2007年05月17日

恋愛睡眠のすすめ 38点(100点満点中)

練れば練るほど色が変わって、こうやってつけて
公式サイト

『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー監督の最新作。『エターナル〜』は記憶の断片によって恋愛を綴った作品だったが、今回は現実と夢と妄想の区別がつかない青年の独り善がりな恋愛(と呼んでいいものか)を描いている。

ダンボールや卵パックで作られたTVスタジオらしき場所で、料理番組風に何やら科学実験めいた事を始めるファーストシーンは、その背景や主人公の言動、映像効果によって、当然これは現実ではなく、主人公が脳内で見ているビジョンである、とわかりやすく伝えており、今後の展開に興味を持たせる事には成功している。

そうして展開される主人公のドラマは、客観視点で主人公を追う現実と、主人公の主観で見せられる現実、同じく主人公視点による夢や妄想が、最初はどれがどの状態かがわかる様に表現されていながら、徐々にその区別が混乱していき、主人公の苦悩、迷いとシンクロする、そうした狙いは効果的に構成されているし、あえて手作り感を強調した背景やキャラクターと、コマ撮りやオプチカル合成などの、これまた意図的に手作り感を強調した特撮を用い、それとは逆に先鋭的な演出やカット割りで視覚化された夢や妄想の映像は、その手法や表現に限定すれば面白く興味深いものではある。

前衛的、先鋭的な映像の見た目のインパクトと言えば、日本なら例えば実相寺昭雄や中島哲也などが挙げられるが、彼らの作品は、その独自の表現がストーリーの面白さにガッチリ絡み、上辺のインパクトだけに終わっていないからこそ、面白いものとして評価されているのだ。それがない本作は結局のところ、表現としてのインパクトのみで肝心の中身が伴っていない、ダメなフランス映画にありがちな、上滑りなものに終わっている。

主人公のキャラクターは、演じるガエル・ガルシア・ベルナルのビジュアルで誤摩化されてがちだが、その実は仕事も人づきあいも何もかもがダメの極地でしかも頭がオカシイと、共感も応援も出来るわけがない何の魅力もない男に過ぎず、そんな男が自分の中だけで通じる理屈で勝手に悩んだり勝手に自己解決したりして、そのせいで余計に事態が悪い方へ行ったところで「アホか」と思うだけである。

もちろんそんな突き放した嫌悪感は作り手の狙いではないだろう。現実に対して後ろ向きで不器用なキャラクターの中に、観客自身に通じるものを見出して感情移入させ、主人公の動向に興味を持たせようというのが、本来の狙いだろうが、それは完全に失敗していると言わざるを得ない。

先述の通り、視覚的楽しみは充分に得られるが、PVや短編映画ならともかく長編ストーリー映画では、それだけに終わっては勿体なさ過ぎる。上辺のオシャレ感だけで良いものを見た気になってしまえる人なら、それでも文句はないのだろうが。

出演者のファンや、特撮映像好きなら一応は要チェックだろうが、内容には期待しない方がガッカリしないで済むだろう。自己責任で。


tsubuanco at 17:02│Comments(2)TrackBack(2)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 名無しさん   2007年09月26日 08:51
イケメン=夢見る男
キモ男=ストーカー
2. Posted by つぶあんこ   2007年09月26日 17:45
無口なイケメン → クールでカッコいい!

無口なブサメン → 暗い!キモい!

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