2007年03月11日

ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い 70点(100点満点中)07-070

7人そろって今見せる大魔術
公式サイト

昨年の『のび太の恐竜2006』に続き、映画第5作『魔界大冒険』をリメイク。「新」とタイトルにあるのだから、旧作と違っているのは当たり前で、「違うからダメ」という思考回路の持ち主は、そもそも観るのが間違いだ。旧作をリアルタイムで観ていた様な年齢の大人なら、自分の行動結果に責任を持つべし。

リメイクは、旧作と変わっているからこそ作る意味がある。変えているところに変えるだけの理由があるなら、それでいいのだ。

本作、基本的には、原作、旧作映画において引っかかりとなる部分に、ある程度の説得力、必然性、整合性を持たせるための改変が多く見られ、一つの独立した物語としての完結性は高くなっている。後出しだから当然とは言え、色々と不備が指摘されている『魔界〜』をリメイクするにあたって、この方向性は一つの正解だろう。

それは今回、脚本を担当した真保裕一による、ミステリー作家ならではの仕事であり、もともとシンエイ動画で藤子アニメの演出を務めていた(ドラの演出はしてないが)氏だけに、単なる話題性だけでない、意味のある起用と言える。("ズッコケ"の演出が、ハットリくんの"ズコー"っぽかったのは、この事を意識した意図的なものか?)

まず、原作、旧作にて一番の反則展開である、ドラミ登場の唐突さに、序盤にドラえもんの体の異変とそれを気にするドラミ、という場面を新規で追加する事で、終盤の謎解き展開のタイミングでドラミが登場し、救いをもたらす必然性を持たせている。これだけでも、リメイクした価値は充分にあると言って良い。

そしてもうひとつの大きな改変は、原作、旧作では出番は少ないながらも印象的で重要な存在であった、魔物・メジューサの設定、ドラマの追加である。

これもまた、終盤に唐突に登場しドラとのび太を窮地に追い込む"いきなり感"をなくし、宿敵、強敵としてのキャラクター性を追加し存在感を高めている。と同時に、物語に登場するそもそもの存在意義をも与える事で、ストーリーに奥行きをもたらし、今回のゲストキャラ・満月父娘の存在にも、より確立したキャラクター性と存在意義を持たせる。物語そのものを左右する、重要な改変となっている。

ただこれに関しては、いかにも魔物然としておどろおどろしい(それでいて藤子的なユーモラスさも兼ね備えていた)ものであった、原作、旧作のメジューサのデザインが、美しさを基調としたシルエット、色調に変えられている事と、満月家の過去の悲劇が早い段階に語られた時点で、その顛末が簡単に想像がついてしまう仕掛けで、"よくした改変"と手放しには言い難い。

だがそれでも、"新しい面白さ"を作り出そうとした意図は理解出来るもので、決して「ダメ」ではないだろう。

満月博士が元の世界にも存在し、地球に謎の天体が迫っている危機に瀕している描写がファーストシーンとして見せられるが、これはもちろん、並行世界の近似性を表現するための新規追加要素である事はわかるが、それなら、終盤で一旦元の世界に戻った時などに、この"危機"がドラやのび太に伝わって、魔法世界へ戻る決断の一助とするなど、更に物語に絡める工夫が必要だったのでは、とも思う。(当初の脚本にはあって、尺の都合等でカットされたのかもしれないが)

今回の監督、寺本幸代が女性である事も、本作の大きな特徴となっており、脚本にはなかった、美代子としずかが"髪"の会話をする顛末に、それが特に色濃い。

この場面での二人の会話内容は、明らかに"女"ならではのそれであり、子供だろうが何歳だろうが、女は女である、と、荒唐無稽な子供向けマンガ映画ながら、リアルな生々しさが感じられる場面として異彩を放ち、あくまでも男性目線で創られている藤子ヒロインの範疇を超え、よりキャラクターが立たされている。

更に、藤子作品の"お姉さんキャラ"としては珍しくショートカットのデザインである事をも逆手に取った、うなずける追加設定、描写でもある。

そうしてリアルなキャラクター描写をする事で、美代子にまつわるドラマに、より"感動"を与える結果となっている。これには賛否あるだろうが、それは好みの問題でしかないため、評価の良し悪しとは関係ないだろう。

最初に翻訳コンニャクで古文書を読ませておき、謎が残っているのは読めないからではなく、半分を奪われたからだと変更する事で、古文書と翻訳コンニャクに関するツッコミどころをかわす、美代子がネコに変えられる顛末も含め、この辺りの改変は評価していいだろう。(でも、最後はジャイアンに決めてほしかったなあ、と素直に思う)

