2007年02月26日

おばちゃんチップス 45点(100点満点中)

汚物は消毒だー!
公式サイト

大阪経済大学の学生が立てた地域おこし企画に、ホリプロとグリコが協力。グリコからはタイトル通りのスナック菓子が実際に発売され、ホリプロはそれを題材にした映画を製作。

そんな本作の主演は、ホリプロが誇る二時間ドラマの帝王・船越栄一郎。他にも宮地真緒などホリプロタレントが出演しているが、どちらかと言えば吉本芸人の方が、質量共に存在を誇示している印象が強い。

吉本新喜劇には欠かせないベテラン女優、浅香あき恵と中山美保による、大阪のおばちゃんの日常会話から物語が始まり、その後ろで、一から十までを数えるのにメロディーをつける、大阪弁のイントネーションを主人公が復唱していると、先程の二人がそこに介入し、「飴ちゃん」をくれる。そして駅舎を出る主人公の画が引いていくと、駅舎の屋根から通天閣が顔を出す。と、あらゆる情報を詰め込み、どういう映画なのかを一瞬でわからせる。ファーストシーンの構成、演出、画作りは上手い。

大阪の下町を舞台とし、そこに非関西人の船越を異物として飛び込ませ、彼視点によるカルチャーギャップを見せる、そんな狙いの本作において、主人公が方言のイントネーションの研究、特に関西弁に注目している設定とする事で、偏見ではなく純粋な興味としての視点で描き、大阪人の"変さ"を強調しながらも、ネガティブイメージとしては見せない。そして当初は"異物"だった主人公をも、飲み込んで一体化させてしまう大阪の懐の広さをも表現すると、設定、脚本はよく考えられている。

研究者である主人公が講釈する、標準語と大阪弁の違いがまた興味深い。昔からある言葉だけでなく、「ラムズフェルド」などの新しく聞く人名なども、その語感パターンによって、地域ごとに共通したイントネーションが自然と決定されるのだ、と、わかりやすく例を挙げて講義され、劇中人物だけでなく観客もなるほどと納得させられる。単に表層的おかしさのためのギミックとしての関西弁ではなく、題材として扱う意味をしっかり与えるこだわりが感じられる。

その大阪弁を有用に活かすべく、地元人の役は関西出身者でキャストを固め、自然な空気を出そうとしているはずが、そこに一人だけ、関西出身でない渡辺いっけいが何故か関西人役を演じ、その下手な関西弁が更に違和感を増し、観客をシラケさせる要因となっているのが残念だ。大芸大から新感線へ参加した彼だが、愛知出身で関西人ではない。ホリプロも吉本もエイベックスも関係ない、どういった意図のキャスティング、キャラ設定なのか、大いに疑問だ。

彼を使うなら、伊武雅刀が演じた教授の様に、関西人ではない、標準語で喋る役を与えた方が、自然な彼の持ち味が出せたはずであり勿体ない。

一方、生粋の大阪人である徳井優は、相変わらず独特の演技スタイルと台詞回しで存在感を発揮。『桜2号』などでも色を添えていたのと同様、ダメだけれどダメじゃない、大阪のしょぼいオヤジを好演しており楽しい。

主人公の相手役となる、ヒロインを演じるのはday after tomorrowのヴォーカルmisono。今では"倖田來未のデブな妹"と言った方が通りがいい彼女、(体重的な)全盛期に比べると随分減量してはいるが、それでもまだまだ"ぽっちゃり系"と呼ぶにも苦しいレベル。

が、ディフォルメしつつもリアルな描写、表現を目指している本作において、その風体は程よくリアルに"ワケあり女"っぽくは見え、確かに太ってはいるが、基本的には整っている顔立ちや言動からは、姉の「エロカッコいい」なる胡散臭いコピーとは違い、実際に「デブカワイイ」と感じられる愛嬌があり、決してミスキャストではなく、作品カラーとはマッチしている。

ダメ男にウンザリしている頃に、"安心出来る"存在の主人公と出会い、興味を持って観察しているうちに、人間性の優しさをドンドン発見し、本当に惹かれていく、ありがちな恋の始まりを丁寧に描いた恋愛ドラマ描写は、中盤の進行を支えるひとつの流れとして良くしたもの。

それを受ける主人公側も、本妻との関係にウンザリしつつ、積極的な気のいい姉ちゃんをドンドン意識し始める、相手役が"スタイルのいい美人"ではない事も手伝って、説得力のある展開が楽しい。

主人公、妻、ヒロインの三角関係が、ベタながらもポイントを押さえて展開し、三人が同一現場で顔を合わせる事はほとんどなく、その少ない機会を核として、主人公がその場を離れ主人公不在で二人の女が揉める様子を直接見せずに声だけが聞こえるなど、見せ方の選択が的確。

主人公、ヒロイン、大家など、それぞれのメイン人物が個々の問題を大量に抱え、それらがゴチャゴチャに入り交じって物語が進み、タイトルの「おばちゃんチップス」の登場で、全てがある程度円満解決する。構成要素が多いながらも散漫にならず、しっかり収束する物語構成は安心出来るもの。

タイトルの印象では「おばちゃん」を、もっと強調した作品と思いがちだがそうでもなく、大家を演じる京唄子以外は物語の核となるわけでもなく、主人公が受けるカルチャーギャップをわかりやすく伝えるための背景的記号として存在。過剰すぎない見せ方はバランスの良さを感じる。

地味なキャスト、地味な題材だが、バラ撒かれている様々な楽しみを様々に受け止め楽しめる一品。少なくとも観て損したと思う事はまずないだろう。興味のある人はどうぞ。


tsubuanco at 11:55│Comments(0)TrackBack(4)clip!映画 

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1. 伊武雅刀公式サイト  [ Digital Life Everyday :デジタルライフ・エブリデイ   HOME ]   2007年03月11日 20:17
今日はつらつらいろんなことを書いたなぁ。伊武雅刀氏に関して書いて、これまたたまたま公式サイトを除くと。ゲッ!という感じのコンテンツになっている。特にhttp://www.ibu-masatoh.com/anime/anime.htmlは面白い。。。やるな・・・おぬし。。。
2. 【2007-37】おばちゃんチップス Dialogue in KANSAIBEN  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年03月21日 17:06
3 ずうずうしくてやかましくてお節介・・・ でも、”おばちゃん人情”が沁み込んで、 心の温度がぬくうなる。 おばちゃん遺伝子が、 日本をど〜んと元気にする!
3. [ おばちゃんチップス ]おばちゃんに敵になし!  [ アロハ坊主の日がな一日 ]   2007年03月23日 01:07
[ おばちゃんチップス ]を渋谷で鑑賞。 田中誠監督、最新作。前作のホラー映画[ 雨の町 ]とはまたうって変わって、本作はコメディ映画。 上映まで時間があったのでパンフレットの監督田中誠氏のプロフィール、インタビューを読んでいた。監督の顔は、おばちゃんに負けず...
4. 真・映画日記(1)『おばちゃんチップス』  [ CHEAP THRILL ]   2007年04月09日 00:35
1月28日(日) 普段マンガ喫茶に泊まる時は座敷みたいになっている部屋かリクライニング・シートの席をとるが、 前の日の深夜に入ったマンガ喫茶でとれたのはリクライニングしない椅子の席だった。 椅子に座ってすぐに寝るが、 あまりにも体勢がキツく午前3時頃に目...

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