2007年03月17日

ハッピーフィート 50点(100点満点中)

う うたを やめろ! うたを やめるんだ!
公式サイト

歌が全ての価値観である、南極に棲息する皇帝ペンギンの一群、そこで生まれた主人公は、卵の時に起きた事故が原因なのか、超絶に音痴だが替わりにダンスが異様に上手な変わりもの。群れの調和を大切にする大人達から排除された主人公の、冒険の旅が始まる…というストーリー。

まず、映像的な面で見れば、フルCGで描かれながらも実物の様にリアルかつ愛らしいペンギンの造形、動きは、それだけでたまらないものだし、南極の氷原を埋め尽くすペンギンの群れのロングショット、それらがワラワラと動きまくる圧倒的な迫力、キャラクターの周囲を回り込む事で、背景の奥行き、広がりを更に強調する移動ショット、ロングは俯瞰で、寄りはローアングルで、と、最も効果的な"迫力"を表すべく選択されたカメラワーク、など、単調になりがちな舞台、被写体を、可能な限り飽きさせない様、工夫を凝らして見せ続けられる、スケールが大きな映像は驚嘆する。

ペンギンの群れが水中で縦横無尽に泳ぐ場面などは、その軌道と気泡の軌跡が、明らかに航空機を意識した"飛行"の擬似表現であり、板野サーカスには及ばないものの、視点がグルグルと移動する一連の映像は、まさに"空中戦"の迫力を醸し出しており見事。

アザラシに追われる主人公の顛末なども、主人公を等身大として捉えて遠近感を強調した映像によって、まるで巨大怪獣に追われるている様なドキドキハラハラな追っかけっこが圧倒的に展開し、退屈なドラマに睡魔を増幅されていた観客も、ハッキリと目を覚まして見入ってしまうだけのものに仕上がっている。

映像とともに、重要な楽しみどころとなるのが"歌"の場面だろう。イライジャ・ウッド、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ブリタニー・マーフィー、 ヒューゴ・ウィービング、ロビン・ウィリアムス、ミリアム・マーゴリーズ、レスリー・ニールセンと、豪華絢爛な"声優陣"によって聴かされる歌曲の数々は、洋楽好きなら納得の行くメジャーナンバーが程よくチョイスされており、マニアックさはないものの充分に楽しめるだろう。『ブギーワンダーランド』や、予告でも使われている『マイウェイ』など、洋楽に疎い日本人にも知られている楽曲もいくつかあり、その点も心配無用だ。

その様に、楽しめる部分は確かにあるのだが、一方で問題点も多く、手放しで褒められたものではないのが実情。

重要ファクターである、タップダンス様の主人公のステップだが、足捌きと足音がシンクロしておらず、そんな状態で足元をアップで見せられても困る。本作で見せる"動き"の中では、ここが最も大切なはずながら、この有様はいただけない。

歌が価値基準である皇帝ペンギン界において、ダンスをするなどけしからん、という設定を用意しておきながら、ファーストシーンの段階で既に皇帝ペンギン達は"歌って踊って"いるのだ。これはどういう事か。

更に、主人公の事を"ヒップホッパー"と揶揄して排除する展開ながら、最初の授業の場面で、別のペンギンがヒップホップのリズムでステップを踏みながらラップをし、それが教師に褒められる、というやりとりがあり、もはや何が良くて何がダメなのやら全くわからない

この様に、最初の段階から、世界設定、キャラクター設定が徹底されておらずむしろ破綻しており、そのため観客は世界もキャラクターの心情も充分には受容出来ず、物語をあまり楽しむ事が出来ない結果となる。

「エイリアン」など、序盤でギャグの様に出された要素が、実は最後まで重要なファクターとして生きてきたり、環境問題をネタ的に見せていると思わせつつ、これまた最終的には大切なテーマとして結実させたりと、それなりに考えられていると感じられる部分もあり、また、終盤の意外な展開には確かに驚かされ、最後は気持ちよくハッピーエンドで終わってくれるのだが、そこに至るまでの長い長いドラマは数分の予告編で見られる大筋から特に変わりはないもので、正直退屈でつまらない。

設定は破綻、ストーリーは単調と、こんな大予算の大作に、こんな程度の脚本しか用意出来なかったのか、と甚だ疑問に感じる。

そんな中で、楽しみどころである映像と歌を味わうには、何より設備の整った大劇場での鑑賞が最適である事は言うまでもない。興味のある人は、ストーリーには全く期待せずにどうぞ。

当然ながら吹替えではなく字幕版での鑑賞が必須。ストーリーはどうでも良く、映像と歌を楽しむだけの作品なので、字幕の読めない子供であっても字幕版の方がいいかと。



tsubuanco at 13:44│Comments(6)TrackBack(4)clip!映画 

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期待値: 74%  第79回アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作品。 声の出演:イライジャ・ウッド,ブ
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この記事へのコメント

1. Posted by Qta   2007年03月16日 04:39
3 面白かった!と素直に喜べないが僕は大好きな作品だった
もっと極端に内容の薄い脚本で歌唱パートやCGだけに酔いしれれる作品ならなおよかった…
まぁあの終盤の展開がなかったらテーマが薄すぎて駄目だ!という人もいたが
なんてーかほんともう少しお話に見所を見出したかった…残念

でも好きだ!
アミーゴスのイチイチ細かい演出に身震いしたw
僕はGライダー並みに楽しめた(素直に言えないから書いてみた…)
2. Posted by つぶあんこ   2007年03月16日 10:29
主人公の背中からチラチラとアンテナが見え隠れしているあたりは「志村ー後ろー」状態で個人的に爆笑でした。
面白いところも多いんですけどねえ。やっぱちょっと長過ぎるでしょうか。
3. Posted by 龍崎   2007年03月25日 12:47
この映画、私も見てきました。
ペンギンは確かに可愛いんですが、足の短いペンギンにタップは無謀だと思いました。
足の動きが見えにくくって、「すごい」とはとても思えなかったんです。

それから、「歌って踊る」がよくてどうしてタップがダメなのか、ですが。
たぶんまずは「歌」が先にありきなんでしょう。
歌と言う表現の一環として体を動かすのはOKでも全く歌わずただ踊るだけ…と言うか足先を動かすだけ、は認められないと言う事ではないでしょうか。

でも、だからこそあそこまで大騒ぎして否定しておきながらあっさり受け入れられる点がちょっと納得いきません。
と言うか、受け入れるだけの理由がちゃんと提示されていないのでは納得のしようがありません。

私もこの作品、あまり高い評価は与えられませんね。
いっそ、最初の歌って踊って、のほのぼの話で最後まで行ってくれた方がよかったですね。
4. Posted by つぶあんこ   2007年03月27日 17:21
一番大事な設定を曖昧にされたら楽しめませんよね。
5. Posted by バイターA   2007年03月30日 02:43
いつも鋭い洞察力に感心させられています。

うちの映画館では吹き替え版でも歌唱部分は全て字幕で本物の声(英語)なので、たぶんどこでも歌は本物が聴けるんだと思いますよ。

まぁ、そうなると字幕だらけで子供にはちょい不親切かなぁ〜と思いますが…。
6. Posted by つぶあんこ   2007年03月30日 19:02
ですか。この映画の場合、吹替えは最初から選択肢に入ってなかったもので。

でもセリフと歌で声が違ったらマズいんじゃないですかね。主人公が口パクで見栄を張るシーンなんかは特に。

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