2007年05月12日

眉山 7点(100点満点中)

三田村邦彦を探せ
公式サイト

『精霊流し』『解夏』に続き、さだまさし原作の同名小説を映画化。なのだが、原作を含め特に面白くもないこれらの作品が、何故作り続けられるのかは大いに謎だ。

東京でバリバリ働く主人公(松嶋菜々子)は、故郷の徳島に住む母(宮本信子)が入院したとの連絡を受けて帰郷。母が末期ガンである事を知った主人公の、母と顔も知らぬ父への追想と再確認が物語のメインとなる。

のだが、まず主人公の母親のキャラクターが、宮本信子の演技力で誤摩化されがちだが、実のところトンデモなく破綻している。

折り目正しい江戸っ子気質の女将さんの、他人に対する説教はそれは確かに正論ではあるが、自分が家庭のある男と不倫して子まで産んでいては説得力ゼロではないか。"愛する男"に家庭を裏切らせ、産んだ子に対しても"本当の事"を言わない、そんな不誠実な人間がどの口で言うのかと、呆れる他ない。

ICUから病室に移動する時に用意された車椅子を「他人に押されて移動するなんてイヤだ」と突っぱね、娘と介護士の肩に寄りかかって歩いていく場面など、自分の思い、自分の意地を押し通す事ばかりで、それによって周囲の人間が被る迷惑など気にもかけないワガママババアとしか映らず、一体どこに、誰からも好かれ信頼される魅力があるというのか。

こんな人物を、複雑な思いを抱いていた娘でさえ最終的には、"大好きな人"と誉めたたえる内容に、共感も感動も出来るわけがない。

娘の視点で母への思いや父への思いを描いているのはいいが、どの点をテーマとして伝えたいのかが不明瞭すぎ、バラバラのエピソードが特に繋がらない。

献体という、それだけで一つの物語が成立しそうな題材を、母親の真意や父親の正体を匂わせる程度のアイテムにしか使っていない割に、終盤ではまるでコレがメインだったかの様に大きな扱いとなり、最後まで何を描きたかったのかがよくわからないまま終わってしまう。

そもそも主人公と医者(大沢たかお)との恋愛にしても、母と同じ職業の人を好きになってしまったという意図はわかるが、その事が主人公の母へ対する思いに変化を与えたのか、などの描写が特にないため、物語の本筋には絡んでこないのだ。これでは単なる脇道でしかない。

久々に帰郷する序盤のシーンで、遠景の眉山を美しく見せ、後半ではガスがかかった不安定な風景で、同じ眉山を見せるなど、人物の心象や構図をわかりやすく隠喩する表現や、主人公と医者が並んで歩く場面を、斜め後ろ遠くからの長回しトラックショットで追い、台詞はハッキリ聞き取れるが表情はわからない様にして、カット尻に用意されているキスシーンのインパクトを強めたり、踊り見物に出かける場面で、主人公、母、医者の三者が並び歩く様を、画角も方向も日光も上記のカットとは全てが反対となる、同じく長回しのトラックショットで追って、物語上重要な意味を持つ、二つの歩く場面を対比的に見せるなど、犬童一心監督らしい、考えられている部分もあるのだが、肝心のストーリーがつまらなくては無意味だ。

クライマックスの阿波踊りシーンは、実際に大勢の踊り手を用意し、踊り行列の両サイドに立つ人物を切り返しで交互に追ったり、行列を横切る主人公をロングで捉えたりと、非常に大変な撮影を敢行している事はありありとわかるのだが、それが物語の面白さに貢献しているか、と言えばそんな事はなく、相変わらず全く興味の持てないドラマがダラダラ続くだけで、金と人と時間の無駄遣いにも程がある。

あまつさえダメ押しに、ブサイクな松嶋菜々子の汚い泣き顔を超アップで見せられてはドン引きだ。洋服の時は髪型でかろうじてゴマカシ気味であったが、和装時に髪をアップした状態では、前に突き出た頬骨が丸出しで、どう見てもホンコン兄さんです。本当にありがとうございました。

