2007年04月11日

エレクション 65点(100点満点中)07-100

( ・∀・)つ且~ 茶でも飲んで落ち着け 
公式サイト

香港の黒社会を題材とした映画に定評のある、ジョニー・トー監督作品。原題はそのままズバリ『黒社会』であり、その有りようを監督得意の手法を様々に用いて戯画的に描いてみせている。

ジョニー・トー作品において、まず真っ先に映像的に目につくのは、まるで実相寺昭雄か藤子不二雄Aと言わんばかりの逆光の多用だろう。

本作でもそれは殊更に顕著で、特に屋内の場面では、外部からの自然光を背景に人物が影絵のごとくシルエットで映し出され、片側の輪郭を縁取るハイライトがその影の黒さをより強調する、夜より昼の方が画面が黒いという、あからさまに通常とは逆転された映像が最初から最後まで続出し、それが、単に絵画的な見栄えのみにこだわった表層的なものではなく、作品テーマを象徴し観客に叩き込む効果となっている。

ただ、この人物の顔がほとんど真っ黒な映像によって、そもそも誰が何者でどちらの側なのかといった、ストーリーを理解する上で必要となる基本情報が不明瞭になりがちで、特に序盤から前半にかけては、ストーリーは極めて単純な一本道にすぎないのに、主人公、ライバル、大ボスなどのメインキャラ以外の人物構図が見えづらいという、不可思議な状態となる。

この混乱、不明瞭は、ある程度は作り手の狙いではあり、つまるところ誰が誰でも大差なく、見るべきところはそこではないという意図なのだろうが、それにしても、気楽に映画を楽しむタイプの層ならば、構図がハッキリ明瞭になる中盤に到達するまでに脱落し、それまでの流れ全てが一気に収束、爆発し、あまりの救いの無さに茫然自失する衝撃のラストシーンに辿り着けない、勿体ない結果になる可能性が高い事は想像に易い。観る人を選ぶ映画ではあるだろう。

監督のもうひとつの特徴である、生々しく痛々しいバイオレンス描写は、今回は得に銃撃戦などの類型的でわかりやすい表現を排し、その凄惨さがより一層強まったものになっている。

前半のリンチ、中盤のお宝争奪戦、そして終盤に繰り返される衝撃の暗殺と、そのどれもが、突き放した俯瞰的、客観的視点で見せられる事で、その行為の当事者としてではなく、通りすがりについウッカリ「見てはいけないものを目撃してしまった」様な印象となって観客の心を抉り、カタルシスどころか不快感で一杯になってしまうのもまた、作り手の狙い通りだ。

これらの表現及び、どうにも救い難いキャラクターにストーリー展開と、いわゆる"ヤクザ映画"でありながら、決して"カッコいいもの"としては描かず、かと言って単純な"ワルモノ"としても扱わない、警察の扱いも含めて曖昧模糊で一義的な括りとはならない、"人間の業"を戯画的に象徴している事が、本作の全体を支配する独自性を生み出しているのだろう。

真っ黒な映像やライバルのキャラクター描写に始まり、銃を全く用いない一連のバイオレンス場面、唐突に挿入される儀式シーン、そしてラストシーンに登場するサルの群れと、"人間のリアル"を目的としながら、それとは正反対にわかりやすくディフォルメ、戯画化された表現を多用し、逆説的により"リアル"を強調する、この手法はあるていどは成功しているが、時にあまりにわかりやすすぎる隠喩やアイロニーには、あざとすぎると感じられる部分もあり、一長一短か。

先述の通り観る人を選ぶ作品ではあるが、これまでのジョニー・トー作品が気に入ったなら文句無しに必見。一回観ただけではわからなかった事も、改めてもう一度見れば構図が鮮明となり、よりストーリーやキャラクターを深く楽しめるはずだ。自己責任で。


tsubuanco at 14:24│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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