2007年06月16日

舞妓Haaaan!!! 72点(100点満点中)

舞妓はんだよ全員集合!
公式サイト

脚本:宮藤官九郎、主演:阿部サダヲによる、京都の舞妓を題材としたコメディ映画。監督はこれが『花田少年史』に続いて二作目の劇場映画となる水田伸生。

京都への修学旅行がきっかけで舞妓属性に目覚め、舞妓と野球拳をする夢を抱く主人公、主人公に捨てられた恋人・富士子(柴咲コウ)、主人公のライバル的存在となるプロ野球選手(堤真一)、主人公お気に入りの舞妓・駒子(小出早織)の4人をメインに、仕事、花街、恋愛、家族と、様々なエピソードが絡み合う人情コメディが展開される。

これまで舞台にテレビに映画にと、インパクトある脇役として密かに人気のあった俳優・阿部サダヲの、そのアクの強いキャラクターと演技を楽しめるかどうか、が、まず本作を楽しめるかどうかのキモとなる。

これは「好きとか嫌いとかの問題」だが、合わない人は普通、この映画を観ようと最初から思わないだろうから、その点は容易にクリアー出来る筈だ。

監督による演出や、共演者との相性もあるだろうが、台詞の掛け合いで笑わせるにしても、動きや表情の面白さで笑わせるにしても、その呼吸と間はあまりに的確であり、喜劇俳優としてのセンスと能力の高さを改めて再認識出来る事しきりだ。

京野ことみ演じる舞妓とのファーストコンタクト場面において、「ボンボンボンボン…」の言い方だけで感情を表現し、笑わせながらストーリーを進めキャラクターを認識させる、表現力の確かさには感心させられる。(逆に、ここまでで面白く感じられなければ、残念ながらこの映画に全く合っていないという事だろう)駒子が深刻な話を独白している後ろで、ファンと握手したり写真を撮っている長回しなど、彼の持ち味が最大限に発揮された笑いどころとして白眉だ。

彼に限らず、出演者が総じて魅力と実力を備えた俳優陣で固められている事も、本作の面白さに安定感を与える大きな要因だろう。花街のみならず"京都人"として登場する人物には、ほとんどに関西出身の俳優をキャスティングして、この種の映画にありがちな"違和感ある関西弁"ではない自然な会話を行わせ、そこで東京人である主人公に"インチキな京ことば"を話させる事で、そのインチキさを際立たせてキャラクター的な面白さを増幅した上に、"違和感ある関西弁"を配慮なく使っている凡百の他作品に対するアイロニカルなパロディ的面白さにもなっている、題材を活かすために考え尽くされた仕掛けが、ベースとなる部分から徹底されているのが素晴らしい。

ヒロインの片割れとなる柴咲コウも同様、東京のOLから京都の花街へ飛び込んだ者として、所作立ち居振る舞いと平行して言葉遣いも変化していく事で、白塗りにして着物を着ただけではなく、中身からの変化を展開を通じて見せ、キャラクターを立てるとともに終盤の「帰ってくるの早ッ!」のオチへと結びつけるなど、行き当たりばったりの悪ふざけ単発ギャグの羅列に見えて、しっかりとネタ振りとオチとメインストーリーの進行練り込んだ、脚本の出来の良さによって、本来の実力以上の魅力、存在感を引き立たせられている。

宮藤官九郎の脚本は、そうして悪ふざけ的なパロディを前面に押し出しながらも、題材に対する確かな取材と理解が根底に敷かれているため、安易なパロディ、コメディとは一線を画する存在として人気を得ているのだ。

それはメインとなる花街以外でも、序盤のネット喧嘩シーンでの煽り煽られるリアルな反応とやりとりの面白さであったり、中盤における二人の転職合戦における、いちいち元ネタを用意してそれに沿った的確な笑いを盛り込んでいるあたりにも顕著で、それによって、前後の展開と絡ませるためにネタを少しだけ先出し、あるいは後に残留させてブツ切りにならない流れを実感させる構成の上手さが一層活きる事となっている。まずバッティングセンターのシーンを先に何度も見せてから、野球選手としての活躍に繋げたり、格闘家シーンの後のラーメン屋にて、オープンハンドグローブのままドンブリを持って「熱くない」ネタとしたり、といったくだりなどがそれに相当する。

ミュージカル場面を無駄に長く見せて、再び"門前払い"を喰った際にはそのミュージカルの繰り返しを自ら否定して笑いに繋げる伏線とするなども同様、一人でボケとツッコミの双方を演じ分ける事が出来る阿部サダヲのために用意されたギャグの数々は秀逸。このミュージカル、真矢みきに和装で大階段を下りさせるパロディも面白く、それをノリノリで演じる彼女も素晴らしい。

