2007年04月09日

ブラッド・ダイヤモンド 65点(100点満点中)

超人硬度10!
公式サイト

ハリウッド的お約束を踏まえた上で、"日本武士の魂"を描いた『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック監督最新作。今回もまた、ハリウッド的お約束の中で、現在もアフリカに蔓延する、搾取と貧困と暴力の図式を啓蒙する作品となっている。

1999年、アフリカ最大の密売ダイヤ産出地であるシエラレオネを舞台に、内戦の巻き添えで家を失い家族とも離ればなれとなり、自らは闇ダイヤ採石場で強制労働の身となった現地住民ソロモン(ジャイモン・フンスー)が、労働中に偶然発見した桁外れに大きいダイヤを主軸に、それを偶然知り、ソロモンの家族探しと引換えにダイヤを入手しようと目論む、アフリカで生まれ育った白人密売人アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)や、ダイヤに象徴されるアフリカの負の構図を追う、イギリスの女性ジャーナリスト、マディー(ジェニファー・コネリー)らを中心としたドラマが展開される。

クリントン大統領の不倫騒動がTVで報道されている画面を映すなどして、現在より少し以前の出来事であると端的に作中で提示されているが、これは現在には既に密売ダイヤに関する国際的ルールがある程度整えられているからで、本作で描かれている一連の出来事が、国際世論が高まる一つのきっかけとなった、という構図を用い、フィクションでありながらも、現実に際する社会派のテーマ、メッセージをより強烈に伝える狙いが読み取れる。

ダイヤに限らず欧米諸国による資源の搾取、運び出される資源の替わりに持ち込まれる武器弾薬、それによって激化、長期化する内戦、そこから生じる治安悪化、難民、少年兵と、アフリカを救いのない悪循環で覆う諸問題を"ダイヤ"をキーワードに全て結びつけ、ソロモンとアーチャーの二人の主人公の設定、背景、ドラマとしてそれらを象徴的に描き、ジャーナリストが白人社会への橋渡しとする、と、題材をわかりやすく観客に伝えるために配置、設定された人物とその動向が組み立てられている。

これはメイン三人に限らず、出番の多い少ないに限らずあらゆるキャラクターが、それぞれ"アフリカの現状"のそれぞれ一端を象徴する役割として設定、配置されており、その点においての無駄のなさは見事。

だが、あまりに伝えたい題材が多すぎるせいか、各人物が担い表現する、ひとつひとつの事象がそれぞれその場限りの単発的なものに終わってしまいがちな事も多く、掘り下げ、突っ込みの足りなさを感じる部分もある。

これらがドラマ内の縦糸として蓄積されていき、主人公二人にそれぞれ心境変化を与える影響となり、ドラマの進行や二人の関係変遷へと繋がる様になされていたならば、もっともっと面白くなっていたであろうから残念に感じる。二時間半近くの長尺を費やしても尚、そうした食い足りなさを感じてしまう程に、現実の問題は根深く果てがない、と受け止める事は出来るが。

そうした社会派の題材と、女子供も容赦なく死んでいく虐殺、戦乱の凄惨さを、家族愛、友情、恋愛、人間愛、環境保護など、ハリウッド的お約束に満ちた図式、展開の中に盛り込み、娯楽と呼ぶには重すぎるが、驚愕、興奮、感動する一大作品に仕上げている、そのバランス感覚と、白人社会から見て異世界を舞台に、白人的価値観、正義感をシニカルにひっくり返す、その手法は『ラストサムライ』と変わらず手慣れたものだ。

ラストシーンの演説場面などは、しょせん"対岸の火事"感覚でしかない欧米人の"偽善"を象徴し、その後に表示されるテロップによって、「安全圏できれいごとを並べているだけでは、結局何も変わらないのだ」と突きつける、最後まで強烈なアイロニーが小憎い。

アフリカ人を"救う"ために来ているはずの白人ボランティアは何の役にも立たず、少年兵を保護している教師は少年兵に撃たれる。数えきれない人数が死んだ末にようやく手にしたダイヤを手放し、山上から見る、夕陽に染まったアフリカの広大な光景を「美しい」と評するアーチャー。死ぬまで漁師をして故郷で暮らすはずだったソロモンは、密売ダイヤ問題の生き証人として白人社会へ赴かされ、アフリカを離れるために金を貯めていたアーチャーが、"アフリカの赤い土"となる。

その様に最初から最後まで、一貫してシニカル、アイロニカルな表現、展開が続出し、それでストーリーを構成している本作、その構図がハリウッド的わかりやすさで見せられるため、寝ずに観ていさえすればその事は見て取れ、楽しめるはずだ。

いつ誰が誰に殺されてもおかしくない緊張感と、弾着と血飛沫と爆発が永遠に続くかと思わせる程の、息の詰まる虐殺、戦闘シーンによって、視覚的にも心理的にも強烈なインパクトとして観客のテンションを高め続けて興味を引き、観賞後も一面的な感動、興奮では済まされない気持ちで劇場を後にさせる、その狙いはしっかりと果たされている。

少し"ハリウッド的な冒険"が長過ぎる割には、先述の通り単発的な題材の提示に食い足りなさを感じる、そんな欠点はあるが、大資本が支配するハリウッド大作で、ここまでのものが出来れば充分だろう。

後味の悪い作品である事をわかった上で、興味のある人は必見。強烈なインパクトをより味わうためにも、環境のいい劇場での鑑賞を推奨。



tsubuanco at 16:48│Comments(1)TrackBack(25)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ゆりンコ      2007年09月30日 05:00
ジェニファー・コネリー好きなんでいつか必ず見ようと思います。

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