2007年03月19日

超劇場版 ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります! 40点(100点満点中)

海底基地は完全に粉砕した! 我々の勝利だ! 海も我々人間のものだ!
公式サイト

吉崎観音の同名ギャグ漫画を原作に、子供からマニアまで幅広く支持を受けるTVアニメ『ケロロ軍曹』の劇場版第二弾。

原作は、ガンダムを始めとするオタクネタを使ったパロディを多用した作品。70年代に江口寿史になどよってメジャー化され、ジャンルとして定着したこの種の"オタク漫画"だが、当初は単に"あのキャラクターが出てくる"といった一発ギャグ的なものに過ぎず、それだけでも喜ばれる程度の作り手、受け手側の認識しかなかったものが、80年代からのオタク層の隆盛とシンクロして、パロディのレベルも向上していき、遂にはパロディだけで作品を構成してしまう、久米田康治の様な作風まで生まれるなど、現状ではその方向性、用途は多岐に渡っている。

そんな中で、この『ケロロ軍曹』のパロディとしての立ち位置は、単に"出るだけ"の江口寿史と、"パロディだけ"の久米田康治、その両極のほぼ中間に位置するものと認識していいだろう。
オリジナルのキャラクターコメディと、小道具や背景などの一発ギャグ、キャラクターの言動に絡めたパロディの、それぞれのバランスの良さが特徴。

パロディは盗作の逆で、元ネタを知らない事には意味がなく、楽しめる度合いはそのネタの認知度と受け手個人の知識量に左右されるのだが、前述のバランスのよさ故に、ネタを知らずとも表層的な面白さは受容出来るし、知っていればいちいちニヤリと出来る。老若男女を問わずに受けている理由はそこにあるのだ。

と言っても、掲載誌を考えても、本来は到底子供向けではないはずなのだが、キャラクターの見た目の可愛さだけで子供向け扱いされてしまうのは、クレしんやぼのぼの辺りと同じジレンマか。メジャーになるのも一長一短だ。

さて今回の劇場版だが、映画用に作られたストーリーは、映画に相応しくスケールが大きい作品にすべき、との安易な考えで、通常のご町内ギャグ漫画としての範疇を大きく逸脱し、地球の存亡をかけた戦いと愛と青春の旅立ちのドラマが用意されている。

と言っても、やはりケロロ軍曹の面白さは、個性的なキャラクターが繰り広げるコメディと、深く浅く様々に点在するパロディ小ネタの数々の、この両輪があってこそであり、それを薄めるとすれば、それに変わるだけの別の面白さを用意しなければ、当然ながら面白くなくなってしまうのだ。

今回、パロディやギャグ、ドタバタを減らし、その代わりとばかりにメインストーリーとして見せられる、夏美の家族観と思い出を巡る物語が、あまりに疎かにすぎるのは問題だろう。伏線も謎解きも起承転結も何もない、ただコメディを停滞させる退屈なだけの進行は、見ていて少しも面白くない。

終盤の夏美救出作戦のアクションシーンはテンポよく飽きないが、その後の巨大化してあれこれしているあたりは、特に大した事もしていないのに無駄に冗長で、そこまでにメインキャラクターの心情が彫り込まれていないので、感動に結びつかない。映画用に話を長くした分、間延びした感が強くなるだけだ。

そのまま"いい話"で終わってしまうラストには、「あれ? これって何の映画だっけ?」と、思わず首を傾げてしまう事受け合いだ。オチが無いなど正気とは思えない。

もっとハチャメチャなドタバタで押し切って、最後にちょっとだけ感動させながらも、最後はやっぱりギャグで落とす、とでもした方が、子供も親もだらけずに楽しめるはずだし、それこそがケロロ軍曹の面白さのはずなのに。

作画的にはほぼ崩れず安定しており、アクションはしっかり動き、特に気になるところはない。子供向け興行ながらも、ヒロインキャラの下半身のボリュームとシルエットをやたらと強調する動きとアングルには、スタッフのこだわりを感じ好印象だ。

