2007年06月10日

フライ・ダディ 22点(100点満点中)07-160

ボクシングに負けると電気を消す
公式サイト

金城一紀の小説『フライ,ダディ,フライ』を韓国で映画化、というよりも、小説より先に日本版映画の脚本が同氏によって書かれていた事を考えると、岡田准一・堤真一主演の日本映画『フライ,ダディ,フライ』の韓国版リメイクとした方が正確か。

時期が夏休みから冬休みへ変えられているなど、端々での改変はあるもの、ほぼ日本版と同じに展開される本作だが、既に日本版を観ているならば、出演者のファンでもない限り特に観る必要もない凡作に終わっている。

まず、イ・ジュンギ演じる少年において、日本版では在日朝鮮人であるという設定が、キャラクター設定の根本に特異性を与え、彼の過去のトラウマをより意味のあるものとし、ドラマ内での言動の根源的な指針となっていたものが、普通に韓国に住む韓国人となることで、そうした一切が欠落してしまっている。

その上で、それに変わるだけの新しいキャラクター設定が与えられているどころか、却って内面や背景の描写は弱まっており、よってビジュアル以外での魅力を何ら持たされていないのだ。

これは彼の仲間達も同様で、日本版では卑怯なくらい個性的な俳優を使ってキャラクターを立たせていたが、本作での彼らはただいるだけに過ぎない。裏でいろいろと動いていた事を、日本版ではドラマ内に面白く組み込んでいたが、本作では後から台詞で説明するばかりである。ダンスが上手い事も、なんら作中に活かせていないもので無意味だ。

一方、主人公である中年男は、外見的には堤真一より"普通"感が強いため、"使用前・使用後"の肉体を強烈なギャップとして見せて観客を驚かせる事には成功しているが、これまた肝心の内面描写がどうにも散漫で伝わり辛く、外見だけではない、内的な変化の面白さを見せる事には失敗している。

こうした描写の弱さは、本筋の大半を占めるべき特訓シーンにも同様であり、まず与えられたメニューに対し、最初はヘロヘロだったのに徐々に馴染んでいく様や、そのメニューがどういった意味を持ってくるのか、といった描写がほとんどんなく、ただ苦しんでいるだけでは進歩したかどうかすらわからない

その特訓が結実するはずのラストバトルでも、訓練で身に付けた技術や身体能力を活かした、とする描写がなく、当初はただただボコボコにやられるばかりの描写が無駄に長くウンザリし、逆転するのは怒ってキレたからで訓練が実を結んだとは感じられない。

心技体という言葉の通り、特訓で肉体と技術を鍛え、それにまつわる人間関係で心を磨く、そうした描写がしっかりとなされた上で、最後の勝負では実践に戸惑いながらも成果がいちいち確認される様に戦った上で勝利する、風にしなければ、物語として流れも何もあったものではない。

小説や日本版映画において、どこが面白いポイントなのかを何も考えず、ただ大筋を追っただけで脚本を書いたとしか思えないストーリー構成やキャラクター描写は、どうにも評価し難いものだ。

対決前の、登場人物的にも観客的にもちょっとした息抜きとなる遊園地の場面にも、その問題点は如実に現われており、"強いキャラ"であったはずが実は絶叫マシンが恐かったというギャップの面白さを的確に面白く見せるべく、嬉しがっている仲間との差異をハッキリと描写し、その上で、前のシーンでカッコ良く言った「恐怖の先にあるもの、知りたくないか?」の台詞を、立場が逆転してバカにされた風に言われる、そうした面白さが全く出ていない、ただストーリーにあるものを流しただけでしかない描写には呆れ返る。

そうして何もかもが適当に過ぎるため、タイトルに込められている、主人公の本来の家族だけではないもうひとつの擬似家族とも言うべき信頼関係が築き上げられた、という結末には全く至らず、なぜ父と呼ぶのか、全く説得力がなく、ただそう言う事になっているから言っただけとしか見えないのだ。

そして映像的にも、日本版ではタイトルを象徴するかの様に、青空、空間、高低差といった要素を画面内に活かし、映画的な映像をそこかしこに配置して見どころとしていたが、本作ではそういった考慮もなく、テレビドラマ然とした面白味のない映像が続くばかりである。

とは言え、子供のために体をはって頑張ろうとする中年男の姿には、ただそれだけで感動させるものがある事は事実で、だからこそ、それをもっと効果的に活かすだけの配慮が必要だったのだ。元は面白いだけに勿体ない。嫁も美人すぎるのが勿体ない。

内容に興味があるなら日本版の方が楽しめるだろう。だが日本版も、程度の低い政治批判要素には失笑する他ないのだが、そこには眼を瞑って何とか。



tsubuanco at 17:17│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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1. 【2007-79】フライ・ダディ(FLY, DADDY, FLY)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年06月13日 22:15
4 大切なものを守りたいんだろ?
2. フライ・ダディ  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2007年10月24日 12:46
【FLY, DADDY, FLY】2007/04/21公開 頑張るおとうさんはかっこいい☆

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