2007年02月06日

プレスリー vs ミイラ男 20点(100点満点中)

俺はぜったいプレスリー
公式サイト

アメリカのカルト作家、ジョー・R・ランズデイルの小説『bubba-hotep』を映画化。監督は『ファンタズム』シリーズのドン・コスカレリ。主演は『死霊のはらわた』のブルース・キャンベルと、ジャンル映画好きにはタマラない布陣。

何よりも、『プレスリー vs ミイラ男』などという、日本なら河崎実くらいしか手がけないキャッチーな邦題には、無性に心惹かれる人は多いだろう。(河崎実は『ウルトラ6兄弟 vs 亀田3兄弟』を撮りたがっているらしいが、今なら亀田兄弟より叶姉妹+1の方がタイムリーか。というか普通に出てくれそうだ)

だが、その邦題から連想される、馬鹿笑い出来る様なお気楽さ、脳天気さは薄く、ジャンル的にも、ホラー、スリラー、アクション、のどれにも当たらない、脱力系サイコ映画とも称すべき、全編がペーソスに満ち、どんよりと沈んだ空気で進行する、他に例えるのが難しい、独特の作品となっている。

原題『bubba-hotep』の「bubba」は労働者の俗称で、そこから成り上がったプレスリーを表し「hotep」はエジプトの王の意味。プレスリーの称号「キング」とエジプトの王を掛け合わせた造語なのだが、こちらの方が、内容をハッキリさせずに観客(読者)に意外性を与える意味では、いいタイトルだろう。邦題はあまりに出オチすぎて、内容がそのインパクトを超えられていない。というかネタをバラしすぎで、観客のテンションは下がりっぱなしとなり、逆効果に思える。

アメリカはテキサスにある老人ホーム、そこに夜ごとに現われる謎の怪虫と怪人、それに立ち向かうのは、死んだはずのエルヴィス・プレスリー!と、何だかよくわからないストーリーだが、実際に観終わった後も何だかよくわからないままだ。

原題からもわかる通り、かつての王ながら忘れ去られた存在と、主人公とミイラに共通項を持たせ、対比の妙を描く狙いなのだろう。

序盤、老人ホームのベッドにほぼ寝たきりの状態にある主人公が、開きっぱなしのドアから見える廊下を眺め、一日のルーチンが早送りで見せられる展開は、歳をとるほど時間の進み方が早くなる事や、孤独な老人が変わらぬ日々を退屈に過ごしている寂しさ、諦めを表現している。

隣のベッドの男の死を見せ、更なる"諦め"を示し、その遺族との会話で、"必要とされない老人"の哀しさを痛感させる。

主人公がインポであり、それが途中で復活する展開は、「まだやれる事がある」と諦めを捨て、前向きに戦いに挑ませる転機の表現か。

ミイラが老人ホームを襲い、老人の魂を喰らうのは、老人福祉を食い物にしている行政などへの、アイロニカルな隠喩が込められているとも思える。

そうした、"老い"をテーマにした社会派ドラマの体裁を延々見せられ、それらの持つ意味や狙いは確かにわかるのだが、それらが面白さに結びついているかと言えば全くそんな事はなく、所詮出オチに終わっている。いっその事、老人ホームではなく精神病院にでもした方が、よりブラックでサイコな笑いが生み出せたのでは、とも感じる。

しかもそれらの社会派的テーマも、段々どうでもよくなって放り出されてしまうのだ。

ミイラ男本体ではなく、スカラベを相手に主人公が右往左往させられる序盤の展開は、虫を前座に話を引っ張るパターンとして、『空の大怪獣ラドン』や『ゴジラ('84)』あたりが浮かび、ニヤリとさせられもするが、このスカラベが、『ハムラプトラ』の様なおぞましさもリアル感も数の恐怖もなく、作りもの丸出しのが一匹だけしかも無駄にデカい。これは意図的なスカしでもあるのだろうが、それにしてもお粗末すぎ、どんな方向で楽しめばいいのか悩まされてしまう。

主人公は自分がプレスリーだと言い張るが、では死んだとされているプレスリーは何なのかと聞かれると、その"真相"までも回想映像でしっかり説明されている、この辺りは笑いどころなのだろうが、それも究極的にはキチガイの妄想かどうかは最後までわからない。これはシュールさを出すための狙いなのだろうか。

そしてもう一人、ジョン・F・ケネディを自称する黒人の老人が、主人公の友人として登場し、脳を抜かれて詰め物をされた上に、皮膚を黒く染められたと自らの境遇を話す、この男もまた、本気なのかキチガイなのかは不明なまま。しかもこの男がケネディである意味は、小ネタ的な端々を除けば特に必要ないのだ。ここまでされると、また笑っていいのか悩まされる。

こんな歩行もままならない二人が、怪死事件に挑んでミイラ男と対決するのがクライマックスとなるが、そこまでもそれ以降も、特に目立った盛り上がりも見せないまま、ダラシなく進んでダラシなく終わってしまう。

狙い自体は非常に面白い。が、この手の脱力系シュール映画は、確かにヌルさやスカし具合も魅力ではあるが、それを面白さとして感じさせるには、要所要所に突き抜けた決めが無いと、終始ダラシががないままに終わり、本当に脱力してしまうのだ。

装備を揃えて出陣するくだりや、決着場面など、もう少し決めを心得た演出にすれば、バカなお話なりに、キレイに締められたのではと感じる。

自称JFKがマリリン・モンローの事を聞かれるあたりは、"当人的にはカッコ良く決めているが、客観的に見るとただのキチガイ"な演出、見せ方が出来ており、素直に笑う事が出来たのだから、尚更だ。

本作、タイトルが一番面白い、典型的なZ級映画。ビデオスルーされずに劇場公開されただけでもラッキーと言うべきか。興味のある人は全く期待せずに観れば、それなりに面白い発見があるかもしれない。

何より、エンドロールの最後に見せられるテロップが一番笑えるので、ガマンして終わりまで観る事。



tsubuanco at 15:53│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by kai   2007年02月22日 21:00
タイトルから確実に面白いB級映画だと思ってただけに、
観賞後のこの気持ちをどこにやっていいのやら。
2. Posted by つぶあんこ   2007年02月22日 21:17
続編に期待!

は、出来ませんよねえ。

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