正直、松嶋菜々子と宮本信子、どっちを選ぶと聞かれたら、例えバアさんでも宮本信子の圧勝だろう。大女ジャンルにしても、立花里子の方がよっぽどいい。

いい加減に東宝なり電通なりは、松嶋菜々子を美人女優として扱う事の無謀さを諦めて、個性派女優としてふさわしい仕事を回すべきだろう。『大林素子物語』の主人公とか。

あるいはせめて最後くらいは、さだまさし自身が主題歌を歌って、無理矢理にでも感情を煽ってくれるなどしてくれれば、少しは救われたのかもしれないが、何故かレミオロメンと、最後までどうしようもない状態。

結局のところ、原作者が自分の実体験上の過ちを正当化したいだけではないのか、としか思えない、特に読む価値も観る価値もない作品にすぎない。無視して問題無し。


tsubuanco at 16:48│Comments(10)TrackBack(16)clip!映画 

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1. [映画]眉山  [ お父さん、すいませんしてるかねえ ]   2007年05月15日 13:02
松嶋菜々子ってなんで人気があるんでしょうか? ま、それを言い始めたら、なぜぼくが大地真央が好きなのか、という話をしなくてはならなくなりますが… 試写会に参加してきましたのでご報告。 あらすじを簡単に 東京の旅行代理店に勤める咲子(松嶋)の元に、徳島の母龍子(
2. 眉山  [ UkiUkiれいんぼーデイ ]   2007年05月16日 14:48
     江戸っ子ですから            「ひ」を「し」としか発音できません。 え〜っと、美智子皇后もご鑑賞されたという本作ですが 私は、久しぶりに吠えてしまいそうな映画でした。 リアリティーが なーい!  誰にも感情移入が できなーい...
3. 【劇場映画】 眉山  [ ナマケモノの穴 ]   2007年05月17日 20:31
≪ストーリー≫ 東京で働く咲子は、母の入院の知らせを受け、久しぶりに徳島に帰郷する。母子家庭で育った咲子は、気が強く何でも一人で決めてしまう母に寂しさを感じていた。咲子は医師、寺澤から母が献体を希望していることを知り、いらだちは募る。ある日、母の友人から...
4. 【2007-68】眉山−びざん−(BIZAN)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年05月17日 22:19
3 娘だから、聞けなかった。 母だから、言えなかった。 ふたつの恋が重なったとき、 娘は、 母の思いにたどり着く。 『あたし、お母さんがだ〜い好きよ。』
5. 映画「眉山 -びざん-」  [ 映画専用トラックバックセンター ]   2007年05月17日 23:25
映画「眉山 -びざん-」に関するトラックバックを募集しています。
6. 「眉山」情緒という言葉を思い出した  [ soramove ]   2007年05月19日 20:05
「眉山」★★★☆オススメ 松島菜々子、宮本信子主演 犬童一心 監督 どんな話しなのか予備知識ゼロで劇場へ。 東京でひとり働く主人公に 母親が入院したと知らせが届く、 故郷、徳島へ戻ると医者から余命3カ月と告げられる。 ストーリーは予測がつく、 ...
7. 眉山-びざん-  [ C'est Joli ]   2007年05月20日 00:12
4 眉山-びざん-’07:日本 ◆監督:犬童一心「タッチ」「メゾン・ド・ヒミコ」◆出演:松嶋菜々子、 大沢たかお、 宮本信子 、 円城寺あや、 山田辰夫 ◆STORY◆東京で働く咲子は、母の入院の知らせを受け、久しぶりに徳島に帰郷する。母子家庭で...
8. 映画「眉山-びざん-」  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2007年05月20日 00:56
さだまさしの小説「精霊流し」「解夏」に続く「眉山」の映画化、"故郷の山に向かいて言う事なし故郷の山は有り難きかな"、故郷の山は不思議と落ち着く・・・ 東京の旅行社に勤める河野咲子(松嶋菜々子)は、河野龍子(宮本信子)の入院の知らせを受けて...
9. 眉山 びざん  [ 週末映画! ]   2007年05月24日 23:36
期待値: 63%  さだまさし原作、犬童一心監督作品。 松嶋菜々子 、大沢たかお 、宮本信子 、山田
10. 『眉山 -びざん-』  [ アンディの日記 シネマ版 ]   2007年05月25日 01:09
感動度[:ハート:][:ハート:]           2007/05/12公開  (公式サイト) 泣き度[:悲しい:] 満足度[:星:][:星:]  【監督】犬童一心 【脚本】山室有紀子 【原作】さだまさし 『眉山 -BIZAN-』(幻冬舎刊) 【時間】120分 【出演】 松嶋菜々子/大...
11. 眉山 びざん(映画館)  [ ひるめし。 ]   2007年05月25日 14:37
母だから、言えなかった。娘だから、聞けなかった。
12. プロモーションビデオ?『眉山』  [ 水曜日のシネマ日記 ]   2007年05月26日 09:05
徳島を舞台に描かれた母と娘の物語です。
13. 眉山  [ シネクリシェ ]   2007年05月27日 10:17
 今月最大の期待作は、蜘蛛映画でも海賊映画でもなく、名匠犬童一心のこの新作を置いて他にはありません。そしてほぼ期待通りの出来栄えでした。  ストーリー自体はそれほどひねりはありませんが、犬童一心の手に
14. さまださし原作「眉山」観てきました。  [ よしなしごと ]   2007年06月14日 03:05
 僕の好きなさだまさしが原作の映画、眉山を観てきました。
15. 眉山 [監督:犬童一心]  [ 自主映画制作工房Stud!o Yunfat 映評のページ ]   2007年11月12日 23:29
【個人的評価 ■□□□□□】(6段階評価 ■□□□□□:最悪、■■■■■■:最高) 誰か言ってあげてください。 「松嶋さん、踊りの邪魔です。どいてください」・・・と。
16. 眉山−(映画:2008年59本目)−  [ デコ親父はいつも減量中 ]   2008年10月31日 23:02
監督:犬童一心 出演:松嶋菜々子、大沢たかお、円城寺あや、山田辰夫、永島敏行、夏八木勳、宮本信子 評価:77点 母と娘の静かな愛情を描いた美しい作品だった。 正直なところ押し寄せるほどの感動もなく、ひとり自室で涙する機会は私には訪れなかった。 それ....

