2007年02月24日

ボビー 70点(100点満点中)

ぶっとくぶっとく生きよ〜♪
公式サイト

1963年に暗殺されたアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディの弟、RFKことロバート・F・ケネディが暗殺された1968年6月5日、事件現場となったアンバサダーホテルを舞台に、当日の事件までのホテル内での、様々な人間模様を描いた、セミノンフィクション映画

RFK暗殺は事実だが、ハリウッドを代表する豪華キャストで贈られる、22人の"一般人"とそのドラマは創作。また、RFK自体は当時の記録映像等による"本人出演"となり、印象的な演説も当時の録音を使用している。

同じ日、同じ建物にて同時進行で行われる22人各々のエピソードが、それぞれ微妙に影響しあいながら進行し、最終的に一箇所に集約されてカタストロフへとなだれ込む、この手法は、1932年の映画『グランドホテル』のそれを意図的に踏襲したもので(三谷幸喜の『有頂天ホテル』は、この『グランドホテル』のオマージュ)、その事は序盤において、"映画の話"をしている男が同作のタイトルをさりげなく口にする事でも明白。

そうして、オマージュやパロディなどの元ネタを作中で明かしてしまう行為に対しては賛否の別れるところだろうが、全編が暗喩で埋め尽くされている本作、ちょっとした息抜き的なお遊びとしては許容範囲ではないかとも思える。

選挙運動員とウエイトレスの会話にて、"ボディダブル(吹替え俳優)"について話されているシチュエーションがあり、これは、本物映像以外で出演者と絡んで映される新撮部分での、RFKを演じた"顔の出ない役者"の登場を示唆するものであり、後半にて該当場面に至った時、「ああ、これの事か」と気づく、同様の小ネタだろう。

ケネディ家っぽい顔の支配人と金髪美女との密会は、JFKとマリリンモンローの関係を、演説パーティで歌うスター歌手がアル中なのは、マリリンがJFKの誕生パーティで歌った事をそれぞれ暗喩する狙いとわかる。

こんな風に、誰にでも簡単にわかるネタから始まり、ありとあらゆるキャラクターと、それらが繰り広げるドラマが、RFKと彼にまつわる当時の図式を投影したものとなっており、詳しければ詳しい程楽しめる様になっている。その意味では、あまり日本人向けな映画ではないかもしれない。

それぞれが様々な問題を抱え、中には絶望感に打ちのめされる者もいる。そうでありながらも、演説パーティ会場において、同じ場所に集まるだけでなく、その心も一つになり、絶望が希望へ変わったと誰もが思った瞬間、今度はその場の全員が、絶望のドン底へと叩き落される。絶望が詰まったパンドラの箱には希望が残されていたが、この映画は一片の希望も残さず、絶望のまま終わりを告げる。

この構図はやはり、泥沼のベトナム戦争、格差、差別、ドラッグ、環境問題など、そして当事件の2ヶ月前に起きた、キング牧師の暗殺事件と、当時のアメリカを"絶望"で覆っていた諸問題を、「何とかしてくれるかもしれない」と、人々がRFKに抱いていた仄かな希望が、暗殺によって一転して絶望へと裏返った、この大局的事実をホテル内のドラマに濃縮投影したものであり、同時に、現在のアメリカが、結局当時と変わらぬ図式に悩まされている事をも象徴しているのだ。

物語の8割方までをフィクションで綿密に積み重ね、ラストシーンにてスルッっとノンフィクションへ移行し、圧倒的な臨場感とバックに流される本物の演説によって、その"リアル"を観客に体感させる、この構成、仕掛けは秀逸。

時代を表現する音楽もまた、その効果を存分に発揮しており、特にクライマックス直前に流される、サイモン&ガーファンクルの『The Sound of Silence』などは、ドラマの盛り上がりとシンクロし、観客の感情をより昂らせている好選曲だ。

当事者のアメリカ人なら、もっと深く鑑賞、考察出来るのだろうが、日本人には題材自体がとっつきにくく、前知識も必要なので理解が難しいかもしれない本作。興味のある人は、ケネディ家や当時の世界情勢などを、ある程度予習してから臨んだ方が、より楽しめるだろう。

少なくとも、RFKとJFKの違いくらいは知っておくべきかと。


蛇足:
監督の元カノとその現夫が出演しているなど、裏事情も知っておくと、より楽しめるかもだ。



tsubuanco at 15:11│Comments(0)TrackBack(8)clip!映画 

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