2007年03月08日

龍が如く 劇場版 70点(100点満点中)

おフロ場と寝室よ、特別のね。
公式サイト

セガの任侠ゲーム『龍が如く』を、昨年Vシネで製作されたゲームの前日譚『龍が如く 序章』に続き、極道Vシネを大得意とする三池崇史監督により実写映画化

ストーリーの大筋は、母親を捜す少女を守る主人公が、消えた100億円を巡る抗争に巻き込まれていく、ゲーム1作目の内容を一応なぞってはいるが、本作、原作ゲーム自体が、メインストーリーよりも作品世界である神室町をウロついて色々やってみる楽しさが受けていたのを踏まえ、映画オリジナルキャラクターも含め、主人公だけでなく、様々な人物の視点が交錯し、一夜の物語を形成する、群像劇の体裁がとられている。

主人公視点のみによる一本道ストーリーとしない事で、舞台の多様性を表現し、それぞれのドラマが適度に干渉し合い、ラストのカタストロフへなだれ込む、一筋縄では行かないドラマの組立は良くしたもの。

映画オリジナルである、塩谷瞬とサエコが演じる若者バカップルの『俺たちに明日はない』を彷彿とさせる顛末は、一般人視点の象徴としての縦糸の一つとなり、特殊な舞台に普通人が紛れ込むとどんな事になってしまうか、を見せる狙いだろう。

細かいストーリーやキャラクター設定は、ゲームを知らないと本当に詳しいところまではわからないため、ゲームを知るものにとっては不親切な作りと感じるのだが、主人公が何者なのか、最初は全く説明がなく、少しずつわかってくる構成からも、説明が無い事が意図的な狙いであるとわかる。

視点が転々と移行し、普通なら回想場面などで過去を見せたりするはずの場面でも、全く見せない。そうして、あれこれ想像させる余地が与えられる事で、逆にわからない事が魅力となっているのだ。

メインストーリーだけでも長い物語を、更に一本道ではなく寄り道をしまくりながら進めているため、むしろ本来メインとなっている100億円や母親探しはあまり重要ではなく、その場その場で展開されるミニエピソードの積み重ねこそが、実質的なメイン要素なのだろうとさえ思わされる。

そうして広がっていく作品世界が、殺伐さと脱力ギャグを交互に突きつける、三池崇史お得意の作劇によって、更に不可思議な空気に包まれていく。ゲームはあくまでもベースに、三池色が前面に押し出された作品になる事は、三池崇史が監督になった時点でわかり切っていた事で、それに合わせた鑑賞法、楽しみ方をするべきだろう。

主人公・桐生を演じる北村一輝の、かつてバイオレンスVシネではよく見せていた生身のアクションは充分に堪能出来、身長的に少し物足りないながらも、桐生役をカッコ良く演じている。

メインライバルとして主人公以上に存在感を発している真島のキャラクター描写が、本作で一番のオモシロどころとなっていると言える。この、どこまで本気なのか全くわからない狂気の演技を、岸谷五朗がノリノリで演じており、普通のドラマならば、下手な関西弁は違和感の元となり、リアリティを損ねて感情移入を阻んでしまうのだが、今回の場合に限り、真島のキャラクターと絶妙にマッチしたインチキ臭さが強調されて、やけに楽しいものとなっている。これはおそらくは計算したものではないと思うが、結果面白いのでオッケーだ。

他にも松重豊、哀川翔、遠藤憲一など、濃いキャラクターの男達が、それぞれの存在感を発揮して、濃い世界を作り出す事で、母親を捜す少女・遥の存在が、ハキダメのツルとしてひときわ輝いて、更に世界を広げる効果もあげている。

この遥を演じる子役、夏緒だが、演技や台詞回しに多少の不安はつきまとうものの、"汚れを知らない少女"を文字通り体現したビジュアルと存在感は抜群。主人公でなくとも、守らずにはいられない気持ちになる、充分な説得力を醸し出しており素晴らしい。

この子がゲーム通りに「ソープって何?」などと台詞を発する事で、その魅力は何倍にも増幅される。「Mって何?」などと聞かれた日にはもう大変だ。

本作、原作ものにはあまり力を入れない事が多い三池崇史にしては珍しく、単なる実写化企画に留まらない、ゲームを知らなくとも楽しめる、独自の作品としての魅力を生み出した良作となっている。ゲームファン、三池ファン、出演者のファンなら必見。興味のある人はどうぞ。



tsubuanco at 16:46│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画 

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1. 龍が如く 劇場版  [ ネタバレ映画館 ]   2007年03月06日 19:05
合言葉は「キム・ギドク」。「弓」と答えていたら殺される?
2. 『龍が如く 劇場版』  [ 唐揚げ大好き! ]   2007年03月10日 07:44
? 『龍が如く 劇場版』 ? この街では、憎しみも愛。 ? 原作のゲームはやったことがありません。 でも仁侠映画ですからね・・・、と高をくくっていたのですが、それは甘い考えでした。 ゲームを映画化というよりはゲームから派生したもう一つのメディアって感じですか
3. 龍が如く 劇場版(映画館)  [ ひるめし。 ]   2007年03月11日 15:27
この街では、憎しみも愛。
4. #41.龍が如く 劇場版  [ レザボアCATs ]   2007年03月14日 02:43
毎月1本づつUPしている“今月の三池さん”。今月は劇場公開作品で嬉しい。折りしもギドクフェアを開催していた矢先、まさか合言葉で“キム・ギドク”が使われると来たら、もう、運命を感じるしかない。kossyさんから「受取人不明を見たなら、『龍が如く』も是非・・・」なん...
5. 【2007-49】龍が如く 劇場版  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年04月09日 20:41
3 ミレニアムタワーに起こる 愛憎のワンナイトストーリー この街では、憎しみも愛。
6. 映画「龍が如く 劇場版」  [ 映画専用トラックバックセンター ]   2007年05月09日 10:00
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