2007年06月24日

憑神 17点(100点満点中)

チンタラ神ちゃん
公式サイト

浅田次郎の同名小説を映画化。監督は『鉄道員』にて同じく浅田作品を映画化した降旗康男。秋には中村橋之助の主演で舞台化も予定されている、が、今回の映画版の出来の悪さが、そちらにまで及ばなければいいのだが。

内容はほぼ原作通りに進み、メインの出演者達にも芸達者な俳優が多く見られる、にも拘らず、どうしてここまでつまらない作品になってしまったのか、と、首を傾げざるを得ない、どうにも評価し難い結果に終わっているのが勿体なさ過ぎる。

演技、演出、カット割り、編集、全てにおいてテンポが悪い。不要なところで無駄に拙速で、不要なところで無駄にダラダラし、進行するストーリー、交わされる会話などにたいし、観客が抱くリズム、タイミングと、スクリーンに映し出されるそれが全く噛み合っていないのだ。これではまず作品を楽しむ下地すら作れない。

例えば、主人公(妻夫木聡)が元妻(笛木優子)に食料を差し入れる場面、元妻のセリフが無駄に早口なのは何なのか、しかもやたらと説明的な内容なので、会話というより暗唱としか見えない。こんな場面が随所に登場する。

香川照之演じる蕎麦屋が悪神を怖れて逃げ出す、繰り返しギャグにおいても、この逃げ出す段取りが無駄にモタモタしてテンポが悪いため、少しも面白くないどころか寒さに震えてしまう。

それらのカットもそうだが、本作では長回しによるセリフの掛け合いが随所に多用されており、これは内容よりも演技と演出のテンポによって面白くなる手法である、が、そのテンポがダメなのだから、ただ同じ画面でダラダラしているだけとしか感じられず、結果としてつまらなさをより加速している。

やはり最大の難点は、その長回しの意図も俳優の持ち味も活かせていない、あまりに稚拙な演出にある。本作は基本的にはコメディであるが、監督の降旗康男にはコメディを演出できるセンスが全く欠けている、と言って過言ではない。そもそも監督の起用段階から失敗は確定しているのだ。

そんな状況においても存在感をたった一人で放っているのが西田敏行である。彼が画面に登場している間は、彼そのものが備えている存在の面白さによって、彼のキャラクターをとりあえずは楽しむ事は出来る。彼が演じる貧乏神が法力で追いつめられる長回しカットなどは、彼だからこそのリアクションで笑っていられるが、彼でなくては寒々しい事この上ない、どうしようもない惨状と成り果てていたであろう事は想像に難くない。

もはや西田敏行だけが救いでありながら、彼が登場するのは最初の三分の一程度で、そこから先はほぼ笑える事もなく感動も出来ないダラダラしたドラマがダラダラと続くのみと、余計にバランスの悪い事となってしまっている。

次に登場する赤井英和は、西田敏行とのギャップのせいもあり、作品中で一番ヘタクソでつまらない存在としか感じられず、映画の退屈さを一層に助長して観客を睡魔に陥らせる役割となっている。佐々木蔵之介の渾身の演技も台無しだ。

最後に登場する森迫永依は、実写ちびまる子でも見せたのと同様、絵に描いた様な子供らしさをディフォルメした演技とビジュアルで存在感をアピールしてはいるが、やはり演出のテンポとセンスの悪さにより、その良さは半分も活かせていない可哀相な事になっている。

それまでの二人を踏み台として、彼女の役は、文字通り死に直面する事よって、主人公があらためて生きる意味を見つめ直す基点となり、そこから彼に感情移入して物語を感動のラストへと導く重要な役割であり、何よりエモーショナルな演技、演出が求められるところである。

そして本来、降旗康男はそうした方向性は得意としている筈である、が、本作においてはコメディだけでなく、何故か通常ドラマ部までもがダラダラとしたテンポと演出で進められ、なんら感情を動かされる事のない退屈さが支配してしまっている。

ために、本作タイトル『憑神』の意味がより深く活かされる、"憑依"の場面もまた、散漫な演出とカット割りによって狙いが絞れておらず、全く盛り上がらないまま話が先に進んでしまう。

主人公の最期に至るまでも同様、その設定、その流れで戦場へ赴いたのなら、絶対にやっておくべき事を省略し、ただ戦場を緩慢と映し続け、最後にいきなり主人公の最期だけを見せるとは、これでは勇壮さも悲壮さも無常さも何ら起こりうる筈が無い。それとも橋の上での見送りシーンで、盛り上げはやり遂げたとでも思ったのだろうか。あまりに浅すぎる。

神や神社を扱いながら、投げ飛ばされて鳥居が折れた事が何の伏線にもなっていなかったりと、各所で見せられたものがその後に活かされる、といった構成が全く無くブツ切りの羅列に終始し、その上各場面の出来も悪い、とくれば、何を楽しめというのか。本当に西田敏行しか無いではないか。

最後に作者本人が登場するに至っては、失笑を通りこして一周して怒りすら覚える。一体何のつもりだ。

それなりに面白い原作の面白さを全く活かせず、映画として新しい面白さも(西田敏行以外)無く、観客を楽しませる気があるのかさえ疑わしい、悪い意味で典型的な東映映画の究極系である。

劇場で観る価値は全く無いが、テレビで放送されたら西田敏行が登場する前半だけ観れば、少しは楽しめるだろう。


tsubuanco at 17:01│Comments(4)TrackBack(23)clip!映画 

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2. Posted by つぶあんこ   2007年06月26日 14:07
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3. Posted by キャサリン   2008年06月09日 19:47
2 私も西田敏行さんの貧乏神の所だけが面白かった。
特に、赤井氏の存在はまさに、疫病神そのもの、なんであんなんを配役するのって感じ。
4. Posted by sai   2009年10月05日 21:48
確かに西田敏行だけ面白かった
なんで赤井英和使ったんだろ?

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