先述のストーリー偏重のせいか、パロディネタが少なく感じたのは本末転倒にも感じるが、それでも、気づいただけでも「海の王子さま」「時かけジャンプ」「イナズマキック」あたりのわかりやすい単発ネタから、中盤での、デパート内の業務通路とエレベーターの場面は『ゾンビ』を彷彿とさせたり、終盤アクションでの自転車疾走の顛末は、『スターウォーズ』のデススター攻撃シーンや『E.T』ネタと思われ、明らかに子供向けでない遊びが、少しは用意されているのには、多少は救われる。

メジャーアニメの映画では、もはや定番になってしまっている"タレント声優"だが、今回は元モーニング娘。の辻希美が出演。本人役を含めた声優経験がかなり豊富な彼女だけに、言われなければ全く気づかないレベルの上手さは、この種の企画としては大成功だろう。が、もはや彼女に客を動員出来るだけのネームバリューがあるとは思えないのだが。(個人的には好きだが)

同時上映、というよりオマケとして前座に流される『ちびケロ』は、3Dながら通常の2Dアニメの質感で見せられるフルCGアニメ。

線の多いロボ、メカのアクションや、背景動画を多用する映像には適している、『ゾイド』辺りから使われ始めた日本独自の手法だが、今回の様な、視点が目まぐるしく動き回る事が必須の作品には、この手法を選択して正解だろう。

が、内容的には完全に子供向け、というより幼児向けの、ストーリー性が希薄な、勢いとテンションだけで見せるドタバタに終始し、それは別段構わないが、それだけで通すには時間が長過ぎて、子供でも途中で飽きるのではないか。

もう少し短くまとめるか、逆にもっとネタを盛り込むかした方が、より楽しめるものとなっただろう。

オチの"色がから黄色に変わってしまう"過去の秘密ネタは、これは"ドラえもんの逆"を狙ったパロディだろう。エンディング映像では、Zガンダムとアッシマーが変形しながら飛んでいるのも見逃してはいけない。というか、そこら辺りしか楽しめるところがないのだが。

原作を読破しTVシリーズを欠かさず観ている様なファンなら必見だが、知らない人は観なくていいだろう。当然だが。レンタル待ちで充分か。



tsubuanco at 13:26│Comments(4)TrackBack(2)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【2007-38】超劇場版 ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年03月21日 17:26
3 『皆のもの! 夏美殿が、謎の侵略者にさらわれた。 ヤツラは何故か夏美殿を、プリンセスとして迎えるつもりだ。 この星は我々が侵略する予定! 一刻も早く夏美殿を助けだし、 ドサクサに紛れて地球(ペコポン)を侵略するでありまぁす!』 守れ! 地球の未来と ....
2. 超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!  [ 落とし穴には気をつけろ! ]   2007年03月21日 21:17
「超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!」を早速観てきましたよ ネタバレはなしです。 まずは「ちびケロ ケロボールの秘密!?」から感想をばガル兄のケロボールにちびケロ・ちびゼロ・ちびプルが誤操作で吸い込まれてしまう冒険談ですが、みんなカワイイっ...

この記事へのコメント

1. Posted by よゆぽん   2007年03月21日 17:12
>Zガンダムとアッシマーが変形しながら飛んでいる

あっ、見逃した・・・(ーー;)
2. Posted by つぶあんこ   2007年03月22日 17:51
そんじゃもっかい行きましょう。
オマケも貰える事ですし。
3. Posted by tomizou   2007年03月23日 20:01
つぎの日曜あたり、見に行ってくるであります!が、40点ってのがきになりますが、ケロロがかわいくギロ様がかっこよければそれでだけで良いですぅ(;τ;)

では、また見たらブログにでもアップします!ヾ(≧∇≦)ノ
4. Posted by つぶあんこ   2007年03月27日 17:20
もう観たかー?

まだっぽい?

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments