 07:52
▼タダ程たかいおっぱいはない クェンティン・タランティーノ総指揮の映画、HOSTELを観ました。 ▼麻薬と売春が合法の国、オランダに来たアメリカとアイルランドの若者三名。   _  ∩ ( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!  ⊂彡 とばかりにおおはしゃぎです。 ...
2. ホステル  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年11月14日 21:12
 コチラの「ホステル」は、クエンティン・タランティーノ製作総指揮のR-18指定のスプラッター・ホラーです。続編も製作されたヒット作で、エログロな王道的B級ホラーって感じでしょうか。  基本的には、ホラー映画は苦手なのですが、「ソウ」みたいに面白い作品は、また...
3. ホステルって怖いの?  [ ホラー映画って呪怨が怖いの? ]   2008年09月20日 12:09
ホラー映画洋画 ホラー映画初心者のすけきよです。オタク監督タランティーノが関わったのに賛否両論だった問題作「ホステル」見ました。 あらすじ:鬼才Q・タランティーノが放つ究極のサディスティック・スリラー 刺激を求めバックパッカーをしながらヨーロッパ各地の...

この記事へのコメント

1. Posted by じゃが   2007年02月08日 01:05
自分は社会人だが、おっぱいが出るだけで大喜びだぜ。
2. Posted by つぶあんこ   2007年02月08日 01:14
じゃあどんどん出していきましょう。
3. Posted by 名無しさん   2007年02月08日 07:59
主人公が拷問されるシーン。焦らされすぎでしたね。
あそこは笑うところですか?
5. Posted by つぶあんこ   2007年02月08日 16:51
滑って転んで脚切ったところがオチでしょう。
『悪魔のいけにえ』のパロディですし。
7. Posted by tao   2008年07月08日 02:22
主人公(最初は絶対一番に死ぬと思ってたタイプ)が、
女性の悲鳴を聞いて戻るトコは、
昔のトラウマ
(溺れた少女を助けられずに母親の悲鳴を聞いて云々)
の伏線かなー?と思いました。

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