ギャグだけでなくストーリー部分でも、置屋や茶屋における擬似家族・家庭的な呼称形態や接客姿勢をドラマに活かして家族愛のドラマとして構成し、"一見さんお断り"という有名な慣習を、主人公のサクセスストーリーにのための理由付けとして利用、市長選挙が花街に対する新法案に展開するなど、ひとつひとつのエピソードが全て、題材に対する理解とリスペクト無しでは作り得ないものであり、そうした様々なドラマ、ギャグがバラバラに散在せず、全てがひとまとまりとなって進行していき、ラストシーンで全てが収束される。脚本構成の上手さは売れっ子と呼ばれるだけの事はある。

その脚本を活かすべく更に細かく作り込まれた、監督の水田伸生による演出、仕掛けの確かさも見逃せない。ダイアローグやストーリー進行と関係ない部分でも、しっかりと笑わせるネタを用意して飽きさせない工夫が感じられ、例えば時間が経つに連れ生瀬勝久の髪の毛がどんどんフサフサになっていくなど、単発でなく通しで意味を持たせる仕掛けも用意されている徹底ぶりには感心する。

のだが、京都という景観の良い観光名所、舞妓という華の存在を、映画としての映像に活かせていたか、といえば少し厳しく、これは"映画監督"としての経験の少なさによるもので、残念な限り。宮川町をモデルとした"夢川町"なる架空の花街をセットで作っているのだから、それを活かした画作りがもっと欲しかったところだ。

脚本家や出演者のファンなら当然必見だが、あまり知らなくてもコメディが好きなら充分に楽しめる良作だ。少なくとも似たカラーのコメディ映画『バブルへGO!』などよりは格段に面白いと断言する。興味があれば。


余談:京野ことみや酒井若菜が密かに白塗りの舞妓、芸妓役で出ているのも楽しみどころの一つか。特に京野ことみのハマり具合は絶妙。

駒子役の小出早織、『ケータイ刑事』や『帰ってきた時効警察』を観ていた人には周知だが、そうでない人には「誰?」な存在だろう。柴咲と同事務所ゆえの売り込み出演だろうが、内容的にはメインヒロインと言って過言ではない役に、ついこの間まで京都に住んでいた彼女ならではの理解と、いかにも京女らしい説得力のある容姿で、かなりのインパクトを与えたのではないか。今後のメジャーシーンでの活躍が期待される一人だ。にしても、ほとんど全編白塗りで通したのには笑ったが。


tsubuanco at 15:36│Comments(9)TrackBack(21)clip!映画 

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1. 舞妓Haaaan!!!  [ UkiUkiれいんぼーデイ ]   2007年06月20日 14:53
      「金払たら、なにしてもかまへんねん」(悦)   ひゃ、くぅ、え〜、ちょ、も、どんだけ、あかんって。。。 おもろすぎるやんかいさぁぁぁぁーーーーっ!!! ま、騙された思て、一回観てみて〜な。 いきなりから「つかみOK」ですから。 これはDV...
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3 人気ブログランキングの順位は? 男の究極の夢。それは・・・ 舞妓 と 野球拳 京都は日本の宝どす。
3. 『舞妓Haaaan!!!』  [ 唐揚げ大好き! ]   2007年06月21日 06:03
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4. 舞妓Haaaan!!!  [ 日っ歩??美味しいもの、映画、子育て...の日々?? ]   2007年06月22日 20:42
結構、面白かったです。 東京にある食品会社で働く平凡なサラリーマン、鬼塚公彦は、修学旅行で京都を訪れて以来、熱烈な舞妓ファンで、「お座敷で、舞妓と野球拳をする」ことを夢見ていました。そんな公彦が、ある日、舞妓のいる街、京都の支社に転勤(左遷)することが...
5. 「舞妓Haaaan!!!」観てきました♪  [ りんたろうの☆きときと日記☆ ]   2007年06月22日 21:49
☆「舞妓Haaaan!!!」 監督:水田伸生 出演:阿部サダヲ、堤真一、柴咲コウ、小出早織、京野ことみ、酒井若菜、吉行和子、大倉孝二、生瀬勝久、木場勝巳、キムラ緑子、橋本さとし、秋山菜津子、北村一輝、山田孝之、植木等 鈴屋食品・東京本社で働く平凡なサラリーマン鬼...
6. 映画「舞妓Haaaan!!!」  [ 今日感 ]   2007年06月23日 22:38
底抜けの面白さ!ばかばかしすぎるし、テンポは滑っていない! さすが、クドカン(鬼塚の携帯登録にもきっちり名前が出てましたね)
7. [映画]舞妓Haaaan!  [ お父さん、すいませんしてるかねえ ]   2007年06月24日 18:12
阿部サダヲ、堤真一、柴咲コウに脚本宮藤官九郎。 これ以上何を望むというのでしょうか? あらすじを簡単に 高校の修学旅行以来、舞妓に憧れ続ける鬼塚公彦。 東京本社から念願の京都支社に転勤となったが、お茶屋はもちろん「一見さんお断り」。 お茶屋常連の社長に、「結
8. 舞妓Haaaan!!! [映画]  [ mololog(モロログ) -映画レブーとかその他諸々 ]   2007年06月30日 11:22
★★★★★★★☆☆☆ http://www.maikohaaaan.com/i
9. 阿部サダヲさんの似顔絵。「舞妓 Haaaan!!!」  [ 「ボブ吉」デビューへの道。 ]   2007年07月01日 22:10
阿部サダヲさんを初めて拝見したのは、「踊る大捜査線」第9話。 事件にはなりませんでしたが、青島刑事を刺してしまうという役。 いかにも何かやりそうという、怪しい目つき(笑)。 後にわかった阿部サダヲというふざけた芸名(笑)のこの人が、 10年後メジャー映画の主演...
「舞妓Haaaan!!!」★★★ 阿部サダヲ、柴咲コウ主演 水田伸生 監督、2007年(120分) 笑いの要素を過剰の一歩手前あたりで うまく抑えた良くできた映画だ。 舞妓さん大好きと公言する主人公の バカバカしい、くっだらない映画、 だから笑うつもりで...
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(2007/A110/S57)←今年通算110本目の鑑賞。 今週公開作は、週刊誌で★印が多かった「ゾディアック」も注目だけど・・・ 予告編見て、こりゃ面白そーーーーっ・・・て感じてたので、この作品を最初に。 この作品が初主演作の阿部サダヲとか・・・ 脚本が、宮藤官九郎と...
12. 舞妓 Haaaan!!!  [ シネクリシェ ]   2007年07月07日 18:02
 半年も前からいろいろな映画館では何回も予告編が流されていた作品ですが、低俗なドタバタ喜劇という印象しか受けず観る気も起きませんでした。  しかしながらくり返し見ているうちに、テンションの高さが尋常で
13. 『舞妓 Haaaan!!!』  [ アンディの日記 シネマ版 ]   2007年07月08日 16:02
感動度[:ハート:]         2007/06/16公開  (公式サイト) 笑い度[:ラッキー:][:ラッキー:][:ラッキー:] 娯楽度[:テレビジョン:][:テレビジョン:][:テレビジョン:] 満足度[:星:][:星:][:星:][:星:]   【監督】水田伸生 【脚本】宮藤官九郎 【時間】...
14. 「舞妓Haaaan!!!」  [ Tokyo Sea Side ]   2007年07月09日 10:57
とにかく面白かったです!割りと混んでいたコトもあり、場内では普通に爆笑している人が多数でした。 熱狂的な舞妓ファンを演じる阿部サダヲがハマり役です。あのテンションの高さはすごいです。堤真一も柴崎コウもとても良かった。生瀬勝久は個人的にかなりツボです☆小ネ...
15. 舞妓Haaan!!!(6/16公開)  [ 第八芸術鑑賞日記 ]   2007年07月10日 21:18
 7/1、新宿コマ東宝劇場にて鑑賞。7.0点。  いかにもクドカンらしいハイテンション・ドタバタ・コメディ。と言えば概要はほぼ言い尽くしたようなものなので、あとはお好み次第で観ても観なくても。もちろん、「京都の舞妓さん」を題材にして暫時その解説をするという形式に...
16. 真・映画日記『舞妓Haaaan!!!』  [            ]   2007年07月13日 11:17
7月12日(木)◆499日目◆ う〜〜〜ん、なぜかこれをチョイスしてしまった。 クドカンの脚本、苦手なのに見てしまった。 時々、面白い所もあるが、 阿部サダヲ、テンション高過ぎ。 見てるこっちが恥ずかしくなる。 それに鬼塚(阿部サダヲ)がプロ野球選手の内...
17. 【劇場映画】 舞妓 Haaaan!!!  [ ナマケモノの穴 ]   2007年07月15日 20:39
≪ストーリー≫ 鬼塚公彦は東京の食品会社で働く平凡なサラリーマン。ただひとつ普通じゃないのは、修学旅行で京都を訪れて以来、熱狂的な舞妓ファンだということ。そんな公彦に転機が訪れる。念願の京都支社に転勤が決まったのだ!死に物狂いで仕事して、最高峰の壁「一見...
18. 舞子Haaaan!!! 07164  [ 猫姫じゃ ]   2007年07月31日 23:42
舞子Haaaan!!! 2007年   水田伸生 監督  宮藤官九郎 脚本阿部サダヲ 堤真一 柴咲コウ 小出早織 京野ことみ 酒井若菜 キムラ緑子 生瀬勝久 大倉孝二 山田孝之 須賀健太 北村一輝 Mr.オクレ 真矢みき 吉行和子 伊東四朗 植木等 ほらね、やっぱり....
19. 人生そないにうまくいくんかえ?~「舞妓Haaaan」~  [ ペパーミントの魔術師 ]   2007年08月02日 01:00
ギャハハハハハハハ~~~~♪ 鬼塚公彦VS内藤貴一郎の んなアホな転職バトル映画です。(そんな宣伝でええのん?) もとい。 恋人同士がモトサヤに納まる・・みたいやでって話と あのひととあのひとが あんな関係やったんや~という話です。(どんなんやねん?) 失礼しまし....
20. 舞妓Haaaan!!! <多々、ネタバレ有り>  [ HAPPYMANIA ]   2007年08月14日 02:36
〜〜 京都は日本の宝どす。〜〜数ヶ月前から 公開を楽しみに待ちまくった作品で、その期待に100%応えてくれた映画どすぅとにかく、面白いっ 初めから最後まで大笑いしまくったが、面白いだけではなく、泣かせる所もちゃんとあってジーンとしたり、感動したり、そん...
21. 舞妓Haaaan!!!  [ 読書と時折の旅 (風と雲の郷本館) ]   2008年08月31日 20:22
 金曜日の夜は、日本テレビ系の金曜ロードショーで「舞妓Haaaan!!!」を観ていた。ところで、この題名、覚えるのが結構難しい。読み方はすぐ覚えられるのだが、書き方となると、「a」が4つで「!」が3つと、結構ややっこしいのである。DVD「舞妓Haaaan!!!」 それは、さ...

この記事へのコメント

1. Posted by sheep   2007年06月18日 20:49
自分は手放しで楽しんで90点でしたが、色んな視点があるものですね。
でも、駒子は設定がアレですから、メイクは...。

あと、関係ないですが『赤い文化住宅の初子』をご覧になるとのことで。プルコギのコメントで余計なこと書いたかと思います。すいません。
2. Posted by つぶあんこ   2007年06月21日 13:11
いえ、お気になさらずに。
3. Posted by (´・ω・`)   2007年07月24日 01:33
今更ながら見てきました
私的にはもう少し点数うえでよいかと思いましたが
4. Posted by つぶあんこ   2007年07月24日 17:25
どの辺がどうとか言ってもらわないとわかりまへんがな(´・ω・`)
5. Posted by 力薬   2007年12月16日 21:49
レンタル視聴しました。
自分的には鬼塚と内藤の職業張り合いの展開と顛末がかなり楽しめました。

本編とは関係ないですが植木等さんへの追悼文にしんみりきたり。

小出さんの存在は確かに光ってましたね。ドラマで主演はれたらブレイクするような気がします
6. Posted by 力薬   2007年12月16日 23:32
すみません、ドラマというのはプライムタイムやら土曜ドラマなどのメジャーところのことです。
ドラマでくくればケータイ刑事で主演をはってしまってますね、紛らわしくてすみません。
7. Posted by つぶあんこ   2007年12月17日 17:57
『ケータイ刑事』で主演してます、って書こうとしてたのに…(笑
8. Posted by 勅使河原   2008年03月25日 01:39
「めぐる」が終わっちゃって寂しいので
コレみました。
序盤のネット書き込みバトルがかなりツボって
繰り返し見てしまいました。
特に堤さんの「悦」って顔が…。

小出さん、舞妓ピッタリ。かなりいいです。
コウちゃんが霞みました。

生瀬さんの髪の毛がどんどんフサフサになっていくのは気づきませんでした…

エンディングテーマもよろしかったですね。
あの「別に」っていう歌詞はエリカ様以前なのでしょうか
9. Posted by つぶあんこ   2008年03月26日 21:53
エリカ様事件はこの年の秋ですからね。

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