2007年05月03日

クィーン 60点(100点満点中)

謎の東洋人X
公式サイト

ダイアナ妃事故死の前後、英国王室にて繰り広げられた顛末を、女王・エリザベス二世とブレア首相の二人の視点をメインとし、事実に創作を交えて再構成したノンフィクション風映画。

エリザベス女王を演じるヘレン・ミレンは、物静かさと荘厳さが両立した、いかにも"現代の女王"然とした所作、立ち居振る舞いを見せ、単なるモノマネ、そっくりさんに終わらず且つ本物から逸脱しない、リアルとディフォルメが共存する難しい役どころを見事に演じている。

ブレア首相を演じたマイケル・シーンもまた、こちらは少しディフォルメが過剰な気もするが、革新派でありながら王室の伝統に理解を見せ、人としての女王には同情する、人情に厚いも冷静さと客観性を失わない、理想的な若き指導者像をイヤミにならない様に演じている。

作品の方向性としては基本的に、英国王室および女王に対し同調、同情的な観点から描かれており、その是非は別としても、どの様にそれが展開していくのか、が見どころだろう。

ごく普通の視点で見れば、ダイアナ元妃の死を悼む事が全人類の責務であるかの様な、あの押し付けがましく気持ちの悪い全体主義的な狂乱ぶりが、異常以外の何ものでもなかった事は当時からわかりきっていた事で、各人物の台詞によって「死んでからも迷惑」「後ろ足でドロをかけて去った人間」「会った事も無い人間のために泣くなんてあり得ない」など、その事を改めてストレートに提示し、そんな狂った"世論"に押しつぶされそうになる、女王の苦悩とそれに耐える誇り高き様を、事件とは直接関係のない会話や動作によっても象徴的に表現し、自然と主張を観客に伝える、その手法は上手い。

個人的には嫌いだが愛する孫の母親でもある、ダイアナに対する複雑な心境、そんなダイアナを一度は受け入れたのは自分達の選択でもある、と自覚している事によるジレンマ、自分の意志で王座に就いたわけではなく、人生の全てを公人として捧げてきながら、当の国民から批判される苦痛、などなど、ブレア首相でなくとも彼女に同情的になるのは当然であり、それでもなお王室批判を続けているのは、ブレアの妻や側近など、現実も見ずそれに即した論理も持たない愚かしい左翼かぶればかり、とアイロニカルにこき下ろしている構図は痛快。

一方で、何でもかんでも王室バンザイな単純構造とはせず、チャールズ皇太子など男性陣の不甲斐なさ頼りなさが、これまたアイロニカルにディフォルメ気味に強調される事で、より女王のキャラクター性が引き立ち、ヒロインとして君臨する効果となっている。

女王がその女王たる由縁を最も端的に表現する、国民の前に姿を現し少女と花束のやりとりをする一連の展開は、本映画中最大の見せ場でありクライマックスとして存在し、女王自身の振る舞い、それに対する国民の反応には、イギリス人ならずとも感慨を覚えるのではないだろうか。

主演俳優の力量が作品の面白さに大きく貢献している意味でも、昭和天皇の『太陽』にも似た、望まずして頂点に君臨した者の一人間としての有りようをドラマティックに描いた本作、ダイアナダイアナと無責任に騒ぎ立てていた当時のメディアに辟易していた常識人なら、本作に共感し楽しむ事は出来るだろう。興味があるなら是非。

当然だが、ダイアナもブレアも知らないレベルの人は観なくていいです。コナンでも(略



tsubuanco at 17:15│Comments(2)TrackBack(15)clip!映画 

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今年のアカデミー賞で(記事)ヘレン・ミレンさんが主演女優賞を獲得した時から気にな
2. クイーン  [ 八ちゃんの日常空間 ]   2007年05月03日 01:15
この作品も最初に予告編を観た時からかなり気になっていました。なんか面白そう!ノンフィクション系の中でも群を抜いて楽しめます。今年に入ってからのシャンテ・シネ上映作品で、一番良かったと思えます。
3. 「クィーン」レビュー  [ 映画レビュー トラックバックセンター ]   2007年05月03日 10:25
映画「クィーン」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェームズ・クロムウェル、シルヴィア・シムズ、アレックス・ジェニングス、ヘレン・マックロリー、他 *監督:スティーヴン・フリアーズ 感想・評価・批評...
4. 真・映画日記『クィーン』  [            ]   2007年05月03日 20:03
4月19日(木)◆416日目◆ 終業後、三田線で日比谷へ。 シャンテ・シネで『クィーン』を見る。 6割ほどの入り。 女性客、会社帰りのリーマンが客層の中心。 ボクの右隣は外国人の野郎二人組。 1997年8月に起きたダイアナ元皇太子姫の自動車事故→急逝。 ...
5. 【2007-63】クィーン(THE QUEEN)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年05月03日 23:11
2 ショッキングなニュースが世界中を震撼させた 1997年8月31日 ダイアナ元妃 突然の死 世界中が泣いたその日、 たった一人涙を見せなかった人がいた 世界中が注目したひとりの女王 その時─ 英国王室に何が起こったのか あれから10年 今、真実が明ら...
6. クイーン  ☆☆☆★★  [ 旭のほとりで ]   2007年05月08日 08:21
主演  ヘレン・ミレン 評価70 内容 ダイアナ妃死去後の、王室と首相のやりとりの物語。 感想 ◇題材はいいが・・・・。 題材自体はいいものを選んでるし、首相ブレアも女王エリザベスも健在の中でこのような映画を作る。日本には出来んでし....
7. 映画「クィーン」  [ 日々のつぶやき ]   2007年05月10日 10:40
監督: スティーヴン・フリアーズ?  出演: ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェイムズ・クロムウェル 『世界中が泣いたその日、たった一人涙を見せなかった人がいた。』 ものすごいインパクトのあるコピー・・ダイアナ妃が亡くなった日、1997年8月31日。
8. 【劇場映画】 クィーン  [ ナマケモノの穴 ]   2007年05月11日 21:00
≪ストーリー≫ 1997年8月、パリでダイアナが交通事故に遭い、帰らぬ人になった。王家においてダイアナはいつも頭痛の種で、民間人となっていたダイアナの死は本来関係のないことであった。女王はコメントを避けるが、ダイアナを称える国民の声は次第に高まっていく。やがて...
  エリザベス女王にそっくりなので、いやあ〜です。(ちなみに、このヘアースタイルの名前はキャベツヘアーだとか)よく似た人がいるものだと感心していたところ、先日「キネマ旬報」でヘレン・ミレンの素顔を見て、あまり似ていないことに気づきました。それにしても、メ...
10. 特別な存在であり続ける事の難しさ。『クィーン』  [ 水曜日のシネマ日記 ]   2007年05月14日 11:33
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クィーン THE QUEEN 監督 スティーヴン・フリアーズ 出演 ヘレン・ミレン マイケル・シーン     ジェームズ・クロムウェル シルヴギ..

この記事へのコメント

1. Posted by 勅使河原   2008年01月08日 12:59
相当ツボにハマった映画でした。
特に前半の「あらドディはもう埋葬したのね」
「暑い国の人だからねえ」には爆笑。
おばあちゃんがナイスでした。
チャールズの「オレがダイアナ人気の影でしていた思いを、今、両親が味わってる」っていうのもおもしろかったです。
王室の人たちはタブロイド紙もテレビも細かくチェックしてるんですなあ。
2. Posted by つぶあんこ   2008年01月09日 00:42
ヘレン・ミレンが女王を演じたのがまさか『ナショナルトレジャー2』の伏線とは思いませんでした。

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