2007年04月12日

キトキト! 10点(100点満点中)

高岡市政新聞
公式サイト

いろんな意味で有名な映画監督・井筒和幸の助監督を務めていた吉田康弘の監督デビュー作。

地方都市で生まれ育った主人公が家を出て東京で堕落した生活を送り、母親は地元に一人残って地道に働く。そんな母子二人のドラマ、と言えば『東京タワー』がまず浮かぶだろうが、おそらくは本作、ベストセラー本の人気に便乗して立てられた企画に、新人監督があてがわれた類いの成行きと推測される。

題材はパクリでも、自分の持ち味を出し、独自の作品として昇華させる事は可能である。はずが、どうにも評し難い作品に終わってしまったのが残念。

最初は同一だった舞台が二箇所に分離して、主人公の物語、母の物語がそれぞれ平行して進み、最終的にまた一つに回帰する。そうした流れをメインとしながら、サイドストーリー的に見せられる周囲の人物達の描写、言動があまりにも散漫に過ぎ、本来の物語の方向性が見失われがちなため、終盤の展開の取ってつけた感がより強くなっているのが、まず構成上の問題。

序盤から中盤にかけてはコメディ描写を積み重ね、笑わせながらキャラクターを認識させていくやり方はそれなりに成功しているが、これらもまた、散漫でブツ切りなエピソードの羅列のせいで、本筋を見失いがちな、その場限りの笑いのみを求めたネタが多く、逆に本筋として必要なはずの情報や描写が削られていると、本末転倒な事態になってしまっている。

例えば、主人公側のドラマとして重要な存在である、東京で知り合った女性(伊藤歩)との関係変遷は、あまりに主人公とストーリー進行に都合が良すぎるものでしかなく、そもそもの端緒からその後の進展と結果に至るまでが、あまりにお粗末に過ぎる。

"都合のいい女"を描いているのならこれで構わないが、そうではないだろう。人格を持ち独立した生の女性として、全く描写が不足しており、存在の重要性にキャラクターが届いていないのだ。伊藤歩のビジュアルやちょっとした仕草や表情などは、かなり魅力的に見えるだけに、それが内面描写にまで至っていないのが勿体なさ過ぎる。(そう言えば彼女、『東京タワー』にも出演していた)

母親のエピソードにしても同様。何故スナックをやるのか、何故パソコンを買ったのか、など、あらゆる展開が先に考えられた結果に繋げるための材料でしかない、と観客にバレバレなままで、そう感じさせないための工夫がなされていない。

誰か知らない他人がいきなり死んでも、悲しくも何も無いのが普通だ。それと同じで、説得力のある、あるいは納得の行くかたちで興味を引きつける描写を積み重ね、感情移入させておかなければ、その人物に何らかの大きな出来事が起こったとしても、感動には結びつかない。名作のラストで泣けるのも、そこまでの蓄積があればこそで、そこだけを見てもつまらないのだ。

この映画にはその蓄積が無く、あらゆる要素が全てバラバラなまま未整理に散在したままストーリーだけが進み、「ここで泣け!」と急展開を押しつけられて"いい話"で終わってしまう。観客は置いてけぼりで呆然とする他ない。

そもそも、メインの登場人物達に魅力が無い、というのが大きな問題。主人公は全てにおいてやる気も何も無く、自分がどうしたいのかすらわからず仕事をまともにこなしてる描写すら無く、ひたすらダラダラしているだけの人間のクズに過ぎず、こんな輩に感情移入出来るはずも無い。

そうした主人公の、例えば仕事の描写などが全く不足している割に、友人の仕事上のトラブルに無意味に尺を割いて、それに絡む場面において、一番台詞で言ってはいけない言葉を言わせてしまうに至っては、呆れる他無い。しかもそれを言うシチュエーション、タイミングも外しまくっており、何故今ここでそれを叫んでしまうのか、前段階の積み重ねも何も無いため、ただただ浮いた言葉として違和感と恥ずかしさが残るばかりだ。

二つの舞台、高岡と東京を様々な視点で対比的に描く、という最低限の仕事も非常に弱い。高岡の象徴を大仏、東京の象徴を"巨大ウンコ"として対比したのは少し面白かったが、これはあまりに恣意的か。

ヒット作のネタをパクって、適当にギャグを並べて、都合良く人を死なせて泣かせようとする、志の低いダメな日本映画の典型に過ぎない。

伊藤歩や平山あやが可愛く撮れているので、ファンなら一応観ておいた方がいいのかもしれないが、それらに興味が無いなら観る価値は無いだろう。藤子不二雄の『まんが道』でお馴染みの高岡大仏も登場するので、そっちも一応要チェックか?


蛇足:
自分が若く見えてカワイイと勘違いしているだけのキモいサル顔ババアにしか見えず目を背けたくなる大竹しのぶは、いい加減に方向性を改めないと、本人が損をするだけと気づくべきだ。

と、本作とTVドラマ『冗談じゃない!』を観てつくづく思った。


tsubuanco at 18:01│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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