2007年05月15日

スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい 45点(100点満点中)

うれしいな さわーりたいー♪
公式サイト

ラスベガスを仕切るマフィアのボスから賞金首とされた、マジシャンのエース・イズラエルを巡って、腕自慢の殺し屋達が彼の住むホテルへ殺到。イズラエルを警護しなくてはいけないFBIも含めた、ホテルを舞台としたエース争奪戦が始まる…というお話。

クライムサスペンス映画『NARC』にて評価を受けた、ジョー・カーナハン監督の最新作なのだが、新しい方向性を目指したのか、本来志向していたカラーを押し出したのか知らないが、情熱が空回りした観客置いてけぼりの残念作に終わっている。

しっかり立てられた魅力的なキャラクターの、特定の建物内でのそれぞれの動向の絡みあいが綿密に計算されて群像劇を組み立てる、といった構成も何もない、行き当たりばったりで勢い優先の作りな割に、妙にウェットでダウナーな場面を挿入したり、テンポが悪くなってテンションが下がったりと、方向性ばかりが行き当たりばったりで面白さに繋がっていない。

何より、最初の銃撃戦が始まるのが尺の半分近く経ってからというのはあまりに遅すぎるだろう。その戦闘もまた、コマ切れでテンションが持続せず、どうにも入り込めない。

洗面所での鏡を使ったトリッキーな映像や、エレベーターを基点とした階層表現など、ところどころに面白さを感じる映像もあるが、肝心の銃撃戦は散漫で狙いの絞れていない、見どころとしては大いに喰い足りないものに終わっている。

一番印象的な銃撃シチュエーションが、終盤の駐車場での復讐シーンでは本末転倒ではないか。が、そのシーンは、中途半端にカメラを引いたルーズな画角で二人の掛け合いを延々と捉え、サスペンスと失笑の境界を曖昧にさせて空虚感を抱かせる、そんな狙いが見て取れ、映画の中では特段によく出来た場面となっているのが皮肉。

中盤のキチガイ空手キッドに用いた様なマンガ的演出よりも、下手にカメラを動かさず、上述の駐車場シーンの様に固定の長回しで事象を客観的に見せる方が、却ってシュールさが増して面白くなる事は、前半での、キチガイ三兄弟が別の三人組を急襲する場面などからも見て取れる。

このキチガイ亀田三兄弟にしても、ホテルに潜入するまでの段階では、その奇行がいちいち面白く期待させられたのに、侵入して以降は急激に失速し、盛り上がるべき乱戦シーンもまた、狙いを絞れていない散漫な映像には面白味もなく、完全な尻すぼみに終わってしまいガッカリだ。

この三兄弟に象徴される様に、全てが思わせぶりに始まって期待だけさせて盛り下がっていく一方に終わり、観終わった後は悪い意味で途方に暮れてしまう

そもそも、本当に一流のプロなら、競合相手が他にいる事も認識している筈が、そうした備えは特になく、あまつさえ予期せぬ死体を発見してビビりまくってその場を離れる事もせずモタモタして案の定銃撃戦に巻き込まれて作戦台無し、など、どこが凄腕なのかと小一時間問いつめたくなる連中ばかりで、ちっともワクワクしないのは致命的だ。

シーン尻の台詞に少し被せて次のシーンを始め、頭にその台詞に掛かる要素を提示する事で、場所も人物も全く関係ないはずのシーンがテンポよく繋がっている様に見せる手法は、もはや定番となっており特段の特徴とはならないだろう。

また、日本で本作を鑑賞する上で最もネックとなるのは、菊池浩司による日本語字幕の質の低さにつきる。

人物設定や状況説明、および各キャラクターの個性を活かした台詞の掛け合い、といった、本作を楽しむために最低限必要なダイアローグが、氏の拙い仕事のせいで全て台無しにされてしまっているのだ。

本作を観て、「人物を覚えにくい」「話がわかりにくい」といった感想を抱いたなら、その原因は字幕の著しい情報量不足と無用な意訳、誤訳によるものと考えて間違いない。

女殺し屋役として出演しているアリシア・キーズは、娼婦に変装する殺し屋というエロエロな役を、そのエロエロなビジュアルを活かして好演しており、歌手が本業ながら今後も映画に出てほしいものだと思わせただけに、作品の中途半端さが何とも勿体ないかぎり。

タランティーノあたりのスタイリッシュなバイオレンス映画を期待するとトンデモなくガッカリする本作、ではどう楽しむのか、と聞かれても答えに困ってしまう、やはり中途半端の一言につきる。余程のジャンル映画好きでもない限り、特に観ておく必要もないだろう。自己責任で。



tsubuanco at 17:11│Comments(2)TrackBack(11)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by nash   2008年04月06日 12:41
>菊池浩司による日本語字幕の質の低さ

同感。これは酷い、酷すぎる。途中で見るのやめた。
2. Posted by つぶあんこ   2008年04月07日 17:42
戸田奈津子ばかりが言われてますけど、他にもヒドい字幕はあるんですよね。

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