2007年03月23日

子宮の記憶 ここにあなたがいる 60点(100点満点中)

田嶋陽子「子宮が壊れちゃうぅ…」
公式サイト

新生児誘拐を題材とした藤田宜永の小説『キッドナップ(現在は映画と同タイトルに改題)』を映画化。

東京のとある裕福な家庭に暮らしながらも、これまでに母親の愛情を感じた事がない高校生、真人(柄本佑)は、家では常に反抗と衝突を繰り返し、遂に家を飛び出してしまう。辿り着いた先、沖縄の海辺にある寂れた食堂を一人で切り盛りしている中年女性、愛子(松雪泰子)に偽名を名乗り、店に住み込みで働きたいと申し出るが…という流れで物語が始まり、"母と子"をテーマに、主人公を始めとする各人物のドラマが描かれる。

原作小説はそれなりに長く、とても二時間程度の映画に収まる内容量ではないため、主人公と愛子の二人の関係のみを大きくクローズアップし、それ以外は傍流として、二人の心情、関係に影響を与えるための最低限のギミックとして留めている事が、原作と映画の、ストーリー的な大きな違いだろう。完全に存在が消されているキャラクターもいくつか存在する。

ストーリー以外では、まず物語の舞台が真鶴から沖縄へと変更されている事が、背景、人物の方言など、ディテール部での大きな差異として挙げられる。そしてまた、愛子を美人女優の松雪泰子が演じる事で、"母性"を強調した描写が重ねられていた原作とは違い、"大人の女"として魅力がフェロモンたっぷりに見せられているのも、本作の大きな特徴だろう。

何しろ共演している野村佑香や中村映里子などが"若さ"という絶対的アドバンテージを持っているにも拘らず、更に中村映里子に至っては全裸まで披露していながら、あらゆる面の魅力で松雪泰子の圧勝と断言出来る程だ。

が、プロフィール年齢34歳の松雪が、原作では43歳と設定されている役柄を演じているのは多少の無理があり、たとえ原作を知らずとも、松雪が「ババア」「親子にしか見えない」などと言われるシチュエーションには、違和感を抱くはずだ。このキャラクター設定は、物語を支配する重要点なだけに、何らかの納得のいく説明、描写があって然るべきだろう。

そのせいで、初めて愛子を訪ねた主人公が、洗濯物として干されている愛子の下着を見る場面なども、原作とは全く違ったニュアンスで観客に伝わってしまっており、この辺り、どこまで考慮して作られているのか、を疑問に感じてしまう。とにかく総じて、主人公の感情の基盤も変遷も、描写不足な部分と説明過多な部分がアンバランスなのは問題。

愛子の義娘、美佳(野村佑香)にしても、原作とは全く違った印象、主人公との関係変遷を辿るこのキャラクターは、映画だけ観れば特にいなくてもよかったのでは、と思わされる程に大きく改変、省略が行われており、存在の中途半端さを感じる事となっている。

久々に目にする野村佑香が、一時期の劣化ぶりをガングロメイクで補って、強姦シーンまで熱演(脱がないが)しているだけに、その扱いの悪さは勿体ない。このキャラクターを原作程ではなくとも、もっと活用する事で、物語にも二人の関係にも、更なる深みを出せたはずだ。

また、舞台がかなり遠いところに変更されているせいで、主人公を追って同級生(中村映里子)が東京からわざわざやって来るくだりを不自然に感じてしまうのも、改変の弊害のひとつだろう。"彼氏"絡みの顛末は全て台詞で終わりなど、そこに至るまでの描写不足も手伝い、そこまでして来て何故こんな結末に?と、主人公ならずとも激しく疑問に思い悩まされてしまう。ある意味ではこれは、主人公の心情とシンクロ出来る、と考えれば悪くはないのかもしれないが。

"やつれ、疲れ"を表現したつもりですらイロっぽく見えてしまう程に、最初からずっと松雪泰子がエロ美人すぎるせいで、"愛子の外見的変化"がわかりづらく、それに伴う二人の距離感の変化もまた、わかりづらい。画面で見せられている状況と、言葉で言われている事が今ひとつ噛み合ってないのだ。

