2007年03月27日

ホリデイ 40点(100点満点中)

植木等氏のご冥福をお祈りいたします
公式サイト

『恋愛適齢期』(2003)の監督、脚本で知られる、ナンシー・マイヤーズ最新作。

それぞれ信じていた男に裏切られ傷心中の、イギリスとアメリカに住む二人の30代女性がインターネットを通じて出会い、気分転換にと2週間の自宅交換を行う事に。全く違った環境にて出会う様々な出来事と人間を通じ、二人の女性の成長と癒しを描いたドラマ。

主人公の一人、ハリウッドでトレイラー製作の仕事をし、巨額の収入で大豪邸に住んでいるが男には浮気されて別れる、"勝ち組だけど負け犬"な女性をキャメロン・ディアスが、イギリスの出版社で働くインテリだが、男には二股をかけられた上に本命の方と結婚される、"デキる女だが都合のいい女"になってしまっている、もう一人の主人公をケイト・ウィンスレットがそれぞれ演じている。

それぞれのメインとなるラブストーリー自体は、お約束的展開に満ちたベタなものに過ぎないながらも、アメリカとイギリス、二つの舞台に存在する事物、人物はそのままに、二人の主人公だけが入れ替わって、"異物"として異なる舞台へ飛び込み、そこで起こる様々なギャップを、ディテールからメインストーリーまで、あらゆる面で映画の"面白さ"の主軸とする、そうした構成によって少し変わった空気を生じさせ、作品の特徴としている。

だが、キャメロンサイドのイギリスでの展開は、キャメロンがあまり多くの人間と関わらず、ジュード・ロウ演じるケイトの兄との出会い、進展がほとんどを占めているため、豪勢な暮らしをしていた女性が、あまり大きくない家で犬と生活する、そのギャップがあまり見せられず、せいぜいが左側通行の狭い道路で自分で車を運転するのに悪戦苦闘する、といった場面くらいにしか設定の特異性が活かされていなかったのは、あまり上手いとは言えないだろう。

また、キャメロンの前に唐突に現われた、ケイトの兄を自称するジュード・ロウだが、風貌がケイトを裏切った男とよく似ており混同してしまう人もいるかもしれない。

この二人を混同してしまうと、この後に展開するキャメロンとジュードのラブラブドラマを、「本命とは婚約し、ケイトもとりあえずキープし、更にキャメロンにも手を出す、何なんだこのニヤケ男は」と、完全に間違った見方となってしまい、全く楽しめなくなるおそれがあるので注意が必要だ。

そんな勘違いさえしなければ、旅先でハイテンションながらもする事がなく、初日の段階で帰りたくなっっていたキャメロンが、いきなり現われたイケメンを前にしてテンションが最高潮にたかまり会ってすぐにセックスしてしまう、事象は現実離れした都合が良すぎる有り得ないことながらも、その上でのキャラクターの言動は、わかりやすくディフォルメされつつ、ありがちでリアルなものと、恋愛ものを楽しむために必要なバランスが上手く取られているストーリーを、自分の経験や願望と重ねて楽しむ事はできるだろう。

旅先での遊びのつもりが徐々に本気に…とか、携帯の着信履歴が女性名ばかりで呆れるが、その女性名とは実は…など、あまりにお約束過ぎて面白味に欠ける節もあり、特にストーリー的に凄いところは何もないのだが、逆に言えば安心して観ていられるという事でもあり、お気楽に観る作品としては、この程度でいいのだろうか。

トレイラー製作者という設定を活かし、実際のハリウッド映画予告編のナレーションでお馴染みの、声だけが世界的に有名な"予告編専属ナレーター"によるナレーションを要所要所に挿入する事で、セルフパロディ的なおかしさと同時に、キャメロンの"職業病"的な精神状態をも表して展開を説明するなどしている、小憎い仕掛けは楽しい。

一方の、ハリウッドを舞台としたケイト側のドラマにおいては、ハリウッドの大映画会社、ソニーピクチャーズ製作の本作、画面に登場するパソコンや電化製品がことごとくソニー製でやたらとロゴが強調されているのは最早お約束だが、それよりも、"古き良きハリウッド映画"をやたらとリスペクトし、現在のブクブクに膨れ上がって堕落したハリウッド映画業界の現状を嘆く、そんなキャラクターが何人も登場して物語を進めている、捨て身の自爆ギャグともとられがちなドラマが、一風変わっており面白い。

この、ハリウッド関連のネタ、ギミックが、ケイトの恋愛ドラマに関わる意味は実はそんなに大きくなく、これらが全て無くとも話を成立させる事は可能、というのが少しいただけないし、この映画を見に来るメインの客層であるカップルは、古い映画の事を言われてもよくわからないのではないか。とも思う。

それでも、ダメな自分から脱却したいと思いながらも出来なかったケイトが、現地で親しくなった老脚本家に勧められた名作映画のヒロイン達の影響で、強い自分に生まれ変わろうとする、という流れはそれなりに活きているか。

が、その老脚本家とのドラマがやたらと大きなウエイトを占めており、恋愛ドラマとして本来メインとなるはずのジャック・ブラックとのドラマが、あまりに拙速で心境変化を緻密に描いているヒマすらない、というのは問題だろう。

それに、レンタルビデオ店での二人のやりとりは、関係の進展を映画ネタに絡めた、それなりに面白い場面として機能しているが、自分だって女と二人で遊んでいながら、自分の彼女が他の男と歩いていたら怒る、というくだりもどうか。怒った理由がそれだけではないにせよ、だ。

また、二つのドラマが並行して進む意味がほとんどなく、せっかくの二重構造をドラマが面白くなる方向にあまり活かせておらず、一つの話だけなら飽きてしまうベタな話を、交互に少しずつ見せる事で興味を持続させる、程度の効果しかあがっていなかったのは根本的な問題か。

そのせいで、両方が一点に集まるラストシーンも、特に大きな感動もなく終わってしまうのだ。せっかくの設定を活かす工夫が、もっと欲しかったところ。

深く考えずにサラッと観る分には、まあ楽しめるのだろうが、結局そうした表層的な楽しみしか得られないため、いつまでも思い出に残る様な作品ではないだろう。出演者のファンなら観て損したとは思わないだろうが、あまり期待しない方がいいかもしれない。レンタルで充分か。



tsubuanco at 16:11│Comments(0)TrackBack(15)clip!映画 

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