この記事へのコメント

1. Posted by マラ3マニア   2007年05月14日 18:34
松嶋菜々子は美人です。好きです愛してます。人生やりなおせるなら松嶋菜々子とケーコンしたかった。と思った43の初夏。すまん。
2. Posted by つぶあんこ   2007年05月14日 18:42
がんばってください
3. Posted by ぽこぺん   2007年05月14日 18:59
立花瞳の方が好き。
映画を見る目は尊敬するが
女を見る目は大したことないな。
5. Posted by つぶあんこ   2007年05月14日 19:15
立花瞳は熟女ジャンルですから
6. Posted by もちもち   2007年05月15日 07:01
笑いました
松嶋菜々子は髪型で随分変わりますよね
さだ映画はどうしても退屈というイメージがあるので見にはいきません
すいませんでした
7. Posted by つぶあんこ   2007年05月15日 17:13
髪型に左右されないのが、本当の美形ですからね。夏目雅子の様に。
8. Posted by なぎさ   2007年05月16日 14:52
つぶあんこさん こんにちは!
仰る通り!のレビューです〜♪
松嶋菜々子って、じつはホンコン兄さんと系統は同じなんですねぇ〜。
爆笑してしまいました!
9. Posted by つぶあんこ   2007年05月16日 17:26
ハイ、目から上を隠すとソックリです。
12. Posted by 昔からそう思っていました   2007年05月23日 02:27
5 ホワイトアウトのころから、松島のヤバさに気づいてましたけど。
眉山ってメイク映画だと思っていました。
なんども映画館で予告編を見ていたのですが、予告編では映画の面白さが全く伝わってこなかったのです。そうですか、7点ですか。奈々子だけに7点なのでは?と邪推させていただきます。抗議ではありません。
13. Posted by つぶあんこ   2007年05月23日 17:25
メイク映画ッ!
原作は荒木飛呂彦ですか板垣恵介ですか?

確かに、予告編を観て面白そうとは全く思いませんでしたね。

今予告が流れまくってる『そのときは彼によろしく』なんかも同様ですが。

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