2007年04月07日

フランシスコの2人の息子 15点(100点満点中)

橋下弁護士に7人目の子供誕生
公式サイト

ブラジルにおけるカントリーミュージック、セルタージョの歌い手として国民的な人気を誇る兄弟デュオ、ゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノの誕生から現在までを、実話をもとに再現したノンフィクション映画

朝起きてから夜寝るまで常にラジオを聴き続けるほどに、ラジオから流れる音楽を聴く事が唯一の趣味の、ブラジル郊外の農村に住む小作農家、フランシスコは、妻と9人の子供達とともに、貧しいながらも幸福に暮らしていたが、土地を追われ貧乏のドン底へ。それを救ったのが、まだ幼い息子2人、ミロスマルとエミヴァウ。2人は路上演奏で生活費を稼ぎ、やがて興行師に目をつけられ、芸能界へ足を踏み入れるが…というストーリー。

この『2人の息子』なるタイトル、内容を知らずに見れば何の変哲もない普通のタイトルに過ぎないが、実際に映画を観ると、後半でその"2人"の本当の意味に気づかされ、ヒネリの利いた秀逸なタイトルと、改めて感心させられてしまう。この仕掛けに気づけないなら、観た意味すら無いと言っても過言ではない。

そして、物語前半の少年期において、子役が演じる兄弟デュオの、極めて陳腐な形容を用いれば"天使の歌声"とでも称すべき、心洗われる声質とハーモニーの素晴らしさは、それだけで惹き込まれる魅力を放ち、物語展開に大きな力と勢いを与える役割を有用に果たしている。

が、評価出来る部分はそれくらいで、後はどうにも締まりも脈絡もない、行き当たりばったりな都合のいい不幸自慢と成功自慢に終始し、特段な楽しみは得られない結果に。

例えば、最初に息子が歌いたいと申し出てその歌を披露した時には下手糞だったのが、どうして上手くなったのか、全く説明がない。

財産を処分してまで子供達に楽器を与え、夢を託すのはいいが、彼らに弾き方を教える事もせず、ただ闇雲にかき鳴らすのを放置しているだけで、全くビジョンが見えないのに、いつの間にやら上手くなっているのでは、少しも面白くない。

最初はイヤな奴だった興行師が、何故そこまで別人の様に"いい人"に変貌したのか、全く納得の行く説明も描写もない。

その興行師を途中までは大きく扱い印象的に見せておきながら、途中から一切登場せずどうなったのかすらわからない。"いい人"になった彼が、"事故"に対しどれだけの誠意を見せたのか、すら描かれていないのには呆れる。

2人がオーディションを受けた際に、父親の無学さ故に歌詞の言葉遣いがおかしくて恥をかく、という流れまではいいが、ではそれをどう克服したのか、は一切描かれずまたも投げっぱなしである。

こんな風に、成功へと繋がる具体的な理由や、それに関わる様々な人間達が、どれも中途半端でバラバラなまま放置でまとまりがなく、一つの物語として全く成立していないのだ。

いくら実話だからとは言え、いやむしろベースとなるエピソードが既に存在するからこそ、それをドラマとして面白く、興味深く、感動出来る様に構成しなければ、話下手な金持ちによる、流れに脈絡がなく自分に応用が利くわけでもない、単なる運がいいだけの自慢話を延々と聞かされているだけにしかならないのだ。本作はその典型だろう。

音楽の扱いにしても、少年期の2人地方周りの様子を歌をバックにダイジェスト的に見せられる、定番的な場面でも、この時に流される歌が現在の本物のゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノの歌声なのは明らかに問題だろう。子供達が歌う様子を見せているのだから、子供達の歌を流せば、曲と映像がシンクロして一層の効果を挙げるはずなのだ。

要するに何も考えていないのではないか、とすら思わされる、数々の"いい加減さ"は、あるいはブラジルの国民性なのかもしれないが(違ったら失礼)、それにしても、父親は何も考えていない天然の魅力を描写していると受け取るにせよ、映画の作り手までもが何も考えないのは乱暴に過ぎる。

故郷を捨てて街へと出るべく、都会のバスターミナルに初めて辿り着いた場面にて、楽曲を演奏して金銭を得ている人間に目を引かれる。それが伏線となり、二人が同じ場所で歌と演奏を披露し、生活費を稼ぐ展開へと繋がる。こうした、考えて構成されていると感じられる部分もあるのだから、本当に何も考えていないわけではないのだろうが、もっと考えないとダメだろう。

何となく"いい話"っぽく纏め上げられて誤摩化されがちだが、実はとんでもなく無茶苦茶な本作。彼らのファンなら観て損はしないだろうが、それ以外にはオススメしない。


tsubuanco at 16:35│Comments(0)TrackBack(5)clip!映画 

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