2007年02月16日

天国は待ってくれる 40点(100点満点中)

ジャーナリスト宣言(笑)
公式サイト

月9などの人気TVドラマの脚本を執筆し、『いま、会いにゆきます』で劇場映画としてもヒットを飛ばした脚本家、岡田惠和の最新作(個人的には『南くんの恋人』や『イグアナの娘』の人だが)。監督は、本作が初監督作品となる土岐善將。1943年の米映画と同じタイトルだが、全くの無関係だ。

宏樹(井ノ原快彦)、武志(清木場俊介)、薫(岡本綾)の三人は、子供の頃からの親友同士で、大人になっても、かつて誓った「聖なる三角形」を変わらず保ち続けていたが、武志は次第に二人との距離感を感じ始め、薫に結婚を申し込むが…というお話。

本作、観ていてほぼ思った通りに話が進む、典型的な王道ストーリーそのものであるが、何故王道が王道として存在するかと言えば、面白いからだ。王道だからと言って「ありがち」の一言で済ますのではなく、その王道を、いかに独自の面白さに昇華させているか、が、評価のポイントであろう。

ましてや、ここまで古今東西に多用されているパターンを見て、「○○と同じだ」などと、特定作品名を挙げて勝った気になるのは、物知らずを自ら露呈しているのと同じ、滑稽としか言い様のない愚行なので、分別のある大人は慎んだ方が良いだろう。

本作の特徴として最初に見受けられるのは、東京の築地を舞台とし、宏樹は朝日新聞、武志は築地市場、薫は銀座の鳩居堂(お香や書画用品などを扱う店、京都と東京に店舗がある)と、実在の企業、勤務地名や建物をそのまま使って撮影している事だろうか。

これは、作中で大きな意味を持つ「聖なる三角形」を位置関係にも反映させ、その実感を観客にもより伝えたい狙いなのだろうが、鳩居堂なんて地元の人しか知らない、あるいは地元でも知らない人は普通にいる様な店名を出されても、地方人には何の事やらではないか。

魚市場の設定は、武志と他の二人の距離感を表現し、武志が焦って行動を起こしてしまう必然性を持たせる意味があるが、他の二つは一体どういった意図で選択されたのか。各所に象徴的に登場する折り鶴の存在で、鳩居堂にはまだ幾分かの意味を感じ取る事も可能だが、宏樹が朝日新聞に勤めている事が、物語の展開には何ら意味を与えておらず、この選択意図は映画を観る限り不明だ。

ストーリーそのものは先述の通り、突出した意外性も無く、ちょっとした二時間ドラマ並の物語ではあるが、その分、映像までもがテレビ的になってしまわない様、人物の位置関係や背景の奥行きなどを立体的に構成した、映画的な画面作りがなされており、助監督経験が長かった土岐善將の実力と意欲は伺い知れる。この点では、近年量産されている"テレビ局映画"とは大違いで、しっかり"映画"になっており評価出来る。

桜の樹を時間経過や季節変化を表現する素材として用いる手法は、ありきたりながらも画面的な美しさもあって、開始当初はその狙いが上手く生きていたが、話が進むに連れてどうにも適当になってきた感があり、しまいには「3年経った」と台詞で言わせてしまったのには参った。この辺りの映像作りには、もう少しこだわりが欲しかったところだ。

数多くの人気作を書いている岡田惠和だけに、その人物表現や心情の動かし方は手慣れたもので、ところどころにベタながらも「上手いな」と感じさせる描写、設定は見られる。

例えば、三人の家族ぐるみの付き合いを表現するために、誰が誰のところに行っても「ただいま」「おかえり」の挨拶を交わさせるなどは、登場人物達の関係性を一瞬で理解させるギミックとして有用だし、武志が少しずつ距離感を感じ始め焦り"行動"に出てしまう場面でも、これまでわだかまりの無かった筈の三人が、この場で遂に"本音と建前"を使い分けてしまい、その事を三人それぞれのちぐはぐな行動にて見せ、"聖三角形の崩壊"を表現する、この辺りの組立ては的確だ。

物語の起承転結において、普通は"転"に用いられがちな事故までを"起"とし、そこから二回目のプロポーズを"承"に、目覚めを"転"とする、その場その場での先読みこそ出来るが、"普通"ではない構成を狙っている事もわかる。

その一方で、描写が粗い、あるいは省略されすぎている、もしくは設定がおかしくて突っ込んでしまう様な箇所も多々あり、全体の完成度を下げてしまっているのも事実だ。

物語内で重要なファクターとなる"病状"に関する説明が、あまりにもいい加減すぎてリアリティが全く無いのは感情移入を阻む要因となっているし、リハビリで物が上手く掴めない様を見せておきながら、次のシーンでは引き出しを開けて中の指輪ケースを取り出して、それを開けて指輪を摘んで眺めるという、先程まで苦労していたのがウソの様なスムーズさでテキパキ行動し、その後ではまた物が掴めずに苦労するという、誰が見ても突っ込んでしまう描写の適当さは問題だ。

また、"起"や"結"の部分では、それなりに各人物の心情を描いてはいるが、ドラマとしてはこちらの方が重要な筈の"承"と"転"の段においての、心情、葛藤の描写があまりに少なすぎ、話を進める事が優先されている感を強く受けてしまう。ここをもっと綿密に描けば、面白さを感じられただろうに残念だ。

特に劇場で見る程でもない作品だが、出演者のファンや岡田惠和作品が好きな人なら、観て損したとまでは思わないのではないか。レンタルかテレビ放送でどうぞ。


余談:
戸田恵梨香が演じる武志の従妹だが、その存在自体、ドラマの中で全く不要であり、何のために出ているのか、観ていてずっと頭に「?」が浮かびっぱなしだったが(可愛いから許すが)、最後の最後で"オチ"に使われていて、何だかこっちが救われた気分だ。



tsubuanco at 16:44│Comments(5)TrackBack(14)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 滝飯   2007年02月16日 08:35
こんにちわ。
私もあまり面白く無かったと思いました。
でもバブルよりマシでした。

ところで、戸田恵梨香は蟹江敬三の実の娘役だったので、妹ではなくイトコに当たるのではないでしょうか。意味ない設定と思いますけど。

なんかあげ足取りみたいでスイマセン。本文にはツッコムところないです。
応援してます。これからも作品のいいところと悪いところを掘り下げていってください。
2. Posted by つぶあんこ   2007年02月16日 14:55
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

宏樹が片親、薫が両親揃いなので、武志は両親ともにいない、という設定にしたかった故の、ヘンテコな家族構成なのではないでしょうか。
3. Posted by 咲太郎   2007年04月02日 20:11
決してつまらない訳ではないけれど
何処か物足りない、無念の残る映画でした。
ホント、レンタル、TVで十分。

戸田恵梨香の役はやはり
あの台詞を言わせたかったんでしょうね。
4. Posted by つぶあんこ   2007年04月03日 17:59
予告編でもなんだか戸田恵梨香の方がヒロインみたいな扱いでしたし、何なんでしょうかね。
5. Posted by kimion20002000   2009年02月12日 17:12
これ、誰かも指摘していたけど、「聖なる三角形」は、実際の地図に則すると、かなり変形された2等辺三角形ですよねぇ(笑)

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