2007年06月11日

Watch with Me 卒業写真 5点(100点満点中)

猟奇犯罪で逮捕されると卒アルを晒される刑罰
公式サイト

末期ガンの夫(津田寛治)とそれを看取る妻(羽田美智子)を中心に、夫の過去の思い出と妻の苦悩の昇華を描いた映画。

また例によって難病恋愛映画である。この題材は怪獣映画やゾンビ映画らと同等に、一つのジャンルとして出来上がってしまっているが、それらのジャンル映画では、ただそれが登場するだけでは面白くも何ともなく、題材はそれを扱いつつも、人間をリアルに描写してドラマを展開し、魅力的なキャラクターを創出して興味を引く、そういった工夫を作品ごとに独自の手法、方向性で行った一握りの作品だけが、数多の同ジャンル作品の中で傑作、名作として評価されているのだから、本作にしても同様に、ただカップルの片方が病気で死ぬだけの話を見せられても、それだけでは感動するどころか呆れ果てるだけにしかならない。

本作に見られるその種の"工夫"は、タイトルにもある通り"写真"が題材の一つとして使われている事と、夫婦間の愛だけではなく、過去の夫の恋愛を絡めて、時間を超えた三角関係を展開している事くらいだが、それらを魅力的なドラマとして構成、展開出来ていたかと言えば、やはり厳しい。

まず前提として、メイン二人の健康な時の夫婦としての暮らしが全く無く、いきなり闘病介護の段階から始められるため、劇中で見せられる、妻と夫の、それぞれに対する思いや態度といったものが、前からこうだったのか、それとも病気がきっかけで変わったのか、などもわからず、よって、二人の関係のドラマに対し、何ら感情を動かされる事が無いのだ。

監督は「リアルな死を描きたかった」らしいが、それにはまず、「リアルな生」を描かなければいけない事は当然なはずなのだが。

恋の思い出と写真を絡めているが、その彼女が写真というものに対し、どの様な思いを抱いていたのか、などの描写が全く無く、ただ単に、好きな女がカメラを持っていたというだけで、カメラが無くとも恋物語は成立してしまう

カメラ、写真に命懸けの執着を持つに至る、説得力のある展開、描写が無い事には、大人げないアホの暴走にしか見えない。これでは妻がキレるのも無理はない。もちろんそう思わせる狙いではないはずだ。

そんな風に、ストーリーにもキャラクターにも魅力が無く、少しも興味を持てないために、ドラマはひたすらに退屈で、人物の言動にはいちいちイライラするだけという、観ていて全く楽しくない時間が過ぎていくだけである。

また、映像的な面でも、特にこれといって見どころとなる様なものもなく、ロケ地である久留米の景色を印象的に切り取ったものもなく、むしろ悪い方向に気にかかる点が多い始末。

例えば中盤の河原での場面において、唐突に手持ちカメラによる画面のブレが目立つカットがあり、しばらく見辛さをガマンしていると移動し始めた二人に合わせてカメラも後退する、のだが、これは、そのカットの最後にカメラを後退させるためだけにFIXではなく手持ちにした、というだけの消極的理由によるもので、意図するところではないブレを延々見させられた事自体には、映像的な意味も狙いも全くなく、単にブレて見辛いだけである。このカットが、映画全体のカット割りとカメラワークの稚拙さを顕著に物語っている。

そんな、内容はつまらない、映像もつまらないと、どうしようもない中で唯一、光を放って目を引くのは、過去の回想映像に登場するヒロイン、高木古都の存在感に尽きる。

約30年前の場面に登場する彼女だが、田舎の中学レベルでは間違いなく全校一の美少女として、男子生徒の間で不可侵条約が締結される事すら想像させる、現代風のアイドルにはない、名前通りに古風な魅力を持った少女である。

決して洗練されておらず垢抜けない、しかも画面的には太めに見えるがリアルでは丁度いい抱き心地であろう体型がエロすぎる、こんな美少女が自室の窓から侵入してくるなど、「それなんて『BOYS BE…』?」 と聞きたくなる状況、しかも何度も服装を替えて入ってくるカットを繰り返すと、ここだけは"わかってる"映像、演出が見られるのが面白い。

そんなわけで、高木古都に興味があれば要チェク、だが、そうでないなら鑑賞の必要は全く無い。自己責任で。


余談:
予告を観た限りでは、羽田美智子の少女時代を高木古都が演じるもんだとばかり思っていただけに、そうでなかったのが本編を観ての一番の驚きどころである。そりゃあ高木古都の圧勝に決まってる。


tsubuanco at 16:08│Comments(4)TrackBack(3)clip!映画 

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1. 【2007-81】Watch with Me 〜卒業写真〜  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年06月13日 22:14
2 ──よみがえる あの夏の足跡 大切な人に残された わずかな時間── ──記憶をたどる故郷での刻 大切な人との 大切な思いで── ずっと一緒に居れたら、と願った。
2. [只野日記]5点の酷評  [ 如何にしてチビたんを映画館に連れて行くかをかく語りき ]   2007年06月15日 06:11
Watch with Me 卒業写真 5点(100点満点中)@(´-`).。oO(蚊取り線香は蚊を取らないよ) わたしは彼女の日記を理解にいたるほどに読んでないし、この映画の存在すら知らなかった*1。ゆえに。はてブではなく日記に。また、5点という酷評の情熱は、世の中に必要なものだ。
3. Wacth with Me 卒業写真  [ I N T R O ]   2007年06月18日 11:35
見守る人と見守られる人 / Text By 百恵紳之助 ガンにおかされ余命いくばくもない元報道カメラマンの主人公。そんな設定を聞いただけで、ありきたりなお涙頂戴モノの闘病映画なのかなというこちらの浅はかな先入観をこの映画は良い意味で裏切ってくれた。...

この記事へのコメント

1. Posted by たっちゃんの妻   2007年06月14日 20:15
観る人によって、それぞれに受取り方が大きく変わる映画だろうな〜との思いはありましたが、とても新鮮な評価でびっくりしました!!
私自身がこの映画とシンクロするような日々を送っていたので、感情移入するばかりで冷静な観方ができていなかった事を再発見しました。だって、3回も観てるにも関わらず、「手持ちカメラのブレ」にもまったく気づいていなかった位ですから。
今度は、ぜひ、冷静に見てみたいな〜って思います。
2. Posted by つぶあんこ   2007年06月15日 15:41
それは映画に感動したと言うより、ご自身の体験を思い出された事で感情を動かされたのではないでしょうか。作品そのものの出来とは切り離して考えるべきと思いますが。

ちなみに、自分も近親者をガンでなくした経験がありますが、だからと言って、似た事例を扱っただけの出来の悪い作品を観てどうこう思う事はありません。

まず作品としてしっかり作られている事が前提にあって、それだけでも感動出来る上に、更に自身の体験にも重なる部分があって共感し、余計に感動が大きくなってしまう、などはありますが、何より作品の出来が良くない事にはあり得ない事です。

この映画も、自分に置き換えるに足るだけの出来では全くありませんでした。
3. Posted by うぐ   2007年06月22日 07:03
私も回想シーンのヒロイン以外、心に残るものがあまりなかったと思ったクチですが、5点とはいやはやキビシイ。
昭和50年代の美少女といったら、まさにああいう感じでした。中肉中背で、カチューシャにマキシのフレアスカート。彼女のおかげで、回想シーンには懐かしさを感じました。
4. Posted by つぶあんこ   2007年06月22日 17:49
主人公の部屋の本棚に『あばしり一家』『ブッダ』『がきデカ』のコミックを見つけて懐かしさを感じました。

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