2007年07月07日

ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ 19点(100点満点中)

スパーク! 海へ
公式サイト

沖縄美ら海水族館に実在するイルカ、フジをめぐる実話を綴った、岩貞るみこ著のノンフィクション本、『もういちど宙へ』を原案とし、創作の人物、エピソードを追加して映画化された本作。

だが、その創作人物やエピソードのほとんどが、物語を面白くするどころか無駄な寄り道として話を散漫にさせており、それだけでなく、そっちに時間を取られるせいで、本筋の面白くなるところが大幅に削られてしまい、何もかもが中途半端に終わってしまっている。

明らかに障害でしかない追加要素を押し付けたのは、製作や配給に関わっている芸能関係各社である事は、どう考えても不要な登場人物役として無駄に出番を食っているキャスト、高畑充希西山茉希を見れば明白。(この子達自身が悪いわけではない、当然。)

まず高畑充希、この子が少しも可愛くないどころか男なのか女なのかすらわからない有様で、これは顔や髪型の問題もあるが脚本や演出、あるいは撮り方の問題が大きい。

この子供は何者なのか、を説明する上で、あえて性別を曖昧にしておいて、途中で実は女の子でした、と驚かせるなどの展開があるならまだ理解できるが、そういった事は何も無しにただわかりにくいだけである。

更に終盤でワンピーススカートを着用して、その時にやっと「ああ、女の子だったんだ」と観客は気づくのだが、その時にもスカートである事を強調するなど一切せず、逆にスカートである事をわかりにくく撮っているのではないか、と勘繰ってしまう程に中途半端なサイズとアングルで見せられ続け、一体何が狙いなのか全くわからない。

主人公(松山ケンイチ)とこの子との関係性も中途半端に尽き、自転車の競争もプールでの揉め事も全部が放ったらかしのままで、最後だけいきなりすごく深い絆があったかの様に別れられて誰が感動すると言うのか。

この子の祖父や母親のドラマも中途半端で、小船をやたらと印象的に何度も出す割には、その事は本筋にも特に関係なく、主人公が受けた影響や関係性も描写が全くなく、やはり時間を無駄に食っているだけである。

主人公の恋人役の西山茉希にしても、彼女との関係が主人公の仕事や生活にどんな影響を与えたのか等はほとんどなく、彼女側の心理描写なども特になく、ただ出ているだけに過ぎない。

少なくとも、二人の関係の変遷を描けるだけの場面は用意されていたはずなのに、職場までやってきた彼女に対し、「明日、案内するよ」と言った直後に場面が切り替わって何故か葬式のシーンに急展開し、その後は彼女は一切登場しない、と、本当に何をどう見せたいのかが全くわからない。

何より、こうした余計な要素が、本筋であるフジの話に対してほとんど交わらず、本当に余計な要素に終始している事が最大の問題である。

これによって、物語展開も人物配置も散漫となり、観客が興味を抱いている筈の、まず健康な時点でのフジの在りよう、奇病に冒された悲劇的な闘病描写、そして奇跡の復活に至るまでの、フジ自身も頑張り、それに応えるべくプロフェッショナルな職業人達が奮闘する感動ドラマ、が、単なるダイジェスト的な上滑りなものでしかなくなってしまい、過去にTVで放送された同題材のドキュメント番組にも全く及ばない、あまりに食い足りないものでしかないのでは本末転倒だ。

元のストーリーを知らない観客が、いきなり「ブリジストンの本社に行ってきます」と聞いてどう理解しろと言うのか。その文脈なら、水族館の親会社がブリジストンなのか?と思ってしまってもおかしくはなく、作り手が知っている情報と、観客に伝えるべき情報の整合が全く取れていないのは、ここに限らず全体に亘ってである。

人工ヒレが改良されていく展開も全く描写、説明不足。特に最終的な形状が、一体今までのとは何がどう違って優れているのか、の説明が全くないままジャンプが成功して喜ばれても、何が何やらである。色が変わっただけでは当然ない筈で、観客が知りたいのはそこなのだ。憎たらしいガキの引越しなどどうでもいい。

本作に登場するイルカ、フジは、本物のフジが自身で演じており、その"演技"の真に迫る"上手さ"には驚嘆する事しきりで、少なくともこの点は見所足りえているのだが、それもまた、中途半端で意図が散漫な撮り方に終始しており、例えば、プールの壁の窓を境界とし、水中側のフジと地上側の人間キャラが向かい合うようなシチュエーションも、何らエモーショナルな狙いを見出せることなく、ただそうして撮っているだけにすぎないのだ。

普通に作るだけで卑怯なくらいに泣かせる事が出来るはずの、最高の題材も、実際の現地で実際に本物が演じてくれるという、最高の環境も、全てを台無しにし、端にも棒にもかからない駄作にしてしまった、金儲けにしか興味のない商売人達のタチの悪さがまざまざと露呈した本作、動物映画が好きな人でも、楽しみきるのは難しいだろう。むしろガッカリするか。

原作本を読む方が素直に感動できる事間違いなし。沖縄に行って実物を見れば尚よしだが、それが無理でもTV放送まで待てば充分



tsubuanco at 00:35│Comments(4)TrackBack(10)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by kame   2007年07月11日 11:21
いちいち本当にその通りです。
きっとこういう感想を書かれるだろうなと思った通りの感想だったので、逆に嬉しくなってしまいました(笑)
フジだけ素晴らしかったんですけどねぇ。
2. Posted by つぶあんこ   2007年07月12日 16:09
永作博美と山崎努も良かったです
3. Posted by SPEED-DASH   2007年07月14日 23:44
1 見終わった時に自分が感じた事が全て一致します。やはり同じように感じた人もいるんだと思いました。
フジのおかげで、なんとかもってるが、自分は観て損したと思ってるし、友達にもオススメできないですね
4. Posted by つぶあんこ   2007年07月18日 14:23
フジを抜いたら永作博美しか残りませんからね。あと山崎努も。

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