2007年04月06日

映画監督って何だ! 50点(100点満点中)

守ろう著作権〜♪

日本映画監督協会製作による、"映画の著作権は映画監督にあり"と主張する啓蒙映画。

出演者のほとんどが協会所属の映画監督自身でまかなわれ、またスタッフとキャストのほぼ全員がボランティアで参加しているのが、まず大きな特徴である。

また、映画会社、配給会社など"上に楯突く"内容なので、上映される当てすらなく、それどころか本当に作れるのか、といった段階から始められた本作。売名パフォーマンスと言われる事もあるだろうが、その志には感服する。

日本では、著作権法第29条により、映画の著作権は監督ではなく製作会社に与えられている。だがそれはオカシイのではないか? 小説や音楽の著作権は、出版社やレコード会社ではなくクリエイター本人のものとされている。何故映画だけがそうではないのか? この法律は利権上の理由で歪められたものであり、改正するべきだ!

との、"映画監督側の言い分"が作品を通して発せられ続けている本作。一応前半では、現行法肯定側の言い分も丁寧に語り、一見して公平な印象を与える様にはされているが、実際には結論ありきの主張の押しつけであり、その事を隠しきれていないのは、作品の目的として大成功とは言い難いだろう。もっと工夫が欲しかった。

現行法が国会を通過するまでの経緯を、映画監督達の演技によるディベート劇として披露する、前半の展開は興味深いし、後半の、同じ脚本の1シークエンスを3人の映画監督に撮らせ、それが全く違った作品に仕上がる事例を見せて、映画監督のクリエイティブな役割を強調するあたりの展開は面白い。

その3人の監督、最初は名前を伏せて映像だけを見せられるのだが、鈴木清順が撮った作品だけは1カット目ですぐに「あ、これは鈴木清順だろ?」と気づいて笑わされた。この映像を観るだけでも、本作を観る価値はあると言えるかもしれない。

だが、序盤に見せられる時代劇調の寸劇は、いくら演じているのが演技のプロではない映画監督とはいえ、やたらとモタモタしてテンポの悪い、あまりにつまらないお粗末なもので、この時点で観る気が失せてしまい、この場面は明らかに失敗だろう。無い方がよかったのでは。

そしてこの映画は、まず根本的な「そもそも著作権とは何だ」という基盤にしっかり触れていない。これが大きな不備である。

著作権者が何故保護されるべきなのかと言えば、本来は「不当に損をしない」ためであるはずだ。にもかかわらず近年では、「利権を独占して得をする」事に利用されがちな面が目立ち、JASRACなどは"音楽文化を滅ぼす著作権ヤクザ"などと批判の対象にされる始末。まあ、その批判はおおむね当たってるのだが。

"著作権"なる言葉に対し、そうした印象を多くの人が抱いているために、作中で述べられる主張が"一方的なワガママ"と捉えられがちになってしまうのだ。(最近の松本零士の言動にも似ている)

映画は多くの人材が参加して作り上げられている。それは音楽だって、漫画だってそうだし、小説にしても、編集や校正など、執筆者以外の人間が動いて初めて完成する。その中で、何故"作者"だけが著作権者として保護される事が当然となっているのか、これを疑問に思わないのは傲慢に過ぎる

むしろ、出版物や音楽の方も、著作権は会社が持った方がいいのではないか、という考えが生まれてもおかしくないはずなのだ。

最近、科学や工業分野での発明の権利や報酬をめぐって、企業と開発社員とが裁判で争うような事例もあるが、それだって、会社の金、会社の設備、会社の人脈など、会社の持っている力を使って発明しながら、自分だけで偉業を成し遂げたかの如く、権利や金を要求するのは傲慢にすぎない。

全てを自分の甲斐性で完遂してこそ、利益を独占する権利が得られるというものだ。義務と権利の当然の構図である。

第一、現在の状況でも、映画がソフト化されたり放送されたりすれば、監督は売り上げのいくらかを報酬としてその度に受け取っているのだ。だから作中で主張されている「名誉だけ与えて利益は与えない」という弁は間違いなのだ。

そもそも、本作の監督である伊藤俊也が、本作を実際に作り始めた段にあたって、「予算の事を全く考えず、スタッフも役者も働いてくれて当然」と思っていたと言うのだから、タチの悪い冗談としか思えない。林海象が諌めなかったらどうなっていた事か。

こんな世間知らずで傲慢な人間が権利を主張しても、説得力などあるはずもない。『女囚さそり』『犬神の悪霊』『白蛇抄』『風の又三郎』『プライド』と、過去に名作、話題作を作った伊藤俊也だが、当然だが作品の評価と本人の評価は別だ。

と、そんな事は抜きにしても、有名無名の映画監督達が慣れない演技に苦労している様をニヤニヤと楽しんだり、先述の"3つの映像"を、誰が撮っているのか明かされる前に当てようと試みたりと、素直に楽しめる部分もそれなりにはある。また、メイキングとして撮られたドキュメントも存在し、ある意味こちらの方が面白い気もする。

主張の是非、賛否はともかく、"映画が好き"な人なら必見だろう。機会があれば是非。


補足:
映画監督とは、創造的な素晴らしい仕事であります!
筆者はあらゆるものづくり人を尊敬しています! マジで。



tsubuanco at 18:02│Comments(3)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 壱   2008年01月31日 18:17
誤解があるようですが作者は本の収益を独占できません。

編集者(他のスタッフも)に著作権はありませんが、本の収益は彼らにも分配されています。彼らのもらう金はどこから
出てくるのですか?

>全てを自分の甲斐性で完遂してこそ、利益を独占する権利が得られるというものだ。義務と権利の当然の構図である

仰るとおりです。
だからこそ、編集者には著作権という形の金づるは与えられません。あくまで作者の補助者に過ぎないのですから、その貢献に応じたお金しかもらえないのは当たり前です。
2. Posted by 壱   2008年01月31日 19:53
著作権料はあくまで作品の収益の一分に過ぎない。
作者は利益の独占なんかしてません。
一番儲けてるのは作者じゃなく会社です。

出版社の編集者なら、本が売れれば
給料も増えるでしょう。

著作権はなくとも編集者にも
ちゃんと利益の分配はあるでしょう。
まともな会社ならね。

もっともつぶあんこさんの考え方なら
「会社のおかげ」で仕事させてもらってるのだから、そんな分け前は期待するのは傲慢ということになりますかな?
3. Posted by つぶあんこ   2008年02月01日 17:40
えーと、現代文のテスト苦手だったでしょ。根本的に文意を理解出来ていない様なので、お話になりません(笑)

書いてもいない事を前提に突っ込まれてもなあ。見えない敵と戦わないでください(笑)

粗を探しているつもりで的外れなツッコミに必死なのが本作と『母べえ』ですか。正体も目的もバレバレです。本当にありがとうございました。サーセン(笑)

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