2007年06月05日

そのときは彼によろしく 38点(100点満点中)

そんなときそんな日は、ふるえるこの手で押さえても
公式サイト

『いま、会いにいきます』『ただ、君を愛してる』と同じく、市川拓司の小説を映画化。これまでTBSのTVドラマにて長澤まさみや綾瀬はるかなどアイドル主演作品を担当し、今回が初劇場映画となる平川雄一朗が監督を務める。

主演は山田孝之と長澤まさみと、同氏が手がけたドラマ『白夜行』『セーラー服と機関銃』のそれぞれ主演俳優。だからこその選任なのだろう。

ストーリーは一部人物や展開が省略されているが、ラスト以外の大筋はほぼ原作通りの本作、相変わらず"ファンタジー"なる言葉を逃げ口上にした、考証も物語構成も作り手にとってのみ都合の良すぎる、適当にも程があるもので、原作の段階からすでにストーリー面ではマトモな作品として評価するに値しない

3人のメイン人物が出会ったり離れたりの推移が、単に作り手の都合にしか過ぎず、病気や事故で昏睡したり死んだりする人間が続出する展開もまた、話を進めるための都合でしかなく、物語としての説得力や納得の行く必然性が皆無である。

メインとなる病気をファンタジックなものとして納得させるには、それ以外の事象や人間心理を、ことごとくリアリティにこだわって徹底描写し、その世界をリアルなものとして受け入れさせる事をしなければ、大きなウソが単なるウソとしか見えないのだ。

佑司の昏睡を花梨が覚まし、花梨の昏睡を父が覚ます、玉突き的な繰り返しギミックによる解決法はいいとして、それなら犬や母の死もそうした流れに関わらせるべきだし、単純に台詞だけで説明してしまうのも勿体ない。

病気の設定に考証すらない、ベタでファンタジックなラブストーリーならば、もっとベタにファンタジックに、"あの世"でのやりとりを実写化してしまうくらいの事をして、よりベタな"泣かせ"を強調してくれてもよかったのではないか。

三角関係のキャラ配置を用いながら、佑司の扱いがぞんざいに過ぎる。まず三角関係の解消として、どの様に自分の中で心を決めて諦めたのか、新しい相手は逃避ではなく本当に想っているのか、などの描写が全く無く、ただ上辺を説明するのみ。家族の問題もまた、大きなショックを与えるトラブルを出しながら、それが物語の流れに全く関わっていない。誕生会の場面でも、親がいない事は自分も同じなのに、花梨の事ばかり気遣っている、という描写がありながら、その事も特に作用しない

主人公とヒロインの間を繋ぐ、本来なら重要なキャラクターである筈が、いてもいなくても構わない存在に堕してしまっているのは、脚本の稚拙さ故に他ならない。

一方の映像、演出面では、鮮やかな景色からカメラが後退し、カーテンをくぐって病室内まで入り込んで3人を見せた後、水槽にクローズアップして水草をくぐって過去の情景へ移行するという、3つの世界を幕で仕切ってワンショットでその間を移動し、作品の世界観の有りようを伝えようとしているプロローグの構成は面白いし、主人公のショップの、一面の水槽に照明があたり、中の水草が映し出される情景を何度も見せておいた上で、バス内部にて蔦草が窓にシルエットで浮かび上がる様を終盤に一瞬だけ見せる事で、ショップ一階に泊まる事にヒロインが固執した明確な理由を伝えるなど、ところどころにハッとさせられる、工夫を感じられる部分もある。

冬の低い陽日を黄色光で表現し、屋外でも常に薄暗く、影を強調した照明による映像は、作品の持つファンタジックさと現実性を乖離させない意図があるのだろう。

また、回想シーンとして度々挿入される、主人公達3人の子供時代は、演じる子役達が見た目、演技ともに非常に自然で優れており、むしろこちらメインで話を作った方が面白いのでは、と思わせるほどだ。

裏山の秘密基地での秘密集会、誕生日会、などなど、誰にでも思い当たる子供時代の思い出には共感を覚え、ために子供達に簡単に感情移入してしまい、そこで繰り広げられるベタな感動ドラマに、アッサリと感動させられてしまう事となる。

ここまではいいとして、回想場面の直後に似たシチュエーションを現代で行わせる構成が多用されているが、回想場面の感動が大きければ大きい程、リアリティの薄い現代パートで同じ事をしても、逆効果にしかならないのだ。これは明らかに失敗。

それとは別に、最初の再会と二度目の再会を全く同シチュエーションで行わせる演出は、これは予想が簡単につきすぎてベタにも程があるが、王道的な演出としては不可欠であり、オチとしては充分だろう。そもそもの考証が何も無い作品において、ここだけにリアルなツッコミをするのはあまりに恣意的というものだ。

どうしようもない原作と脚本の割には、出演者陣の頑張りによって、それなりには観ていられる作品ではあるが、出演者のファンでもない限り特段に鑑賞の必要も無いだろう。自己責任で。

塚本高史のファンはガッカリする事受け合い。


蛇足:
黄川田将也と北川景子がまた共演、だが、同じシーンには登場しないので、現場で顔を合わせる機会はなかったか。



tsubuanco at 17:27│Comments(4)TrackBack(20)clip!映画 

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http://www.sonokare.com/ (そのときは彼によろしく 公
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日記:2008年6月某日 映画「そのときは彼によろしく」を見る. 2007年.監督:平川雄一朗. 出演: 長澤まさみ(滝川花梨),山田孝之(遠山智史),塚本高史(五十嵐佑司),国仲涼子(柴田美咲),北

この記事へのコメント

1. Posted by Ageha   2007年06月04日 21:31
>塚本高史のファンはガッカリする

・・・でしょうね。
長澤まさみファンなら
出てるだけで満足かもしれませんが。

50年かかっても芽がでるかどうか
わからない種がありましたね。
あのショットで終わってもよかったかも。


あまりにも
智史に都合のいいストーリー展開
だったような気がしてちょっと
残念でした・・・。
2. Posted by つぶあんこ   2007年06月05日 17:23
回想シーンで小日向文世の頭がフサフサだったのがツボでした。
3. Posted by ほんやら堂   2008年06月23日 21:32
この映画,僕も子役で泣きました.
本編の方は,ラストで吃驚したまんま,終わってしまいました.
4. Posted by 清原まさみ   2012年12月15日 23:51
完璧美少女まさみのPV映画。

ストーリーは無理がありすぎるが子役の少女達の演技には感動。

長澤まさみファンなら大満足に値する。一番好きな映画になるかも

平川監督はセーラー服とで助監督。

おそらくそこで長澤まさみの清純さ、可憐さ、美しさを目の当たりにし、表現し映像に残したかったんだと思う

なんどもいうが長澤まさみの綺麗さはモテキ以上に表現れている。

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