本作、変えられた部分も変えられなかった部分も、全ての事象、キャラクターが、それぞれ意味のある形で絡み合い、全体として物語の流れを形作る役割を果たしており、ムダな要素がひとつもない、最初にも述べたが物語構成の完成度はかなり高い。

並行世界と時間軸のパラドックスには相変わらずフォローがないが、そこまでを綿密に考証してしまうと物語が成立しなくなるため、これは仕方ないだろう。

ただ、藤子漫画の特徴のひとつである、SF、科学考証のウンチクを子供にもわかりやすく伝え、それによって世界観に説得力を持たせている部分、『魔界〜』で言えば、出木杉が「魔法と科学の根はひとつだ」と、のび太に説明する場面などが省略されているのは、藤子ファンとしては残念なところだ。(この省略、満月博士が満月牧師に変えられている設定変更と、無縁ではない様に感じられる)

ドラが冠り続けている魔法帽子のネタ振りとオチが一段階削られているのも、多少の物足りなさを感じる。(子供達は笑ってたから別にいいが)

一方、バイバインで増え続けている栗饅頭が宇宙ステーションで観測されていたり、ライオン仮面のボトルキャップフィギュアやエスパー魔美のパロディ番組など、比較的わかりやすい藤子小ネタが主として前半に多く見られる遊びは素直に楽しく、また、前作『恐竜2006』に登場した、タマゴから出る恐竜の玩具がのび太の机に置かれているなど、"映画ドラ"が連続した世界である事を暗に示す配慮もありがたい。

前作『恐竜2006』に続き、今回もいわゆる"タレント声優"がいくつか配されているが、相武紗季が演じた美代子の声には、声質自体の違和感は少なかったが、演技的にはやはり問題があり、このキャスティングは失敗だろう。(と言っても、旧作で美代子を演じた小山茉美も、大人モモやグラディス艦長など、"女性声"の演技はあまり上手いとは言えないのだが)

だが、言われなければ気づかない、久本雅美や次課長河本の演技には大きな問題はなく、これまでの洋画吹替などの例を見ても、やはりお笑い系は発声ができているので、声優仕事と相性がいい(場合が多い)様だ。(まあ、バラエティでの彼女らは面白いとは思えないが)

少し"泣かせ"がクドいと感じられるきらいはあるが、改めてリメイクしただけの意味は充分にある、家族で楽しめる娯楽作である事は間違いない。これで『魔界〜』を初めて観た子供が原作漫画にも興味を持って、オリジンのテイストを楽しんでもらえたなら、藤子ファンとしてこんなに嬉しい事はない。

やわらかい頭の持ち主にはオススメ。親戚の子供でも連れてどうぞ。


余談:
未来の科学で作られたドラえもんの存在が魔法世界で受け入れられていると言う事は、本来の魔法世界には、未来の魔法で作られたドラえもんが存在した、という事か。どんなのだ。




tsubuanco at 17:55│Comments(8)TrackBack(5)clip!映画 | 漫画

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1. 映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い  [ ネタバレ映画館 ]   2007年03月13日 01:08
満月牧師がジャイアンの顔とそっくりだった。ひょっとして親子か?という予想外な展開をも期待しました・・・
2. 感想感想感想感想…すごくヲタクっぽいですΣ(゚Д゚)  [ Once Upon A Dream ]   2007年03月13日 15:41
感想(・∀・)ネタバレあるんで見るかたは見ないほうがいいですよー ↓   ↓   ↓ 星三つと半くらいですかねー評価的にいうとっ まあ、どうせなら声は芸能人使わなくてもいいんじゃないのっていうね 相武紗季がびみょーーーーーーーーなんですよ!これまた。マチャ...
3. 「ドラえもん のび太の新魔界大冒険」レビュー  [ 映画レビュー トラックバックセンター ]   2007年03月14日 04:08
映画「ドラえもん のび太の新魔界大冒険~7人の魔法使い~」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声優):ドラえもん(水田わさび)、のび太(大原めぐみ)、しずか(かかずゆみ)、ジャイアン(木村昴)、スネ夫(関智一)、ドラミ(千秋)....
春は怒涛の映画新作ラッシュ 毎週舞台挨拶へ行く予定(爆)3月2本目の舞台挨拶は『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』ドラえもん((ミ゜o゜ミ))を20年ぶりに劇場で見てしまった(爆)テレビでも見ないので、現声優陣になった時以来久しぶりだし....
5. 相武紗季 アニメ映画「ドラえもん のび太と新魔界大冒険~7人の魔法使い~」  [ 相武紗季(あいぶさき)の情報ブログ!! ]   2007年05月09日 20:23
相武紗季ちゃんがアニメ映画「ドラえもん のび太と新魔界大冒険~7人の魔法使い~」の美夜子役の声の担当をします♪相武紗季ちゃんは2006年のドラえもんに相武紗季役として出ているんですよね!!あのアニメに自分の役として出る人なんて滅多にいないですよ!!今回はヒロイン...

