2007年04月13日

ツォツィ 33点(100点満点中)

ダスティン・ホフマンが女装する映画
公式サイト

南アフリカ、ヨハネスブルグのスラム街を舞台に、そこに住む少年・ツォツィが赤ん坊との出会いによって人間性を取り戻していく感動ストーリー、なのだが、どうにもお粗末。

南ア人作家のアソル・フガードによる原作小説が、書かれた60年代当時を舞台としていたのとは異なり、現代を舞台にしている本作、原作の重要な背景であったアパルトヘイトが存在しないながら、今度は解放された筈の黒人の中で格差が出来上がってしまっている、といった現実的な問題を訴えかける狙いは理解出来るのだが、その上で展開されるストーリーはあまりにも定型的で陳腐にすぎ、心に響くものではない。

主人公の"汚れ"の対極となる、赤ん坊の"無垢"や母親の"母性"をキーファクターとして、"悪人"であった主人公が改心する、という構図は、最近でもジャッキー・チェンの『プロジェクトBB』でも使われているなど、あまりにありがちで安易だ。

例えパターンでも、描写や表現にこだわったり、独自のヒネリを加えるなどの工夫があれば面白くなるのだろうが、特にこれといって何も無いのが困る。

主人公の仲間として配置される面々も、気のいいデブ、知能もモラルも低いチンピラ、インテリ崩れのメガネと、なんだか少年漫画にでも登場しそうなメンバー構成で、この後誰がどうするのか、が簡単に予想がついて、実際にその通りになってしまうのだからタマラない。

主人公の言動、心理描写の一連が、最初から決まったストーリーを進めるためにそうさせられているとしか感じられないもので、大体、スリで人を殺し、仲間をボコボコに半殺しにし、車を盗むために人を撃った次に、何故赤ん坊を持ち帰ったのか、そこに説得力のある描写が一つもなく、そこまでの流れなら、赤ん坊を放り捨てて逃げてしまう方がよほど筋が通るのだ。

この、物語の起点となる部分があまりに御都合主義であり、結末もまた同様に、「なんでモタモタしてんの?」とイライラするだけで感動どころではない。

途中に登場するホームレスもの言動も、どう考えても通行のジャマな場所に居座って、ガラの悪そうな少年にぶつかられたら悪態をついて、そいつに尾行されたらビビって金を差し出す、と、明らかに話を進めるための、治安の悪い場所に住む人間としてあり得ない言動に終始する、ツッコミどころ満点のものでしかなく、観ていてウンザリするだけだ。

この種の"更生美談"的な作品において、最もないがしろにされてしまうのが被害者だ。車と子供を奪われた女性は、体の自由さえ奪われ、それでも主人公を"赦す"事を物語の都合上強制され、主人公は数々の被害者に対しなんら謝罪も反省も無く、自分だけがいい子になろうとする、こんな話で感動出来てたまるか。

いくら辛い過去があろうが真面目に善良に生きている人の方が大多数なのは言うまでもない。それに負けて悪に走った時点でクズでしかなく、可哀相でもなんでもない。クズがマトモになったところでマイナスがゼロになっただけで、偉くも何ともない。コイツの被害に遭った善良な被害者の方がよっぽど可哀相だ。

そうした欺瞞、偽善を隠すだけのストーリーや演出がなされていない本作、南アフリカのネガティブな現状を知らしめる事は出来ており、南アのヒップホップを用いたBGMは聴きごたえがあるが、所詮それだけに留まった作品にすぎず、社会派ドラマとしても、ヒューマンストーリーとしても、出来はよろしくない。

ここ近年多く作られている、アフリカの暗黒面を題材にした映画の中では質はダントツで低い。無理して観る事もないだろう。


tsubuanco at 16:23│Comments(6)TrackBack(6)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 「ツォツィ」:台場駅前バス停付近の会話  [ 【映画がはねたら、都バスに乗って】 ]   2007年05月11日 22:00
{/hiyo_en2/}あら、ゆりかもめって、無人運転じゃなかったっけ? {/kaeru_en4/}ああ、運転手がいるなんて珍しい光景だな。 {/hiyo_en2/}安全対策か何か? {/kaeru_en4/}さあ、わからないけど、南アフリカの地下鉄に比べりゃ、ずっと安全なんじゃないのか。 {/hiyo_en2/}って...
2. 真・映画日記『ツォツィ』  [            ]   2007年05月12日 17:15
4月24日(火)◆421日目◆ 終業後、六本木ヒルズへ。 シネコン「ヴァージン・シネマ」で 南アフリカの映画『ツォツィ』を見る。 ヨハネスブルクの少年ギャングのツォツィと (彼が)盗んだ車にいた赤ちゃん。 この出逢いでツォツィは 「良心」に目覚めることに...
3. ツォツィ  [ シネクリシェ ]   2007年06月11日 03:02
 予想を上回る感動作でした。  筋金入の不良(ツォツィ)だった主人公が、ふとしたことから乳児を誘拐してしまい、それをきっかけに人間愛に目覚めていく話です。  ストーリーに対する感動もさることながら、非
4. ★★★「ツォツィ」プレスリー・チュウェンヤガエー、テリー・ペ...  [ こぶたのベイブウ映画日記 ]   2007年06月11日 13:00
リアルな描写に最後まで飽きずに観たが、ツォツィの心の変化が良く分からなかった。赤ん坊と出会ったとはいえ、何が切っ掛けであの不良少年は命の価値に気づいたんだろう?その辺りが私には「唐突」に感じてしまい、心の動きを描き忘れたようで物足りなかった。でも、馴染...
5. ツォツィ  [ ★YUKAの気ままな有閑日記★ ]   2008年02月06日 17:49
レンタルで鑑賞―【story】南アフリカ、ヨハネスブルクのスラム街に暮らすツォツィ(プレスリー・チュウェンヤガエー)は、仲間とつるんで窃盗やカージャックを繰り返していた。ある日、高級住宅街にやってきた彼は車を運転していた女性を撃って逃走。やがて、強奪した車の後...
6. 映画『ツォツィ』  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2008年03月05日 01:45
原題:Tsotsi これがアパルトヘイトのあった南アフリカのスラム街の現実なのか、世界一の格差社会といわれる国の現在なのか、まだ幼さの残る子供達の怖ろしい現実・・ 南アフリカはヨハネスブルク、そのスラム街に不良グループのツォツィ(プレスリー・チュエニヤ...

この記事へのコメント

1. Posted by 名無しさん   2007年05月22日 00:57
1 横浜から六本木まで観に行きました…
続編は「ツォツィvs口裂け女」でお願いします。
(´・ω・`)
2. Posted by つぶあんこ   2007年05月23日 17:22
口裂け女は強すぎるので、土管ハウスつながりで『ツォツィvs鈴木義二』あたりで。
3. Posted by 名無しさん   2007年05月24日 12:28
では間をとって、口裂け女は垂れ乳を振り回して攻撃するという設定でお願いします。
4. Posted by つぶあんこ   2007年05月24日 14:54
つまり乳裂け女ですね。
5. Posted by しげと   2007年09月01日 10:07
赤ちゃんはかわいい。黒人の赤ちゃんもかわいいですね。
6. Posted by つぶあんこ   2007年09月01日 17:22
かわいいでちゅー

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments