2007年05月25日

アパートメント 25点(100点満点中)

ヒキコモリの起源は日本
公式サイト

『友引忌』『ボイス』など、韓国でホラー映画を作り続けているアン・ビョンギ監督の最新作。主人公が住むマンションの向かいに見える団地の一棟で、毎晩同じ時間に停電が起こり人が死んでいく、謎の呪いに主人公が巻き込まれていくストーリー。

この監督、これまでの作品も、どうにも評価し難いダメホラーの連続であったが、今回も同様、あらゆる面で日本ホラーの劣化コピーでしかない上に、その劣化ぶりは尋常ではない。

ホラー関連の描写は、例によって中田秀夫や清水崇のそれを模倣しようとしたが、そもそもの映像センスが欠如しているため失敗した、としか見れないレベルのもの。

どこからどう撮ってどう見せれば、最も観客を驚かせられるか、怖がらせられるか、を全く考慮していない、狙いの散漫な映像の連続で、どうにも楽しみきれない。シチュエーション自体はそれなりのものを揃えているだけに(パクリだが)、尚更に勿体なさが気になるのだ。

笛木優子が電車に撥ねられるシーンなど、撥ねられる瞬間に中途半端に引いた画角でスローにしてしまうため、迫力も驚きも無常感もなく、あまつさえ合成のアラまで目についてしまいどうしようもない。このセンスのなさは異常

ストーリー的にも散々で、群衆の中の孤独をメインファクターとしている狙いはそれなりに興味深く、描かれる悲劇には少し同情的な感情が起こりもするが、配置されるキャラクターと謎のバラ撒きと収束が、ツッコミすら放棄したくなる適当ぶりなせいで台無しである。

冒頭で重要そうに展開する、主人公の職業絡みの設定は、結局本筋には何の関係もないままに終わるし、同じく序盤に思わせぶりに登場する笛木優子も、結局その場限りの存在で、後の展開には何の関係もない

キューブに刻まれた数字が、呪いの法則のヒントになるが、そもそもキューブに刻まれている必然性は何もなく、しかも法則と言うより見たそのまんま過ぎて、せめて、主人公がボードに書いた、部屋配置を表すマス目とキューブのブロック配置がシンクロする、などのつながりを持たせない事には、謎でも何でもない。そもそも、キューブを一回でも捻ってしまえば訳が分からなくなってしまうではないか。

孤独な人間に共感する、という着想はいいにしても、障害や孤児なせいで外に出られないのと、単なるダメ人間のヒキコモリとは全く性質が違うし、主人公が感じている孤独にしてもそうだろう。何から何までアバウトすぎる。

主人公が見ていた光景が、実は現在のものではなかった、という仕掛けはいいとして、主人公も誰も見ていない、観客の客観視点による場面にも現在ではないものが混ざっており、これは、その場面を現在のものと混同させる様にその時点で見せる必然性が作り手の都合にしかない、明らかにアンフェアなやり口である。

そうして、現在と過去の時間の流れが、作品世界内でどの程度まで混濁していたのかが、あまりにも不明瞭に過ぎるため、停電は実際に起こっていたのではなく、主人公だけが感じていたのか? そもそも毎日停電してたら住民がもっと騒ぐのでは? でもそうするとエレベーター停止に少女や刑事が巻き込まれたのはどういう理屈だ? と、どこまでも辻褄が合わない状態になってしまう。

だから、終盤で謎が明かされた際にも、「ああ、そういう事だったか」という納得や驚きより、「じゃあ何でアソコであんな場面を見せたんだよ、アレは誰の視点だよ」との煮え切らなさの方が強くなるのだ。この不快感はもちろん作り手が意図しているそれではあるまい。

ロジックや構成を練りに練ってストーリーと謎解きを構築しているパクリ元の『リング』や『呪怨』の足元にすら及ばない、何もか考えずに左足で書いたとしか思えない脚本は、全く評価に値するものではない。

だいたい、一目見て「この子、幽霊みたいな顔だなあ」と思った人がそのまんま「実は幽霊でした」と明かされて、一体どうしろと言うのか、あまりにも程度が低すぎる。

表現はパクリ、ストーリーは穴だらけ、少しも恐くない、と、例によって低質な韓国ホラー映画の典型に過ぎない本作、ホラーなら何でもいいからとりあえずチェックする、というレベルのマニア以外は、特段に鑑賞の必要なし。

日本公開版では、最初と最後によくわからないダサダサのビジュアル系バンドが喋ったり歌ったりする映像が追加されているが、これが本編と何の関係もない上に何の魅力も感じられないもので、つまらない映画を観た挙句にこんなのまで見させられて一体誰が得すると言うのか。ウンザリする。


tsubuanco at 15:30│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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