2007年03月14日

シルバー假面 70点(100点満点中)

超能力を使う春日兄妹の物語
公式サイト

円谷プロから独立したスタッフ達によって作られた、日本現代企画とコダイグループが71年に製作した特撮ヒーロー番組『シルバー仮面』を、当時のメインスタッフが再結集して35年ぶりにリメイク

当時のオリジナルスタッフとしては、原案:佐々木守、監督:実相寺昭雄、撮影:中堀正夫、そして美術デザイン:池谷仙克の面々が今回参加。企画段階で佐々木守が、作品完成直後に実相寺昭雄が、それぞれ急逝し、図らずも"遺作"となってしまった。ちなみに音楽は、旧作とは関係ないが円谷作品とは縁が深い冬木透が担当している。

旧作の時点で、当時の他の特撮ヒーロー番組とは一線を画する、地味でシュールな独特の作風が特徴的で、その独特さゆえに商業的な成功こそ治められなかったものの、現在でもなおマニア人気は高い作品なのだが、本作、その"地味でシュールな独特の作風"を現代に蘇らせた、どうにもカルトな"迷作"となっている。

もともと全3巻のVシネとして製作され、特別にひとつにまとめてスクリーンで上映した、という流れは05年製作の"裏番組リメイク"『ミラーマンREFLEX』と奇しくも同様。

作品の方向性を決定づける第一話の監督を務めたのは、旧作と同じく実相寺昭雄。35年前よりも更に混迷を極める"実相寺演出"が映像だけでなくストーリーにも反映されており、その影響は第二、三話にも強く現われている。

企画時点での仮題が『二十一世紀鉄仮面』だった旧作『シルバー仮面』、元ネタは当然、小栗虫太郎の探偵小説『二十世紀鉄仮面』だが、リメイクの本作は、その元ネタの持っていた要素を殊更にクローズアップし、企画の主軸としているのが、まず大きな旧作との相違点だろう。

具体的には、小栗の現役当時である大正時代を舞台とし、当時の探偵小説、空想科学小説から題材を様々に拝借、そして主人公のデザインを、旧作より一層に"鉄仮面"を意識したものとするなどで、リメイクというよりはむしろ"更なる原点回帰"の色を強く打ち出している。

森鴎外や平井太郎(江戸川乱歩)ら、実在の作家をメインキャラクターに据え、日本軍の大陸進出やゲルマン民族の選民思想など、当時の世相をバックグラウンドとして設定。そうして"リアル"な舞台を用意した上に、カリガリ博士鋼鉄のマリアなど当時リアルタイムの"SF"ネタや、"一寸法師"や見世物小屋といった当時の探偵小説の定番ネタを盛り込んで、"リアル"をぶち壊す、カオスの世界が構築されている。

旧作を彷彿させる要素はかなり控えめで、「シルバー!」と言って変身したり(これは本当はジャイアントの変身掛け声だが)、ドイツ人つながりで"ロケット"に少し触れたりと、本筋とは関わらない部分にとどめられており、新しい面白さを生み出す方向に、力が入れられている事がわかる。

そんな中、登場する敵怪人は、第一話がクモ男で第二話がコウモリ男と、何故か仮面ライダーのパターンを踏襲しているのは、意図したお遊びなのかどうか不明だが、この、『シルバー仮面』というより『アイアンキング』に登場しそうな雰囲気を備えている、池谷仙克によってデザインされた怪人には、35年前と変わらぬ"池谷節"を見る事ができ嬉しい。これらの怪人達とのアクションシーンが適当で短時間なのも、あるいは旧作を意識したものなのだろうか。

作品内世界として存在する"現実"と、作品内に登場する"舞台"が混迷して境界をなくしていく、晩年の実相寺が得意とするメタフィクション的カラーを、変わらず押し出した第一話。ヨーロッパを舞台に白人ばかりで進められるドラマながら、全員がインチキ外人的な日本語で会話し、あまりにシュールすぎる世界に呆然とする第二話。そして男が変身してマリアになるなど、これまた意図的に常道を外した展開に終始する第三話と、実相寺が意図したシュールな空気、それを受け入れて楽しめるコアな層にはタマラなく楽しい、普通の人は呆然とする他ない、極めて観る人を選ぶ作品である。

旧作ファン、実相寺、池谷ファンなら必見。そうではないが興味はある、という人は、覚悟して臨もう。とりあえずレンタルで。



tsubuanco at 17:48│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画 

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僕は実相寺昭雄が好きだ。ただ誤解をうけやすいのが、単に好きなのではなく、とくに、決められた体制の中でキラリと怪しく光る特出した個性と、実にコントラストの利いたわかりやすくヘンな画面構成と照明効果が好きだということだ。
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