2007年05月29日

あしたの私のつくり方 32点(100点満点中)

あたしのあしたのつかい方
公式サイト

成海璃子主演、無意味な自意識と連帯意識に振り回される、少女期に限らない女性特有のありがちな内面を、主人公を取り巻く環境や人物との関わりによって描いた青春映画。監督は少女を主人公とした作品を得意とする市川準。

真戸香による小説が原作とされているが、これは映画化企画に合わせて書かれたノベライズと呼んだ方がふさわしい位置づけのもので、これと比較してどうこう述べる事は、映画の評価とはあまり関係ない。

題材はNHKの『中学生日記』あたりでよく採り上げられていそうな、クラス内で自分のポジションを確保するためのテクニックを心得て、表面的には無難に過ごしているはずの主人公が、本来の自分、現状の自分、こうありたいと願う自分、なりたくない自分、などの狭間で葛藤し逃避する、自縄自縛の悩みを描いたものだが、その内容は悪い意味で中学生日記レベルと大差ない、特に目新しい発見や切り口が見つかるものではない。

また、十代前半の少年少女がメインとなる映画において、成海璃子の演技力が突出しすぎているため、相対的にも他の演者達の演技が極めて拙く見えてしまい、結果として成海璃子の存在が浮いてしまって役柄と合わなくなり世界を壊してしまっている。これはキャスティングや演出の問題点だ。

特に、主人公とほぼ同格に重要な存在である前田敦子(AKB48)の拙さは致命的で、スクールカーストの頂点からドン底へ突き落とされ、そこから一縷の希望を見出して這い上がろうとするもギャップに苦しむ、という極めて難しい役の、その動作や表情から推し量られるべき感情や心理が全く伝わって来ず、よって物語の展開を素直に楽しむ事を阻害してしまっている。

そもそも、どう見てもクラスで7番目程度のビジュアルでしかない彼女が、高嶺の花的な美少女、という設定に問題が大ありで説得力の欠片も感じられないのは、これまたキャスティングの根本的な問題だ。AKB48自体が大人の事情のカタマリのみで形作られた存在であり、いろいろと含むところがある事はわかるが、それならそれで設定を変えて見た目と合う様にすべきだろう。

クラスのリーダーだった最盛期の小六時代を演じる彼女は、本当にクラスにその位置づけでいそうなビジュアルを見せつけ、納得の行く導入だっただけに、余計に後半に語られる設定に違和感が残るのだ。

その小六役がハマっていた前田敦子とは正反対に、倒錯した小学生プレイをしているとしか見えない成海璃子は序盤の映像に違和感が強く、このストーリーとキャラ設定なら、配役は逆の方が説得力があったのではないかと思わされる。

映像的にも、繊細な映像を持ち味としているはずの市川準ながら、入浴の映像に合わせてメールのやりとりを進めるシーンの、二分割画面のぎこちない使い方であったり、エンディングのマスゲームを、成海璃子のアップばかりを追って全く全体像を見せないまま終わらせてしまう、"集団の中の自分"という作品テーマすら放棄したとしか思えない惨状など、出来の悪い映像が気になって、どうにも評価し難い。

背中にもたれあいながら携帯をいじるカットの、画面構成的なバランスの良さと作品テーマの内包を両立させた画面や、卒業式における図書室内での二人のやりとりを、手前に成海璃子、奥に前田敦子を配置し、窓からの自然光を活かした照明と前後の焦点操作によって、ただ座って長々と話しているだけのシーンに間を持たせるなど、よく出来ていると感じられるところもあるだけに残念だ。

本作、お目当てのアイドルを大画面で鑑賞するためにも、成海璃子や前田敦子のファンなら要チェックだが、それ以外は特段に鑑賞の必要は無いだろう。自己責任で。


蛇足:
父・石原良純、母・石原真理子、長女・成海璃子の眉毛ファミリーは、見た瞬間に爆笑。こんなところだけ好キャスティングでどうするんだ。


tsubuanco at 15:58│Comments(2)TrackBack(4)clip!映画 

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3 あしたの私に会いに行きませんか。 それは切ない願いを込めた、 みんなに愛されるための物語。 大人になった少女たちに、見てほしい物語があります。 あの頃のわたしたちは、話すのが下手だった。 だから真実を伝えられた。
2. 『あしたの私のつくり方』  [ アンディの日記 シネマ版 ]   2007年06月26日 13:07
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2007年 日本 97分 監督 市川準 原作 真戸香「あしたの私のつくり方」 脚本 細谷まどか 撮影 鈴木一博 音楽 佐々木友理 出演 成海璃子  前田敦子  高岡蒼甫    田口トモロヲ  石原真理子  石原良純

この記事へのコメント

1. Posted by よゆぽん   2007年06月12日 18:05
>眉毛ファミリー

おもわず吹いてしまいました。
座布団三枚です(笑)
2. Posted by つぶあんこ   2007年06月13日 17:20
単に石原で揃えただけではない、という事で。

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