2007年03月30日

Tokyo Loop 65点(100点満点中)

「トーキョーではありません、トキョウです」「? どう違うのかね?」
公式サイト

東京をテーマに、様々な選ばれしクリエイター達が作り上げた16本の短編アニメーションを次々に見せる、アニメーション映画生誕100年記念として製作されたオムニバス映画。

"東京"で"ループ"と聞いてすぐ浮かぶのは山手線だが、本作の"16"という数字もまた、路線名称としての山手線の駅数にあわせたものなのだろうか。

それぞれの作品は独立したもので相互のつながりはないが、計算されて配置された順番と、バックに流れ続ける山本精一作曲のBGMによって、文字通り"Loop"としての統一感を醸し出し、一本の作品として完結させている。

とは言え、それぞれの個性的にすぎる創り手による各作品は、"東京"さえ押さえれば後は何をしてもよく、実験的、前衛的手法にどんどん挑戦して構わないフィールドを与えられる事で、作家性がより前面に押し出され、どれもが一度観たら忘れられないインパクトを与えるものとなっている。

まず最初に見せられる、佐藤雅彦+植田美緒の『Tokyo Strut』によって、その実験、前衛的"なんでもあり"の方向性を如実に提示され、リズムを強調したBGMによって動き続ける、暗闇をバックに白い点と線のみで表現される"人と犬"が、その点と点を繋ぐ線の結び方を様々に変化させる事で、ずっと同じ動きがベースにありながらも、全く違ったビジュアルとなって視覚化される、シュールでありながらも理に適った映像は、さすが『ピタゴラスイッチ』の作者だと感嘆する。

続いて清家美佳による『釣り草』では、新聞写真の様に粗く拡大された人物写真をキャラクターに、それをゲキメーション様に動かして、動きのシュールなおかしさをベースとして見せ、その上で、"Loop"を意図したエンドレスな不条理世界を繰り広げ、世界観の面白さと恐ろしさを見せつけている。

おそらくは芸術、表現といった小難しい鑑賞には興味のない人にとって、最も印象に残り楽しめた一編となったであろう、漫画家のしりあがり寿の"鉛筆描きの絵"が動いてしまう『イヌトホネ』では、始まってすぐに、今までに見た事のないかたちでの"犬"の動きのおかしさによって取り込まれ、横スクロールアクションゲームを模した映像ギミックと展開の、その常道を時に微妙に、時に破壊的に外す、筋の通った不条理なる二律背反が調和する、殊更にシュールな映像に腹を抱えて笑わされる事は間違いない。これが真ん中に配置されているおかげで、一般客は他の難解な作品群に飽きる事なく、通して全作品を楽しめる様になっているのだ。

『頭山』で世界的に有名になったアニメーション作家、山村浩二による『Fig(無花果)』では、影絵調のキャラクターが縦横無尽に動作、変形するお馴染みの手法によって、その変わらぬ世界観と作家性、そして娯楽性も忘れていない、確かなセンスを楽しめる。

ラストを飾る岩井俊雄の『12 O' Clock』は、アニメーションの原点とも言えるフェナキストスコープを、アニメーションの最先端であるCGで再現してみせる、実験的な映像を創る事で、本作の企画意図である「アニメーション100年記念』に実は最も相応しい作品として、カオスの世界を収束させ締めとしている。

こうして、各作品の面白さだけではなく、その順列構成までもが先述の通り狙いすまされた計算のもとに設定され、より面白さを増幅する一助としている、編集と楽曲の上手さにも目を向けるべきだろう。

社会風刺的なカラーがあまりにもストレートすぎる、古川タクの『はしもと』や久里洋二の『フンコロガシ』などは、少し説教くささが鼻についてしまい、あまりいい印象は抱けないのだが、ストーリーではなく純粋に"アニメーション"としての"動き"に注目すれば、そのセンスの特異性は、確かに評価に値するものではある。

特に久里洋二は、かつては『11PM』のテーマソングに併せ見せられるタイトルアニメーションなども手がけているベテランならでは、動きのつながりとタイミングを直感的に図る事で、観客の感性に直に訴えかける効果を自然に出せている、これは素直に凄い。

暗転と真っ白の画面が交互に切り替わるなど、暗い劇場の大スクリーンで観るには少し目に厳しいが、自宅鑑賞ならその心配もなく、気に入った作品は何度も繰り返して観て、そうでもないのはすっ飛ばせるので、より自分に向いた楽しみ方が出来るだろう。機会があれば是非。



tsubuanco at 14:32│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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