2007年02月08日

長州ファイブ 45点(100点満点中)

ちょちょちょちょ長州ファーイブ
公式サイト

幕末の時代、五人の長州藩士がイギリスへ密航留学して見聞を広め技術を学び、様々な方面で日本の近代化に貢献する人物となった、史実を元に作られた歴史映画。

このタイトル、伊藤博文井上馨井上勝遠藤謹助山尾庸三の「長州五傑」と呼ばれる主人公達を、現代風にアレンジした呼称と受け止められがちだが、実際にロンドンには「Choshu Five」と刻まれた碑が存在し、そこから引用されたもの。

新撰組や坂本龍馬などがクローズアップされがちな幕末維新ものとしては、比較的マイナーな素材を採り上げている本作、狙いは非常に興味深いのだが、それが面白さとして有効に活かせているか、と問われると、少々難点も見当たる。

おそらくは、若者を中心とした一般層をターゲットにしていると思われる本作、それにしては、一般にはあまり知られていない史実を伝えるための作品とは思えない、不親切さが目立ちすぎている感が強い。

まず徹頭徹尾、誰が誰で何者か、という説明が基本的にないので、当初は誰がメインキャラなのかわからない上に、名前すらもよくわからないまま話だけが進んで行くのだ。これでは知識のない人は混乱し、そもそも観る気を奪われてしまうのではないだろうか。

それらの情報は、登場人物の台詞によって少しずつ明らかになっていくのだが、メインとなる長州藩士達の台詞が全て長州弁で話されているため、聞き取り辛く意味がわかりにくい場面が多々あり、わかりにくい構図を更にわかりにくくしている。

方言を使ってリアルさを出す事自体は構わないのだが、後半に登場する聾唖者の手話にいちいち字幕を入れる親切さはあるのだから、日本語においても言葉の選択や滑舌など、ダイアローグにもう少し気を使うべきではなかったか。

女郎が井上聞多に手鏡を渡す場面など、史実として伝えられている様々な出来事を匂わす小ネタが散在し、それを知っていると、いちいちニヤリとして楽しめるのだが、知らないとその場面の意味自体が全くわからなくなってしまう事態に陥ってしまうのは、独立作品として見た場合、ネタ投げっぱなしで回収しない散漫な印象を与えてしまい、あまり良くしたものとは言えないだろう。

そもそも何故この五人なのか、という基本段階からしてわかり辛いし、例えば船上で、一人が船体から張り出した板にしゃがみ、もう一人が押さえている場面などは、全く説明がないため、知識がないと何をしているのかすらわからない(ウンコ中にも勉強している、という意味の場面なのだが)。これでは、興味を与える以前の問題ではないか。

それでも、メイン要素の一つであろう、"日本国、日本人、日本文化"と"西洋人、西洋文化"とのギャップを見せる、そちらの狙いは、それなりに上手く表現されており、見どころ足り得ている。

渡航を相談する場面では、「この刀に懸けて云々〜」「いいから金払えよ」と、西洋人と日本人との価値観の差異を見せたり、イギリスの邸内で靴を脱いで正座して待っていたり、フンドシ一丁でうろうろしたりと、カルチャーギャップをクスリと笑える仕掛けで見せているあたりは面白い。

そうした展開によって、日本の外に出たからこそ、日本という国家の存在、日本人である自分が改めて見えてくる。その心情の流れは的確に見せられており、薩摩留学生と出会う場面でもそれを強調し、作品テーマを上手く伝えている。

井上聞多がメインで伊藤俊輔がサブ的な存在で展開する前半の構成は、まず冒頭で長州藩士によるテロ行為を見せ、観客にその正当性に対し疑問を抱かせつつ、渡航理由には公より個の目的が強かった事を、聞多と俊輔を巡る描写にて見せ、その後、渡航後に新聞記事を見た聞多に「日本国、日本人」発言をさせ、観客の共感を生む、そうした狙いはそれなりに果たされている。

俊輔が日本で女郎と話す場面と、イギリスで娼婦と話す場面。ともに変わらない階級格差と貧困の図式を国を違えて見せる事で、俊輔の変節を表現し、後の史実へ繋げる役割としている。こうしたギミックもいちいち考えられてはいる。

進行の都合上、後半には全く姿を見せなくなる聞多と俊輔、彼らが前半のメインとされたのは、五人の中では比較的知名度が高いため、作品世界に観客が入り込める助けとする意味もあったのだろうが、それにしては、先述の不親切さによって、効果としては今ひとつであった様にも感じる。

山尾庸三がメインとなる後半では、それまでの群像劇、歴史劇的な展開から一転し、人情ドラマ的なカラーが前に出る様になるが、そこに至るまでの段において、各人物のキャラクター立てが弱く、どうにも魅力を感じないため、俯瞰的な視点で鑑賞する事となり、感動するべきシーンでも、あまり感動し辛くなっている。

それでも、庸三がグラスゴーにて聾唖の労働者と出会い、後に日本初の聾唖学校を開設した史実を元に、恋愛要素を持たせたドラマとしてアレンジした内容は、フィクションとノンフィクションが程よくブレンドされたもので、それなりに面白く観ていられる作りにはされている。

特に、素手のケンカではボコボコにやられた庸三が、棒切れを手にした途端にバッタバッタと相手を薙ぎ倒す場面などは、極めてお約束的な展開でありながら、人物設定と舞台設定を活かし、淡々と展開していたドラマにも緩急を与える、いい見せ場となっていたのではないか。

ロンドンやルーマニアでロケを行い、当時のヨーロッパの街並をリアルに再現している映像は、邦画らしからぬ生々しさが感じられて良いのだが、公使館爆破シーンや、ロンドン入港シーンの特撮のチープさは、実景のリアルさとのギャップが大きく、視覚的な違和感を与えマイナス点だろう。

本作がきっかけで長州五傑に興味を持った人が増えるのなら、それだけでも製作された意味はあったのだろうが、狙いは面白いが、一般向けとマニア向け、どちらにも焦点を絞りきれなかった感が強い、惜しい出来に終わっている。出演者のファンや歴史好きなら、観て損する事は無いだろうが、あまり過剰な期待をせずに臨んだ方がいいだろう。



tsubuanco at 17:58│Comments(0)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 長州ファイブ  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年01月09日 21:10
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