本作の監督は共同テレビのディレクターで、劇場映画としては『ホワイトアウト』の監督を務めた若松節朗だが、『ホワイト〜』では雪山やダムの巨大感、広大なスケールを劇場のスクリーンに全く活かせておらず、テレビ的な狭い画面ばかりで構成されガッカリな出来であったが、今回その反省を踏まえたのか、沖縄の海、空、道路など空間構成をしっかり計算し、舞台の特異性を早い段階で観客に印象づける事に成功しており、その点では評価に値する。

だがやはり、各人物の機微、内面とそれらの変遷を表現する人間描写には食い足りなさを感じ、決まったストーリーに沿わせてキャラクターを動かすだけの、上滑りな演出と、必要以上にエロスを強調する各女優の見せ方など、役者の素の魅力に頼りがちで監督の演出意図が見えづらい、演技、演出が目立っているのは、あまり出来がいいとは言えないだろう。

とは言え、美人女優・松雪泰子のエロティックな魔性の魅力には、それら諸々の問題点を補ってあまりあるだけの大きな力があり、それを堪能するだけでも、本作を鑑賞する意義は間違いなくある。松雪泰子がストライクゾーンにある人なら必見。そうでない人なら、題材や舞台に興味があればそれなりには楽しめるかもだが、レンタル待ちでも充分か。




tsubuanco at 17:46│Comments(4)TrackBack(4)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【2007-46】子宮の記憶 ここにあなたがいる  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年04月03日 20:41
3 僕は17年前、誘拐された。 離れていても、 あなたは一生 僕の大切な・・・ 忘れない痛み、消せない絆 僕を誘拐した“ほんとうの母親”を探しに旅に出る
2. 野村佑香  [ Good!な芸能ブログ集 ]   2007年04月09日 21:02
嘘だと言って!! ...ョートカットで外ハネ全開なのか¡¡ ちなみに『なかよし』の付録の予告は野村佑香だったんだゼ! さっきある物を大量生産した!明日はお花見★晴れるのか?! 今日支配人からニュージーランドの??2щx;0 @
3. 子宮の記憶:愛と再生  [ 銅版画制作の日々 ]   2007年04月13日 14:02
僕を誘拐した“本当の母親”を探しに旅に出る 京都シネマにて鑑賞した、久々の邦画主演松雪泰子×柄本佑、『ホワイトアウト』の若松節朗監督の待望の新作原作は直木賞作家、藤田宣永。   松雪さんも母親役をするようになったんだ〜!そんなイメージ、あまりない女優...
4. 子宮の記憶 / 藤田宜永  [ 心理学とタイと読書日記 ]   2007年05月03日 00:49
松雪泰子主演、柄本佑(柄本あきらの息子)、余貴美子 出演の映画を先に観て、 (http://www.shikyu-kioku.com/) 結構よかったので原作を読んでみました。 {{{ ストーリー 主人公の「真人」は、生まれて間もない頃、産婦人科の病棟から誘拐された。 犯人は、子...

この記事へのコメント

1. Posted by 名無しさん   2007年04月08日 23:43
陽子たん…
(;´Д`)ハァハァ


仲間師匠じゃないですが、
もはや彼女の持論も芸の域に達してますな。
2. Posted by つぶあんこ   2007年04月09日 16:55
本人も既に、自分に何が求められているかを理解してやってるでしょうね。メディア上では。
3. Posted by Bion   2007年05月03日 00:49
私も観ました。松雪さんの透明感と憂いある、雰囲気の演技、松雪ファンにとっては嬉しかったですー。原作の愛子とは、ちょっと違うけれど
余貴美子さんもいい感じでした。美佳について、もっと深く、広げて、描いて欲しかったけれど、それには時間が短かすぎますね^^;原作とは別物として観た感じでした。
4. Posted by つぶあんこ   2007年05月05日 18:16
フラガールの時なんかもそうでしたkど、松雪泰子は疲れた女がよく似合いますよね。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments