2007年02月27日

ピンチクリフ・グランプリ 45点(100点満点中)

力いっぱい羽ばたいてー、今日のレースは戴きさー♪
公式サイト

1975年にノルウェーで公開された、モデルアニメーション映画。一人の家具職人が5年かけてコツコツ製作した本作、本国ノルウェーでは、いまだに破られない興行記録を打ち立てた伝説の大ヒット作らしいのだが、なぜ今になって日本で公開されるのかは謎。

とある町外れ"ピンチクリフ"のてっぺんで、自転車屋を営んで暮らしている初老の男、レオドルは、アヒルのソラン、ハリネズミのルドビクとともに、のんびりと趣味の発明をして暮らしていた。ある日、彼の元弟子だった男ルドルフが、レオドルの発明を盗んで自動車を作り、レースで優勝して大金を稼いでいる事を知り、自分はもっと速い車を作ってレースに出場しようとする、という物語。

一人で自宅で製作した作品が評判を呼び一般公開される、という現象は、近年ではCGの分野において時々見られるが、このレベルのモデルアニメーションを全て手作業で行うのは、想像を絶する大仕事であり、その成果は、いちいち感嘆させられる映像として結実している。

冒頭の説明場面、町の遠景から少しずつカメラが"ピンチクリフ"に近づいていく、この情景カットにおいても、よく見ると道路を車が移動しているのが小さく見えるなど、カメラの移動と同時に、被写体のいくつかも一コマ単位で動かされている。

コマ撮りでこうした"視点が移動する"映像を撮影するのには、気が遠くなる様な計算と手間が必要で、それが何ら違和感無く自然に見させられる完成度の高さには驚嘆する。

中盤に見せられる楽隊の演奏シーンもまた凄まじい。全ての演奏者が楽器を正しく演奏する動作を同時進行で行い、それだけでも大変なのに、更には流される音楽とバッチリシンクロしているのだ。

後半のレース場面における主観映像のスピード感、迫力も素晴らしい。車体にカメラが搭載されていると想定して、コースを爆走してどんどん他車を抜き去っていく様を、一コマずつ前進していくカメラの動きに合わせ、他車の動き、背景として見せられる群衆の動き、その他様々な"動き"のタイミングを計算してシンクロさせる。そのセンス、技術の高さがここに如実に現われている。

そうして、最初から最後まで、いちいち手の込んだリアルな動きと連動を見せる映像が連続し、それだけでも充分評価に値する事は間違いないのだが、それにしても、レースに至るまでのお話が、あまりにつまらなく退屈に過ぎるのはいただけない。これではせっかく努力して撮った映像も、流し見されたり寝られたりで報われないだろう。

子供向けだからこそ、もっと脚本を練り込み、観客の興味を持続させるだけの面白さをテンポよく見せていかないと楽しめないのだ。勿体ない事この上ない。

また、これはお国柄や民族性の問題なのだろうが、登場する人間、あるいは動物のキャラクター達が、全く可愛くなくむしろ不気味で気持ち悪いのだ。"キモカワイイ"という範疇すら超えている。

このビジュアルのせいで、観ていても全然楽しい気持ちにならず、例えば、その姿、動きを見ているだけで可愛さのあまりニヤけてしまう『こまねこ』とは全く正反対のマイナス効果としか、少なくとも日本ではならないだろう。

カーレースを題材としたキャラクターアニメと言えば一番に思い浮かぶ、『チキチキマシン猛レース』でブラック魔王を演じた大塚周夫が日本語吹替版に出演しているなど、吹替えキャストはかなり豪華なので、何を言ってるのか全然わからない字幕より、吹替で見る方が楽しみは多いかもしれない。

緻密に作り込まれた映像は素晴らしいが、ストーリーやデザインには難が多い本作。DVDなどでの自宅鑑賞の方が、画面に映るディテールをしっかり視認出来るだろうし、それまで待ってもいいだろう。お話には期待せずにどうぞ。



tsubuanco at 17:51│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ゴルゴ33   2007年04月03日 11:57
こう言う作品もスルーせず、きちんと見ているのは頭が下がります。
2. Posted by つぶあんこ   2007年04月03日 18:00
むしろこの種のジャンルの方が好きだったりするんです。だもんで無理して観ているわけではありません(笑

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