この記事へのコメント

2. Posted by クルルギ   2007年03月14日 14:59
新ドラの声優は馴れたので特に問題ないのですが旧ドラをリメイクするやり方がどうにも気にくわない。

新しいシナリオで挑戦すればいいのに。

いわゆる懐古厨なわけですが、どうすればいいのかな。
3. Posted by つぶあんこ   2007年03月14日 15:01
無視して旧作を楽しんでいればいいのでは。
4. Posted by Qta   2007年03月16日 16:55
5 やっと観れた
最高、100点、ドラえもん世代に乾杯
かつてこれほど楽しかったリメイクは無かった(友達みんなに長文レビューをメールしまくってるのに無反応なのが気に食わないが!!)
リメイクの意味が明確で素晴らしい
コンニャクおやつに帰らずの原〜な下りが無いのが旧作ファンには長編ドラの面白いトコを削ってるように見えるようだが
削った分ドラマが追加されエンディングの美代子のセリフに生きている辺りをもっと観てほしい。
エンディングから旧作シーンをはずさなかったた為にちょっと間延びした感もあるが、少年に戻る彼らを描いて「またね!」よりかは作品としてのエンディングであると良く受け取れた
あぁ、長くなるので
ライオン仮面の横にはオシシ仮面もありうれし過ぎ。魔美とコンポコも、あれ、、コンポ、チン、、え、
なんつってた?あれ??ちがうよね?
5. Posted by more   2007年03月17日 00:59
5  見てきました。よかったよ。
リメイクで新要素の追加も無理なく感じられたし、なによりも
映画館で子供たちの歓声と一緒に見られたのがよいです。
 息を呑む瞬間とか、まるでライブのような別な楽しみがありました。人の声が気にならない
なごやかな映画館でしたよ。
個人的に残念なことは
1、出来杉くんの魔法の説明がないこと。
2、スネオがジャイアンを「おまえ」って呼ぶシーンがあったこと。すごく不自然に感じた。
くらいですかね。
あとは、ちょっとスカートめくりに過剰に反応しすぎでは?って思ったくらいですかね。
とにかく映画館で子供たちの声といっしょに純粋に楽しく見ましょう。
6. Posted by Qta   2007年03月17日 02:36
おぉ、それそれ
重大なエピソードを書き忘れてたので一言。
こちらの劇場も子供に囲まれての観賞だったんですが
感動したのが、美代子に「大丈夫?」って問いかけられ、ちっちゃい女の子とか始まるまで騒いでたクソガキが数人「うん」「大丈夫ぅ〜」とかいって答えてんの!ラスト近辺では立って一緒になんかと戦ってるしww
子供とはいえ素直に感情移入してるとこなんか、もう10数年みてなかったし、他のアニメ観に行っても無かった子供の反応がすごいうれしかった!
やはりかつての長編ドラえもんがいかに面白かったかっ!ていうのと、国民的アニメをキャスト一新してなおここまで面白くリメイクできるってトコにスタッフのマニア性がよくかわったw
以上、長文失礼m(_ _)m
7. Posted by つぶあんこ   2007年03月19日 17:07
・Qta さま
やっぱり子供映画は子供の声を聞くのも楽しみのひとつですよねえ。
あまりウルサいと殴りたくなりますが(親を)。

・more さま
確かに「お前」呼ばわりは気になりましたね。「お前とは何だ」と殴っていれば成立したんですけど。
11. Posted by やま   2008年03月26日 02:02
TV放映をみました。
私もリメイクで最も関心したのはドラえもんの腹痛でした。あれはドラミをうまくリードするアイデアだったなとほんと思います。
細かい設定変更はどれも納得できるし、最初はネズミに化かされる・時折みせるドラえもんのエロ顔などはお気に入りです。

ただ、あべこべクリームをぬった絨毯で魔界星を突っ切ると、凍りつくのでは?と、この年になっても思ってしまいました。
12. Posted by j   2012年04月14日 16:42
旧作、原作で描かれたドラミの突然の登場場面をうまい具合に描いたと思います。
おしまい。という演出もドラミの不自然な登場を曖昧に感じさせるものだとも思いました。

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